日本郵政グループの郵便事業会社(JP日本郵便)がガタガタだ。2007年10月の民営化以降、日本郵便の経営は順調だったが、民主党への政権交代による経営陣の入れ替えなどで2009年10月から収益力が急落した。さらには非正規職員の正規化を行いながら、新規採用は中止などと雇用政策が右に左に大きく揺れ動き、ついに、非正規職員の雇い止めまでになっている。
日本郵便は、15万人超の非正規社員の一部について、今年3月末に切れる契約を更新しない「雇い止め」を全店規模で実施すると報じられている。その規模は2000人程度のようだ。その理由は業績悪化である。
そもそも日本郵便は、当時の亀井静香金融担当相の鶴の一声で非正規雇用の正社員化も進め、昨年12月、非正規社員約6500人を正社員に登用した。その一方で、今回の非正規雇用の雇い止めや、2012年度の新規採用の中止もしているのである。
このやり方は、国家公務員の採用について新規採用を4割削減しながら現役職員の給与はほとんど削減せずに、既得権を守ったのによく似ている。菅政権は雇用が重要というが、それは既得権のある人の雇用だ。既得権のない非正規雇用や未だに採用されていない若者には厳しい。
なお、雇い止めについては、突然契約更新しないトラブルを避ける観点から、厚生労働省では、雇い止めの1ヶ月前の通告や理由の告知などの「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」を示している。
日本郵便の経営は、インターネットの普及に伴う郵便物の構造的な減少という問題を抱えている。そのため、日本郵政全体を改革して、金融(郵貯、簡保)2社は株式を売却する「完全民営化」、郵便・郵便局会社は「特殊会社化」して業務拡大・経営効率化するという「郵政民営化パッケージ」が小泉政権の時に導入され、郵政各社は自立の道を歩むことになった。
ところが、2009年9月に政権交代すると、金融2社の株式売却が凍結された。郵政全体でも民間経営者が駆逐され、その代わりに天下り官僚が送り込まれた。金融2社を完全民営化し、郵政各社が自立し業務拡大するという前提が崩れ、事実上「再国有化」になってしまったのである。