The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

最初の授業が始まる前に X-MEN: ファースト・ジェネレーション


 え〜、皆さん、先日のNHK BSプレミアム熱中スタジアム」の「アメコミヒーロー スパイダーマン&アイアンマンナイト」は見ていただけたでしょうか。僕はまだ見れていないのですがここによると二度ほど僕が喋る部分があったみたいですね。しかし写真写りが悪いな、オレは・・・
 で、多分コアな人には物足りない部分も多かったとは思うんですが、実際はあの三倍録れ高があるわけでその中でアメコミに興味のない一般の人にも分かり易い部分を取捨選択した、ということなのでしょう。
 また、「何でスパイダーマンとアイアンマンなんだ?」というのは参加者の間でも結構話題になっていて、対比としては完璧な「スーパーマンバットマン」に比べるとあの二人は特に対比する存在ではないですしマーベルユニバースを説明するなら根幹部分で「X-MEN」は外せないだろう、という話を参加者間でしたりもしました。これも単独ヒーローで映画化されてヒットしたもののほうが分かり易いということでしょう。
 というわけで本題。その「X-MEN」の映画「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」を見た(こっからいつもの文体に戻ります)。 

注意!今回先行公開(といっても一日早いだけですが)で見た段階で書いています。がネタバレあり!です。
 
 まあ、ネタバレあり!といっても全体的な結末は観る前からほとんどの人が分かっているわけで、「スターウォーズ」シリーズのプリクウェルみたいな物なのですが。
 
 で、結論から言っちゃうとこれは傑作といっていい。シリーズ中では「2」と並ぶ出来です。やっぱりブライアン・シンガーが関わってるかどうかでここまで違っちゃうものなんだなあ。勿論、原作ファンとして気になるシーン、矛盾点などは多々あるけど全体としてとても満足。
 シリーズを見てる人は冒頭から吃驚する。最初の1944年ナチがユダヤ人であるエリック少年を母親と引き離し、その結果超能力が発現するシーンが1作目の冒頭シーンをほぼ完コピしてるのだ。音楽もマイケル・ケイメンのをそのまま使っている。このようにシリーズを見てる人には判るシーンを織り込みつつ、最初に見ても問題ないように作られている。1962年をメインの時代に据え(原作コミックが発表される1年前だ!)冷戦、そしてキューバ危機を背景にしつつ当時の風俗や過去の上手に再現している。
 原題は「X-Men: First Class」で「恵まれし子らの学園」における最初の授業、というような意味合いか。実際はそこに至るまでの話なので邦題の「ファースト・ジェネレーション」もそれなりに良いかと思う。
 では、例によって各キャラごとに説明。
 

チャールズ・エグゼビア

 後のプロフェッサーX。ニューヨーク州に豪邸を持つおぼっちゃま。若くしてオクスフォード大で遺伝子学の教授になる。世界最高のテレパス。人類とミュータントの共存のために若いミュータントを探し出し奮闘する。
 演じるのはジェームズ・マカヴォイ。最初に聞いた時は全然パトリック・スチュアートに似ておらず「若い頃のパトリック・スチュアートを演じさせるならトム・ハーディーでいいじゃない!*1」などと思っていたのだが、予想以上に良かった。まだ若いので少しちゃらちゃらした雰囲気がエリックやミスティークとの対比になっていて良い。彼自身は比較的恵まれているし、黙っていれば外見でミュータントと分かるわけではないのでいまいち外見に反映されるミュータントの気持ちがわかっていないのだな(テレパスなのに!)。物語の最後で下半身不随になり車椅子に乗るがそれまでは比較的アクティブに動く。またテレパスとしても劇中ではそれほど(ホワイトクイーンに比べて)凄い、という描写がないが力は続編でさらに高まるのかもしれない。そしてそれに関連して頭も禿げていくのだろう。マカヴォイ自身は禿げ頭のプロフェッサーXを演じる気満々なようなので、期待したい。
 

