「30年で大地震が起こる確率が87%」のときの「1年間に大地震が起こる確率」

今日はてなブックマークを見ていたら次のようなものを発見した。

30年で大地震の確率は87%・・浜岡停止の最大の理由だ。確率計算のプロセスは不明だが、あえて単純計算すると、この1年で起こる確率は2.9%、この一カ月の確率は0.2%だ。原発停止の様々な社会経済的コストを試算するために1カ月かけても、その間に地震が起こる確率は極めて低いはずだ。
http://twitter.com/#!/HeizoTakenaka/status/67726323170283520
http://togetter.com/li/133823

基本的にこのブログは自分の作ったアプリを紹介するブログであり、他人の批判めいたことは書きたくないがいくらなんでも適当すぎる。そう思ったのでざっくりと計算してみた。ざっくりと計算してみるというだけなので、二つ仮定を置く。

  • 「30年で大地震の確率は87%」というのは「30年間で一回は大地震が起こる確率」とする
  • 1年あたりに大地震が起こる確率は等しい。

どのような予測式で大地震の確率が算出されているのか調べる気がないので、このような仮定をおいてざっくりと計算してみた。
「1年あたりに大地震が起こる確率」をpとし、「30年間で一回は大地震が起こる確率」をPとするとPは次の式で表すことができる。
P = 1 - (1 - p)^{30}
中学生レベルか高校生レベルのアレなので、詳しく説明する必要は気はない。ここでPは0.87なので式を整理すると次のようになる。
(1 - p)^{30} = 0.13
Rで計算してみると
1 - p = 0.93
となり(小数点第3位以下切り捨て)
p =0.07
となった。ざっくりとした計算なので、これが正しいというつもりはない。むしろきちんとした知識を持った人の解説が読みたい。


また興味があったのでこの確率を前提とした場合の浜岡原発の停止の合理性についても検討した。結論から言えば仮に停止することで同様の事故を回避できるなら原発はおつりがくるぐらい合理的。まず大地震が起こった場合の損害の期待値を算出する。メリルリンチによると損害は10兆円程度。

バンクオブアメリカ・メリルリンチの29日付の投資家向けリポートによると、東電の損害賠償額は最悪の場合約10兆円に上る可能性があるという。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920000&sid=alK65DGd4fSE

そのため1年以内で見た場合大地震による損害の期待値は7,000億円。一方原発停止によるコストは年2500億円程度。

中部電は4月下旬の決算発表で12年3月期の営業利益予想を1300億円と発表していた。しかし、今後は火力発電所用の燃料費負担増で約2500億円程度のコスト増となる見通し。
http://mainichi.jp/select/biz/news/20110510k0000m020076000c.html

従って1年以内で見ると十分合理的。ちなみに2.9%としても、損害による期待値は2900億円なので、合理的。また2年以内で見ても合理的。2年以内に大地震が起こる確率は
1 - (1 - 0.07)^2 = 0.13
となる(小数点第3位以下切り捨て)。従って2年以内で見ると大地震による損害の期待値は1兆3000億円。原発停止によるコストは2年間で5000億円なので十分合理的。竹中平蔵式計算でも原発停止は合理的。2年以内に起こる確率は次の通り
0.029 * 2 = 0.058
従って損害の期待値は5800億円。1年以内に大地震が起こる確率が2.9%ぐらいだと仮定しても、損害の期待値を問題にするなら原発停止に賛成するのが筋なのである。


こうしてみると浜岡原発停止には十分すぎるほどの合理性がある。にもかかわらず反対が多いのは、ひとえに菅政権、民主党政権だからだと感じざるを得ない。地に足の着かないイメージが定着したため、安全性を重視しすぎて経済的合理性を無視していると先入観をもった人が多いのだろう。それは事実かもしれないが、公表されている数値を使ってざっくり計算した限りでは浜岡原発停止には十分すぎるほどの経済的合理性があるといえる。