円周率5兆ケタまで計算 長野の男性、自宅のパソコンで
仏技術者のスパコン記録を大幅更新
長野県飯田市の会社員近藤茂さん(55)が8月、自宅のパソコンで円周率を小数点以下5兆けたまで計算、昨年末にフランスの技術者がパソコンで記録した約2兆7千億けたを大幅に更新した。
かつてスーパーコンピューター(スパコン)の独壇場だった円周率計算。近藤さんは「スパコンに追い付け」と手作りのパソコンで試行錯誤を重ね、新記録を達成した。近くギネスブック登録を申請する予定だ。
近藤さんによると、自作パソコンに通常の数十台分となる32テラバイトのハードディスクを搭載。米国の大学院生アレクサンダー・J・イーさん(22)のプログラムを使った。メールを通じてテストを繰り返した後、5月4日に計算を開始。8月3日まで、検証を含め90日と約7時間かかった。
計算中は苦労の連続。妻幸子さん(53)は「電気代が月2万円もかかった」と苦笑する。長女(29)がドライヤーを使い、ブレーカーが落ちたことも。10分間持つ予備電力でしのいだ。パソコンの熱で部屋は40度近くに。部品をむき出しにして扇風機で冷やし続けた。
高等専門学校4年の時、雑誌のプログラムをまねて千けたを計算して以来、円周率にのめり込んだ。食品会社でシステム管理をする傍ら、市販の基板やメモリーでパソコンを自作。記録達成の1台には150万円以上かけた。
「自己満足です」と近藤さんは照れるが、「使ったのは全性能の6割。来春には10兆けたに挑みたい」と記録更新へ早くも意欲をみせている。
2002年にスパコンで円周率を約1.2兆けたまで計算した元東京工芸大教授後保範さんの話 今回のプログラムは過去にスパコンで世界記録を出したものより計算効率が良く、作成した米国の大学院生の快挙でもある。これを刺激に挑戦する人が増え、プログラムのさらなる進歩が期待できる。スパコンは高コストで使用時間が限られるが、パソコンは時間に制約がなく、今後、記録の主役になるだろう。〔共同〕