エリック・レーンシャー

 後の磁界の帝王マグニートーポーランドユダヤ人。1944年にナチの収容所において母親と引き離されたことをきっかけに能力を発現。さらにそれを見た所長(後のセバスチャン・ショウ)に母親を殺されたことで怒りを元に能力を開花。その力は潜水艦を持ち上げるほど。
 戦後はフリーのナチ・ハンターとしてナチの残党狩り(というか復讐)行脚していて、本命のショウと対峙したところでチャールズと出会う。人種差別とミュータント差別の両方を身に持って感じておりやがてその怒りの感情はチャールズとすれ違っていく。
 プロフェッサーXとマグニートーはよく黒人公民権運動におけるキング牧師マルコムXに例えられるが、マルコムXがかつての奴隷主に付けられたリトルという姓を捨て自分で「X」と付けたようにマグニートーも本来の名「マグニートー」を名乗る。この名前に関するシーンは「2」にもあった。いわば人間としての本名は仮名でありミュータントしての能力や外見に基づいてつけた名前は真名であるのだ。
 演じるのは「イングロリアス・バスターズ」のマイケル・ファスベンダー(ドイツ出身で本来の読みはミヒャエルなのだが、パンフレットその他で英語読みのマイケルになっているのでそれに従う)。途中飄々とした雰囲気を出す時もあるが全体として静かに暗い怒りをまとった雰囲気が最高。とりあえず今回は彼が主人公といって差し支えないと思う。能力も先の潜水艦引き上げ、超巨大パラボナアンテナを動かす、一斉発射された米ソ両軍のミサイルを送り返すなど文字通り最強のミュータント。前作で演じていたイアン・マッケランは残念ながらヘルメットが似合わなかったがこちらはヘルメットを被った姿もばっちり。ただ難を言えば最後、マグニートーとしてまとった赤いコスチュームがだぼっとしたものであまり格好よくなかったのが残念。確かに初登場時期のマグニートーの格好に近いのだが、折角若くたくましいマイケルを起用したのだからもっと筋肉にフィットした鎧っぽいものでも良かった気がする。
 

ミスティーク

 本名レイヴン・ダークホルム。誰にでも変身出来るミュータントで正体は青い肌に黄色い目をした女性。1944年にエグゼビア邸に忍び込んだことでチャールズと出会い彼の妹分として付き従う。同じように容姿に悩むハンク・マッコイと恋に落ちるが自らの本来の姿に自信を持て、とエリックに言われて考えを変える。最終的にはマグニートーのもとへ。
 演じるのはジェニファー・ローレンス。まだ少女の雰囲気を残した感じで普段は素顔の彼女自身に模している(ややこしいが劇中では青い姿が本当の姿で、ノーメイキャップのジェニファーの姿が超能力で偽装した姿である)。
 一作目が公開されたとき、「善のミュータントであるX-MENは美男美女ばかりで悪のミュータントであるブラザーフッドは化け物ばかりなのはおかしい!これこそ差別だ!」というような意見が少なからずあったと思うが、これはむしろリアルな描写ではないか。外見的に判りやすい彼らの方がよりひどい差別を人間から受けてきたのは間違いなく、そんな彼らが人間を憎むようになるのは至極当然に思える。
 彼女は原作では「2」で登場するナイトクローラーの母親(父は本作に登場するアザゼル)なのだが設定年代を考えれば映画でもこの後ナイトクローラーが生まれても変ではないか。個人的に「2」でミスティークがナイトクローラーに、
「なんで何にでも変身出来るのにその格好(本来の姿)でいるの?」
と聞かれ、
「そんなの(自分を偽装すること)間違っているからよ」
と答えるシーンはシリーズ中でも屈指の名シーン。
 

ハンク・マッコイ

 ビースト。CIAの施設で研究員をやっている。天才でありながらそのミュータント能力は野獣のような運動神経とそれを示す巨大な脚。その獣のような外見(といってもこの時点では着込んでいればわからない程度)を嫌っており、自らの能力を消すために変身能力を持つミスティークの血を使って血清を作成。がその副作用は彼を全身青色のより獣然とした姿へと変えた。当初はミスティークと恋に落ちたがマグニートーに感化された彼女との恋は終わった。とはいえ自分の姿に誇りを持つ彼女達の方が共感を覚えるのも事実なのだよなあ。本作唯一のオリジナルX-メンメンバー。セレブロの基本を創ったのは彼。
「3」では過去の卒業生としてケルシー・グラマーが演じていたが、メーキャップそのものは「3」の方が好みかな。
 

