2024年 4月 26日 (金)

「50兆円足せ」菅首相鶴の一声 新成長戦略は現実離れした数字?

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   2010年6月18日に閣議決定した今後10年間の経済運営の指針となる新成長戦略は、「環境・エネルギー」「健康」「アジア経済」「観光」の主要4分野で123兆円の市場と500万人の雇用を創出という大風呂敷を広げた。

   菅直人首相が打ち出した「強い経済」実現に向けた具体策という位置付けだが、11年度中に消費者物価上昇率をプラスへと転換してデフレを終結させ、期間中の名目成長率を3%と見込むなど、実現性を疑問視する声が早速出ている。

法人税の引き下げ、税率は25%目指す?

   戦略は、主要4分野に「雇用・人材」「科学・技術」「金融」を加えた7分野について330の施策を提示。これらの実現を通じて、20年度までの平均で名目3%、実質2%の経済成長と、失業率を3%台へ低下させるとした。

   330の施策のうち、重要な21施策を「国家戦略プロジェクト」と位置づけ、10、11、13、20の各年度に分けて実現に向けたスケジュール(工程表)を作成。「期限とゴールを設定し、退路を断つ」(経済産業省幹部)ことで確実な目標達成を図るという。

   最大の目玉が、法人税の引き下げ。日本企業の競争力を強化するためとして、法人税の実効税率を現在の約40%から「主要国並みに引き下げる」と明記した。経産省は「25%をめざすということ」と解説する。

   もう一つの目玉がインフラ輸出。首相がトップの「国家戦略プロジェクト委員会」(仮称)を設置し、アジアを中心に原子力発電や新幹線、水などのインフラ輸出を官民が連携して推進、20年までに19兆7000億円の市場獲得を目指すとした。

   新成長戦略は国家戦略室が中心になってまとめたが、実働の柱は経産省。実は2009年末、今年度予算編成で空前の税収不足に陥り、国債が税収を上回るという財政の危機的状況が明らかになり、「経済のパイを増やしていく道筋を示さないと国会の予算審議が持たない」(内閣府筋)として、当時の菅副総理兼国家戦略相の掛け声で「新成長戦略の基本方針」をまとめた。

実行のための財源確保に難しさ

   その際、「経産省が実質的に材料を提供した」といい、さらに、今回の決定に向け、産業構造審議会(経産相の諮問機関)で議論し、6月1日に「戦略5分野で149兆円の市場と258万人の雇用創出」というビジョンをまとめ、これに国交省、総務省などの観光、通信などの分野の取り組みもくわえ、新成長戦略に仕上がった。

   ただ、「政治主導」の流れで、数字はかなり荒っぽいものになった。09年末、事務方がそれなりに施策を積み上げてまとめた「20年度まで平均名目2.4%成長、20年度の名目GDP600兆円」という数字を、菅氏の「50兆円足せ」という鶴の一声で20年度GDP650兆円、20年度まで平均名目3%成長」という「現実離れした数字」(内閣府筋)になった。

   また、法人税については、経産省が目指した、来年度に5%程度先行して引き下げるとの方針が、最終的に新成長戦略に書き込めなかった。財務相だった菅氏が首相に就いたことから「財務省の姿勢が強硬になった」(経産省筋)。野田佳彦財務相は早速、「税率や時期は政府税調で論議していく話だ」と釘を刺している。

   マスコミなどの論評も、法人税引き下げを含め、新成長戦略を実行するための「財源確保に難しさ」(日経)、「財源めど立たず」(朝日)、「財源確保、道険しく」(毎日)など、一斉に疑問符をつけた。菅首相は、増税で成長分野に金を回して経済成長を実現するという「第3の道」を提唱する一方で、「消費税引き上げで財政再建」を表明したため、「成長と財政再建と税制の関係を整理して説明する必要がある」(エコノミスト)と指摘されている。

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