ライフ

生活保護を描く漫画家「弱い人が弱い人を叩くのが今の現実」

 生活保護を正面からテーマにした漫画「陽のあたる家」(秋田書店)が先週発売され、早くも話題になっている。生活保護バッシングが続くなか、なぜ敢えて取り上げたのか。作者のさいきまこさんに聞いた。(取材・文=フリーライター・神田憲行)

 * * *
 主人公は中学生の娘と小学生の息子、夫との4人暮らしの主婦。パートを掛け持ちしながら、誕生日に発泡酒ではなくビールを飲むのが幸せというつつましい生活を送っていた。だが夫が病気で倒れ、退職に追い込まれてから坂道を転が落ちるような生活が始まる。NPO団体の支援を受けて生活保護を受給するが、今度はいわれのないバッシングに。ラスト、バッシングしていた相手が主人公の立場を理解して心を入れ替え、

「生活保護が恥ずかしいって言うけど、困っている人が救われることを非難するほうが、よっぽど恥ずかしいと思うもの」

 と語るセリフが響く。

--そもそも生活保護をテーマにしようと考えられたのはなぜですか。

さいき:私自身、離婚して息子と2人暮らしで将来の生活に不安がありました。そんなことを知人にこぼしていたら「生活保護があるよ」と言われて関心を持ちだしたときに、タレントの「次長課長」の河本準一さんの騒動が起きた。なんであれだけ叩かれるんだろうといろいろネットなどを見ていて、どうも生活保護という制度自体をみんな正しく理解していないんじゃないか、この制度の理解を助ける漫画を描こうと思いました。

--漫画では生活保護の申請にいくと窓口で追い返されるいわゆる「水際作戦」の様子や、福祉事務所職員が家の中に立ち入る「資産調査」、子どものお年玉貯金の残高を1円単位まで調べられるなど、リアリティのあるシーンが描かれています。事前にかなり取材されたのですか。

さいき:NPO法人の「自立生活サポートセンター・もやい」にボランティア登録をして、困窮している人の生活相談に立ち会わせてもらったり、生活保護申請に同行もしました。取材となるとどうしても傍観者になるじゃないですか。それよりも実際に 困窮している人と行動をともにして目線を同じにしないと、その人たちの本当の姿が見えないと思いました。

--生活保護を受給した主人公をバッシングするのが、娘の同級生の親でシングルマザーというのが印象的です。この人も生活が決して楽ではないはずなのに。

さいき:「弱い人が弱い人を叩く」というのが今の現実なんです。生活保護をバッシングしているネットでは、「俺も苦しいのに生活保護もらって楽しやがって」という意見が非常に多いのがショックでした。ここ数年ずっと「自己責任論」がやかましくいわれていて、「助けを社会に求めるのは恥ずかしいこと」と刷り込まれているんじゃないでしょうか。真面目に働いていても生活が苦しいのは自分のせいで、社会の構造のせいだとは思わないから、生活保護という助けを利用する人が許せない。しかも、生活保護の報道といえば不正受給ばかり。実際は悪意のない「収入の申告忘れ」も不正受給にカウントされていて、それでも生活保護費全体のわずか0.4%にすぎないのに。

関連キーワード

関連記事

トピックス

三浦瑠麗(本人のインスタグラムより)
《清志被告と離婚》三浦瑠麗氏、夫が抱いていた「複雑な感情」なぜこのタイミングでの“夫婦卒業”なのか 
NEWSポストセブン
オフの日は夕方から飲み続けると公言する今田美桜(時事通信フォト)
【撮影終わりの送迎車でハイボール】今田美桜の酒豪伝説 親友・永野芽郁と“ダラダラ飲み”、ほろ酔い顔にスタッフもメロメロ
週刊ポスト
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
被害者の宝島龍太郎さん。上野で飲食店などを経営していた
《那須・2遺体》被害者は中国人オーナーが爆増した上野の繁華街で有名人「監禁や暴力は日常」「悪口がトラブルのもと」トラブル相次ぐ上野エリアの今
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン