自分のことは、自分で決める。

これこそ、自立した大人の姿勢ですが、実は自分のことだからこそ、自分では冷静に判断できないこともあるようです。

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 ヒトは、自分が望まない考えを裏付ける事実を、たやすく無視してしまいがち。それが、自分の健康にかかわることであっても、です。Alex Lickerman博士は、心理学系ブログメディア「Psychology Today」で、自身の経験を踏まえ、ヒトが自分の思い込みに反する情報を無視しがちな理由を次のように考察しています。

Lickerman博士は、ある日仕事場からの帰宅途中、ちょっとした胸を痛みを感じました。そのとき、「最近やった虫垂切除の合併症かも」という思いはよぎったものの、病院にまた戻り、待合室で長時間待たされた挙句、検査してまた何か見つかったらイヤだなぁ...という気持ちが先に立ち、痛みを無視しようとしたとか。幸いその日の夜、別のお医者さんに電話でこの出来事を話したところ、「すぐに検査に来るように」と言われ、CTスキャンで放置すれば命にもかかわる肺塞栓症を発見できたそうです。

Lickerman博士によると、自分に都合の悪い事実を無視しがちな理由は、ほとんどの人が「自分は大丈夫だ」と思い込んでいるからだとか。兆候が現れてもなお、大丈夫だと言い張るものですが、それは重要でないからではなく、自分が望まないことだからです。

自分にもこのメカニズムが多少なりとも働くとすれば、身体の健康や生命にかかわるような重大な意思決定を、自分だけで行うのは適切でないかも。家族や信頼できる友人に見解に決定権を委ねるくらいのほうが、結果的に正しい判断が下せるのかもしれません。また、重大な意思決定が必要な局面に出会ったとき、自分の意思を闇雲に信じるのではなく、「この意思は、自分に都合のよい事実を無視して、決定されていないか?」と、少し疑ってみるだけでも、冷静さや客観性をいくらか担保できそうです。

Why We Shouldn't Decide Ourselves When We Need Medical Attention | Psychology Today

Shep Mcallister(原文/訳:松岡由希子)