政府は3月の月例経済報告で景気判断を上方修正したが、消費の持ち直しは遅れている。消費税など恒久増税を行った場合、消費の下押し効果は一定の期間を経て減少するのか、それとも増税を実施している限り続くのか、今回のコラムではこうした素朴な疑問に答えてみよう。
消費については、ミクロからみるのとマクロからみるのでは大きく世界が違ってみえる。ミクロの視点で代表的なものが「消費を増やすポイントは新しいニーズを切り開くことだ」という意見で、経済学が専門外の人を中心にしばしば聞かれる。
ただし、これはあくまで供給側の論理だ。個別の企業にとっては、新しい需要にみえても、実は多くの場合、他の企業のお客を奪うという意味で、需要増ではなく、単なる需要の振り替えである。
これは、消費者の財布を考えれば分かる。財布の中身が一定であれば、新しいニーズは既存のニーズをあきらめることで得られるからだ。
これに対し、マクロ経済の消費理論では、財布が消費を決める。新商品の開発など新たなニーズという観点ではなく、所得が増えれば消費が増すというものだ。こうした観点からいえば、消費が低迷しているのは「買いたいものがないからだ」という説明もはなはだ怪しい。実際には、「所得が低迷しているから消費が伸びない」というのがマクロ的な見方である。
このマクロ経済の見方を前提にすれば、消費増税の影響はずっと続く。ただし、この場合、要注意なのは、それぞれの時点において、もし消費増税が行われなかった場合の消費と比べてマイナスの影響がある、という比較になる。