バンシー

 本名ショーン・キャシディー。口から破壊力抜群の超音波ソニック・ブームを出す。その力を使って空も飛べる。原作では元国際警察の捜査官でサイクロップス達一期生より年上。確か最初は敵としての登場ではなかったか。後に本作に出てくるモイラ・マクタガードやエマ・フロストとも恋に落ちる。指導者としてエマ・フロストとともに「ジェネレーションX」というチームを率いたこともある。
 本作では若いお調子乗りのミュータントで外見などから「ハリー・ポッター」シリーズのロンを思わせる。
「2」で出てきた女子生徒サイリーンは彼の娘であり同じ能力を持つ。時代設定を考えれば映画でもその設定は生きているといっていいのかな。
 

ハボック

 本名アレックス・サマーズ。体からプラズマエネルギーを放射する。原作ではサイクロップスことスコット・サマーズの生き別れた弟という設定だが、時代設定を考えると本作ではその設定は生きていないか。当初はスコットの父親という風に設定を変えた、という話も聞いたのだが見終わった後ではそれも微妙*2
 当初はその力をコントロール出来ずに、収監されていたがビーストに放射を一点に集中するスーツを開発してもらいコントロールできるように。
 

ダーウィン

 本名アルマンド・ムニョス。その場の環境に即座に適応する能力。水の中ならえらが生える。若いミュータントの中でもムードメーカーだったがセバスチャン・ショウによって最初の犠牲者に。
 

モイラ・マクタガード

 普通の人間。CIAエージェント。特にこれといって特徴がないが普通に美人。原作ではプロフェッサーXの大学の同級生で後の恋人。遺伝子学の権威で人間ではあるがX-MENの協力者という立場だった。バンシーと恋に落ちたこともある。今回なんとなく設定もバンシーと分け合ったかな、という気はする。「3」でも一瞬出てた。
 
ヘル・ファイア・クラブ
 元々「地獄の火クラブ」というのはイギリスに実在した貴族の娯楽組織で退廃的で享楽的な社交クラブだった。だが後に悪魔召喚の儀式をしている、などと噂を立てられ主催者のダシュウッド卿が財務大臣に就任したのを機に解散された。
 原作ではセバスチャン・ショウとホワイト・クイーン以外にもそれぞれチェスに例えた黒と白のキング、クイーン、ルーク、ビショップと計8人の幹部がいる組織であった。また、本作ではショウがナチ残党ということで原作のナチ残党組織ヒドラを髣髴とさせる。
 

セバスチャン・ショウ

 ヘル・ファイア・クラブのボス。元ナチス収容所所長。マグニートーの能力発現のきっかけを作った仇。エネルギーを吸収して転換する能力を持つ。またその能力のため常に若い。テレパスによる読心を防御するため特殊なヘルメットを作らせた。これが後のマグニートーの被るメットの元になる。
 演じたのはケビン・ベーコンでいかにも60年代風なもみあげの長い容姿で登場。彼の姿を下からとった姿では独特な雰囲気がある。ある意味この物語の全てのきっかけとなる人物。
 

エマ・フロスト

 別名ホワイト・クイーン。常に露出の多い艶っぽい格好しているが、かなり原作に忠実。テレパスであり他に身体をダイアモンド状に変える能力を持つ。長く敵キャラだったが最近は味方になったりしている。元々ヘリオンズという若いミュータント達を育てていたりしたこともありああ見えて根っからの教育者なのかもしれない。本作では敵の女相棒ということで過去作のミスティークの位置づけ。「ウルヴァリン」でも同名同能力のキャラが登場したがやはり別人のようだ。
 

