『けいおん!!』のDVD7巻まで見た。

けいおん!!』はDVD待ちで毎月ゆっくり視聴してるのだけど学園祭回の20話が面白かった、いや正直面白くはなかったのだが「これでいいのか?」とある種の衝撃を受けたのは事実であって赤塚不二夫的結論を導き出すまでに三日ほど思案を要したという点において面白かったので結果として20話は面白かったのだろうと思う。
そんでどこらへんが衝撃だったのかと言うと、グダグダだけど大盛況なところ。正確に言えば観客の愛によって盛り上がってしまっているところで『けいおん!』メンバーのクラスメイトでもなければ毎週楽しみにテレビの前で待っている熱心な視聴者でもなかったおれは必要とされてないライブだったのだ。まるで『笑っていいとも!』のスタジオ観覧へ行ったような居心地の悪さ。「お前このギャグ中居君が言ったから爆笑してるだけで他の芸人だったら黙殺してるだろ!」と女性客を罵倒することしかできない。
華麗な演奏を期待してたのにグダグダなMCが行われるなんて…こんなの楽しいのは身内だけじゃないか。という批判はしかしながら正しくないのだろう。というのも『けいおん!』は仲間の優しさを無条件に受け入れることを是とした作品だったからだ。ギターはメンバーのコネで値引いてもらい部室は生徒会長の力で割り当ててもらい顧問が担任なので全員同じクラスにしてもらえる。そんな恵まれた環境を当たり前のように受け入れる度量が彼女たちには存在する。「甘えてたらダメになる!」的なオトコノコっぽい葛藤とは無縁だったからこそ『けいおん!』は売れたんだろうし。
そんじゃ何故そのことを忘れてたのかというと『けいおん!!』は一期に比べてクラスメイトがかなり目立つように描かれてて『とらドラ!』と同じかーとうっかり早合点したから。『とらドラ!』は2クール目から主人公達がそれまでモブ扱いだったクラスメイトと絡み始め、スゲー安易な言葉で言えばそれが内から外への成長として描かれる(1クールと2クールのOPの違いが端的)。なので『けいおん!!』もそれを踏襲したんだなーと思っていたのだが、違った。『けいおん!!』のクラスメイトは内から外へ出るためではなく、内を広げるための、ありのままの自分を受け入れてくれる範囲を拡大させるために表れたからだ。だから学園祭ライブでは「会場にいるみんなも軽音部の一員です」と言わんとばかりに観客へマイクを向け、顧問や生徒会長をメンバーとして紹介し、皆が同じTシャツを着る。拙いMCはクラスメイトの声援によって助けられ「キミがいないと何もできないよ」と現状を的確に表現した歌詞までも唄われる。
この状況を見れば意地の悪い視聴者から時折投げかけられた「練習しろよ」という苦言が全く無意味であったことが分かるだろう。彼女たちはテクニックを磨くのではなく(ギターのノイズからライブが始まるのが示唆的だ)部室でしていたようなガールズトークを披露することでライブを盛り上げてしまったのだから。あのお喋りは会場を部室に変えてしまうための練習だったのだ。部室であれば何をしても受け入れてもらえる。彼女たちのライブに4年目があるとすれば壇上でケーキを食べ始めるのは明らかだ。
というわけで20話のライブはハレの場をケに変えてしまう所が面白かったのかなー。んでだからこそ続く21話で推薦を蹴って全員が同じ女子大を目指すってことになってしまうんだろうなーとも思った。ベタベタな関係を卒業してそれぞれの道を進むんだろうなーと感じさせるライブじゃなかったしー。最近の作品って「非日常よりも日常の方が大事だよね」ってなオチで終わること多いけど、その代償みたいな感じなのかな。あと劇場版もやるらしいけど普通に面白かったらそれはそれでよし。もしつまんなくても今回のライブのように観客が盛り上げるので勝ちパターン決まってるじゃん。劇場を部室に変えるんですよ。さすが京アニクオリティ。