金融系ブログ「Mr. Money Mustache」に、最近ギリシャ・ローマ時代のストア哲学(禁欲主義)に関する記事がありました。ストア哲学の核となる考え方は、「意義のあるいい人生を送るためには、尽きることのない欲望に打ち克たなければならない」というものです。

 禁欲に成功するための方法の一つに、「ネガティブなことを思い浮かべる」というのがあります。愛する人、健康、家族など、自分がすでに持っているすばらしいものがない人生というのをじっくりと考えることで、すでに持っているものを大事するようになるのです。

A Guide to the Good Life: The Ancient Art of Stoic Joy』という本の中で著者は、小さな子どもの2人の父親を対象にした実験を例に上げ、ネガティブなことを思い浮かべることのメリットについて書いています。以下はその実験の内容と結果です。

最初の父親には、数日毎に数分間、自分の子どもが死ぬことや、死ぬ可能性があるということを想像してもらいます。2番目の父親には、そんなゾッとするような恐ろしいことは考えないようにしてもらいます。

最初の父親は、子どもと過ごす時間はとても貴重で長くは続かないかもしれないということに気付き、子どもと過ごす時間を定期的に持つようになりました。2番目の父親も子どものことはとても愛していましたが、仕事が忙しくてあまり子どもと会う時間がなく、「子どもと過ごす時間が取れない」と言い訳にしていました。

万が一、子どもに不幸なことが起こったとしたら、2番目の父親は「もっと子どもと過ごす時間を作っていたら...」と考えて悔やむことになるでしょう。対して、最初の父親ももちろんしばらくの間は悲しむでしょうが、子どもとの時間を少しでも多く過ごせたという事実によって、やがて安らかな気持ちになれるでしょう。

「もし、自分が身体的にもしくは精神的にハンディキャップがあったら」とか「もし、今の仕事がなくなってしまったらどんな人生になっていただろうか?」と想像することも、人生をより良いものにするための似たようなアプローチです。当然ながら、ネガティブなことが起こるかもしれないと常に考えながら過ごしたくはないでしょうが、毎日数分間もしくは週に数回だけでも想像することで、自分が今の人生で手にしているものが宝物だと思えるようになりますよ。

What is Stoicism and How Can it Turn your Life to Solid Gold | Mr. Money Mustache

David Galloway(原文/訳:的野裕子)