話数単位で選ぶ、2016年TVアニメ10選

今年も早いものでもう師走なんですけど、あまりにも早くて師走すらないなあと歳を重ねるごとに感じるこの頃。先日、音楽版の2016年ベストはやりましたが、今回はアニメ編です。例によって一昨年から参加させて頂いている「話数単位で選ぶ、2016年TVアニメ10選」に参加させて頂きます。今年の1月にロフトで行われたイベントにも参加してとても面白い企画だなあと改めて思いました。新米小僧さん集計よろしくお願いします。では順不同で。

話数単位で選ぶ、2015年TVアニメ10選 - つぶやきの延長線上
「話数単位で選ぶ、2015年TVアニメ 10選」を語る会(新宿ネイキッドロフト)のイベントに行ってきた。 - つぶやきの延長線上

■ルール
・2016年1月1日〜12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。
話数単位で選ぶ、2016年TVアニメ10選: 新米小僧の見習日記

脚本:都築真紀 絵コンテ:飯野まこと 演出:吉田俊司 作画監督:宮地聡子、大塚あきら、大西秀
明、中西和也、服部憲知、坂田理、飯塚葉子、保村成、河本美代子、石井ゆりこ、土屋祐太、飯野まこと 総作画監督:新垣一成

今年いちばん好きなアニメ『ViVid Strike!』から、『はじめの一歩』のオマージュと『なのはシリーズ』の血筋がクロスオーヴァ―するエピソード。リンネの猛攻に防戦一方となるヴィヴィオ。脚を潰されながらもスイッチからのサウスポースタイル、ガゼルパンチデンプシーロールと次々に技を繰り出す。スイッチの踏み込みを見ていると、なのはの血筋がここまで成長したのか……と『なのはシリーズ』を思いだしてしまい涙が……。また、セコンドのコロナ「ヴィヴィオ!」の叫び、ジルの「リンネ!」といった外からの叫び声がまた会場全体に響き渡って涙が止まらない。時間圧縮と光の扱いが優れていた1話とメチャクチャ迷ったのだけど、シリーズの力に負けた。ただただスタッフには感謝しかない。最高のスピンオフ作品をありがとうございました。

その拳で打ち抜け!『ViVid Strike!』 #8「勝者と敗者」感想 - つぶやきの延長線上

脚本:高山カツヒコ 絵コンテ:田村正文 演出:福多潤 作画監督:向川原憲、橋本真希、王益 総作画監督:原友樹

最高の風呂アニメ(百合アニメ)の感動的なエピソードを。『アンジュ・ヴィエルジュ』では闇堕ちした仲間を救う展開になるんだけど、闇堕ちから救ったのと同時に救ったほうにも救済が待っているところが素晴らしい。9話ではどんどん相手(ステラ―天音の関係やその他仲間との関係)との距離が離れていくことで逆に気持ちがわかるようになり、また闇堕ちした仲間も救ってしまう。何より『アドゥレセンス黙示録』的なカーチェイス(ではないが)がアツい。いつか一緒に輝いて…

脚本:小柳啓伍 絵コンテ:入江泰浩 演出:阿保孝雄 作画監督:樋口香里、佐藤友子、池津寿恵、森かや乃、ぎふとアニメーション、多田靖子、森賢、齋田博之、工藤利春、佐藤このみ、沼田広

ビビストも殴り合って分かり合うという素晴らしき百合でしたが、卓球娘は表現がモロに百合かつビビストに負けず劣らずの熱いアニメだった。全話数素晴らしかったが、くるりのカーブドライブ(海堂のブーメランスネイクばりの)を放つ瞬間の身体の捻じりとそのショット(主にカメラアングル)にしびれた!作画について知見があるわけではないんだけど、作画的な快楽を感じた。

  • ヘボット!』 第7話「ヘックションでフエフエのヘボ」

脚本:山田健一 絵コンテ・演出:辻橋綾佳 作画監督:遠藤省二、椎葉幹朗、Kim Ki Yeob

今年いちばん見ていて困惑した『ヘボット』からネジが永遠に増え続けてしまうエピソード。ヘボットは「見る」ことというよりも、「体験した」や「遭遇してしまった」といった、よりフィジカルに迫ってくるものがある。ヘボットに出会ってしまったが最後。思考停止し、いつの間にかに狂ったヘボットに脳が慣れてくる。しかしそれは慣れたのではなく、脳が腐りかけた結果なのである……。ヘボットは音楽でいうところのショートカットスタイルのグラインドコアであり、BPM250のテンポでギャクを敷き詰めてくる。停滞の「間」がない。それと拾うギャグ、拾わないギャグの取捨選択などセンスがいいのだろうと*1大地丙太郎の『これが「演出」なのだっ』でギャグの扱いが書かれているのだけど、こういうことなのかなと思った。とにかくトンデモナイバケモノに遭遇してしまった……

脚本:永井千晶 絵コンテ・演出:黒木美幸 作画監督:赤井俊文、小林由美、河合拓也、古橋聡、三木俊明、武藤信宏 総作画監督高瀬智章

ツイッターでも指摘している人がいますが、『オカルティック・ナイン』完全にフィルムノワールの形式を意識して作られているでしょう。神戸守のコンテが光ったsite10や最後の引き際まで潔かった最終話なども迷ったが、なんといってもsite11でりょーたすが人間とアストラル体の時間・運動の違いを語るシーンにイチコロ!足のカットに移行した瞬間の(言語化しづらい)奪われた時間よ……そして終わりまで無駄なく一気に駆け抜ける。CM抜いても20分以上あるアニメのはずだが10分程度にしか感じなかった。カット割りも素晴らしいですし、言語*2を音楽のように扱う点も見事!

