Teena Marie_Lover Girl 「♪お、ば、け〜のきゅう?♪」…というわけで、今回は「オバケのQ太郎」(古い)も顔負けの変てこジャケット(左写真)でお馴染みのティーナ・マリーさんであります。

この人は、白人でありながら相当に聴かせる黒人テイストの声を売り物にしたソウル・ディーバです。前回紹介のホイットニー・ヒューストンが、黒人でありながら白人ファン層をどしどし開拓していったのとはちょうど逆ですね。

1956年米カリフォルニア州生まれ。黒人居住地区に住んだ経験があることなどから、幼少時からモータウン・レーベルを中心とする黒人音楽に関心を持ち、歌だけではなく、ギター、ベース、キーボード、コンガなどをほぼ独学で習得。ローカルバンドのリードシンガーとして、レコードアーチストのオーディションを受けながら活動するうち、「真面目なモータウンの破滅型天才」リック・ジェームズに見いだされ、79年に彼のプロデュースによるアルバム「World and Peaceful」で、念願のモータウンでのメジャーデビューを果たしました。

このアルバムのジャケットには、ティーナさんの写真は載っていません。そのパワフルかつソウルフルな声質からてっきり黒人だと思っていたリスナーも多かったことから、黒人ファン層の定着・拡大を目指すモータウンサイドが、「ミステリアスなままの方がいい」と無人の風景画みたいなジャケットデザインにしたのでした。

80年代以降も着実にレコードリリースを重ねて、「Behind The Groove」(80年、米ディスコチャート4位)、「I Need Your Lovin'」(80年、米ディスコ2位、米R&Bチャート9位)、「Square Biz」(81年、R&B3位、ディスコ12位)といったヒット曲をコンスタントに出すようになります。そして、上写真の84年の「オバQ」アルバム「Starchild」に収録されているダンス曲「Lover Girl」が全米一般チャート4位(ディスコ6位、R&B9位)まで上昇する最大のヒット曲になり、頂点を迎えました。私自身、この曲をディスコで聞いて、輸入レコード屋に買いに走った記憶があります。

さらに88年にも、日本ではバブル期のディスコ(チークタイム)やカフェバーで頻繁に耳にした珠玉バラード「Ooo La La La」がR&Bチャートで1位となり、好調ぶりを見せつけました。

80年代にブレイクした彼女ですが、実は個人的にはデビューアルバム「Wild and Peaceful」が非常に秀逸だと思っています。特に、後に恋人とも噂されたリックとのデュエットによるシングル曲「I'm A Sucker For Your Love」(米R&Bチャート8位)は、ノリの良いリズム進行、コーラスの小気味よさ、楽器パートのバランスのよいアレンジ(特に切な過ぎるサックス)など、どれをとっても「ザ・70年代黒人ディスコ」でして、私の中でもディスコチャートの総合トップ50(候補がたくさんあり過ぎて微妙だが)には入る名曲だと思います。

ティーナさんは90年代以降も何枚かアルバムを出すなど、継続して音楽活動を続けていました。けれども、2010年12月に54歳で急逝してしまいます。死因ははっきりしませんが、持病のてんかん発作に原因があったのではないかとの海外メディア報道がありました。ほかの多くのディスコ―ミュージシャンと同様、早すぎる死を迎えてしまったわけですが、多彩な才能をいかんなく発揮した生涯だったと思います。

ところで、冒頭でオバQなどととても失礼なことを言いましたけど、実物は美貌でもあったとされていますので、念のため(写真下)。CDについてはここ数年、国内外からアルバムの再発盤やベスト盤が数多く出ていて、入手も比較的容易です。
Teena Marie3