アザゼル

 全身が赤い悪魔のような容姿のミュータント。本名不明。異次元の扉を開けそこを一瞬で通り抜けることによってテレポートすることが出来る。能力から分かるようにナイトクローラー父親である。敵キャラとしては一番格好よく、ラストはそのままマグニートー配下に。
 演じてたのはジェイソン・フレミングなのだがさっぱり分かりません。
 

リップタイド

 竜巻を発生させるショウの用心棒。イケメン。
 

エンジェル・サルバドール

 昆虫(トンボ?)風の羽を持つ少女ミュータント。チャールズとエリックにスカウトされるがヘル・ファイア・クラブに寝返る。同じエンジェルの名を持つミュータントに「3」にも出ててオリジナルメンバーでもあるウォーレン・ワージントンがいるが彼女は結構最近のキャラだそう。
 演じているゾーイ・クラヴィッツはなんとあのレニー・クラヴィッツの娘だ!
 
 いつもの「20世紀FOX」ロゴの「X」部分だけ少し残る、という演出がなくなってたのは残念。またいつも、カメオ出演しているスタン・リー御大が今回発見できなかった。多分出演していないと思われる。残念。その代わりといってはなんだが他のゲスト出演が豪華でセレブロによって発見されチャールズとエリックにスカウトされるが軽くあしらうミュータントとしてヒュー・ジャックマン(つまりウルヴァリン!)が出てたり(この1962年時点では二人の方が人生経験からしても文字通り年下なのが面白い)、エリックを誘惑しようとするミスティークが一瞬レベッカ・ローミンに変身するのも面白い。旧シリーズでミスティークを演じていたのがレベッカ・ローミンなわけだがこれはまだ少女のミスティークが自分が大人っぽくなった姿を想像して変身したとも言えそうだ。
 また役者ではなくキャラのゲスト出演としてはやはりセレブロで若いミュータントを探すシーンでストームと思われる白髪の黒人少女が映ったりスコットと思わしきサングラスの少年が映ったりしている。
 マイケル・アイアンサイドも出てるよ(例によって軍人役)!
 本作は当初CIAの別機関としてチャールズとエリックが組織したものであり(「G-MENだ」「いいえX-MENね」)アメリカ国内のミュータントを集めたと思われる。原作でそうだったように映画でもアメリカ政府から独立した組織として次は国際色豊かなメンバーを集めることになるのだと思う。
 
 監督は「キック・アス」のマシュー・ヴォーンで今回は原作版「キック・アス」のやるせない感が表現されている。後はやはり何度でも言うがブライアン・シンガーが製作・脚本に関わっていることで「3」「ウルヴァリン」とは雰囲気からして別物。個人的にはあの二つはなかったことにして欲しい気も・・・
 後は結構吃驚したのはVFXジョン・ダイクストラでいまだ現役だったのだなあ、と。エンドクレジットが少し初期「OO7」ぽかったりするのは1962年が舞台というのもあるのだろう。
 映画「X-MEN」のシリーズはマーベルスタジオ作品ではないので「アイアンマン」とか「インクレディブル・ハルク」などマーベルシネマユニバースとのつながりはないのだがそれはそれとして「ああ、あれが・・・」とか思っちゃうのがアメコミ脳ですな。

 で、直接関係ないのだが予告編が今回は「マイティー・ソー」と「トランスフォーマー」かなと思ってたら予想外の「キャプテン・アメリカ ファースト・アベンジャー」の予告編が流れたのである。予告編だけ見るとWW2中の出来事だけを描いて氷付けになったとこで終了し、「アベンジャーズ」で発見・解凍されることになるのかな、と推察される。
 
 さらに関係ないのだが少女時代の新曲「Mr.TAXi」の衣装は非常にX-MENぽいので今からでも遅くないのでコラボするべき!

X-MEN:ファーストクラス 明日への架け橋 (ShoPro Books)

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おまけ

実際に撮影で使われたらしいスーツが展示されていたので撮影!

*1:スタートレック/ネメシス」でピカード艦長の若いクローンを演じてました

*2:勿論原作では別にちゃんとした二人の父親がいます