脚本:花田十輝 絵コンテ:三好一郎、石原立也 演出:三好一郎 作画監督:明見裕子、角田有希

関東大会に進んだ北宇治高校の演奏シーンが光るエピソード。1期の5話も思ったけど、三好演出回は時間の感覚が研ぎ澄まされている。単に演奏シーンのみで構成するのではなく、ステージ(オン)と外(オフ)を繋いだり、現在だけでなく過去(記憶)と結びつけることで心に「響く」ように設計されている。ここでいう心というのは、部員たちの願い(袖で祈りを捧げるポーズと、縦に延びる光)によって表象されている。「響く」ことで最後の笑顔「ハーモニー」が生まれる。ユーフォニアムの主題上でいちばんの演出を見せたエピソードだったと思う。

光のイメージ、時間の生成 『響け!ユーフォニアム2』第五回「きせきのハーモニー」感想 - つぶやきの延長線上

脚本:伊藤睦美 絵コンテ・演出:平山美穂 作画監督:河野宏之 総作画監督:爲我井克美

『Goプリ』が僕的にスマッシュヒット(特に1クール目)していたのですが、グッと年齢層を下げた『まほプリ』も面白かった。特に7話アバンとAパート入ってからのコンテ遊びがイイ!急に「誰かいませんか〜〜」とみらいの声から始まるアバン、そしてロングショットになり響き渡る声。海の中に潜るAパート冒頭。息が出来るのにもがき苦しむみらいがかわいくてグッド!物語的にも光るエピソードだったと思う。『まほプリ』もあと数話で終わるかと思うと悲しいですね〜

異文化交流プリキュア!/『魔法つかいプリキュア!』第7話「人魚の里の魔法!よみがえるサファイアの想い!」感想 - つぶやきの延長線上

  • 3月のライオン』 第10話 chapter.20「贈られたもの1」chapter.21「贈られたもの2」

脚本:木澤行人 絵コンテ:黒沢守 演出:宮本幸裕 作画監督:よこたたくみ、野道佳代、藤本真由、杉藤さゆり、西澤真也 総作画監督杉山延寛、潮月一也

今期もっとも多幸を与えてくれたライオンから精神的にキツいエピソード。何より、香子のファムファタルな存在を見てシャフトがこの作品を請け負ってよかったな〜と思った。10話は、奪った者/奪われた者の関係性が露わになる。その奪う/奪われることは仕草に現れていた。将棋を指すその指先、お茶を掴む手、ハンカチで汗を拭く姿、プレゼントを奪う身体の動き。でも、桐山が世界に吐き出す姿を見ることで彼もまた奪われてきた者だったんだと思い出す。11話のあかりさんのシャフ度もよかったし、何よりモモちゃんもよかった。

脚本:柿原優子 絵コンテ:中山奈緒美 演出:村田尚樹 作画監督:木村友美、小島絵美 総作画監督:森本浩文

ポテンシャルだけでいえば今年ナンバーワンといっても過言じゃないんだろうか。そんな『昭和元禄落語心中』から菊比古が自分の落語を見出すエピソードを。カット割りについてとても自覚的な作品だったと思う。艶やかな役や結果的に騙されてしまう男の役をこなす動作(仕草)を、カット割りで意識的に表現する。また音楽のチョイス・タイミングも見事!それはこのエピソードだけでもなく、1話からすごいことになっているし、人生最後の助六の落語回といい一貫された演出だ。来年2期もあるので楽しみですね。

  • 『私たち、らくろじ部!』2話

演出:いわたかずや 作画監督:中村真由美

ラクエンロジック』の放送前に放送された1分間ショートアニメ『私たち、らくろじ部!』から2話を。1分間ショートアニメという短い時間のなかで生まれたクレジット表示が面白い。黒板に表示されたり、壁に掛かったポスターや、机や、キャラクターの身体や……クレジットを探しているだけで飽きさせない面白さがある。また、自分がアニメに求める背景・美術やデフォルメ表現などのレイヤー意識がドンズバだったのが選出理由。2話はそのデフォルメやレイヤーなどの感覚が面白く、そして話にオチもあり最高。キャラもかわいい。『らくろじ部』は2期も放送されていますが、1期のほうが好きかな。ちなみにyoutubuで公式配信あり。忙しい人でも30分あれば2期含め全話見れます!

この圧縮率を味わうべし!/1分間ショートアニメ『私たち、らくろじ部!』が面白い!(感想) - つぶやきの延長線上

■まとめ
自分がよく見ていたってのもあると思うんですが、今年は秋アニメが強かった気がします。選んでないところでも『船を編む』、『ユーリ!!! on ICE』、『鉄血のオルフェンズ』、『ジョジョ4部』等々素晴らしい作品で目白押しでした。『ハイキュー』とか『競女』あたりも見たかったのですがなかなか時間が割けないでいたので来年見れるといいかなと。また『Goプリ』は心底好きだったんですが、「話数単位で選ぶ、『Go!プリンセスプリキュア』」なるものをやってしまったのでここではあげませんでした。それとOVAで『戯言シリーズ』が映像化されましたね。『クビキリサイクル』以外もOVA化してほしいですがどうなることやら。あと個人的なことですが、今年は同人誌に寄稿させて頂いたり、今まで体験しなかったことをさせていただく機会に恵まれた1年でした。来年もまた素晴らしきアニメに出会いたいですね。では、来年もよろしくお願いします(まだ今年最終記事でもないのですが)。

話数単位で選ぶ、『Go!プリンセスプリキュア』10選 - つぶやきの延長線上


■次点

*1:例えば、ネッシーが目の前に現れているのに全く気にしないなど。

*2:キーボードの打鍵音やタイプライターのように