「この差別主義者めー」

 筆が遅いせいで随分と前の話題になってしまったけど、ふと見かけた以下のエントリについて思うところがあるので書きたい。

そもそも人間は自分が被害者であるかのように記憶を変容させてしまう生物なのかもしれない - 法華狼の日記

 このエントリにおいてhokke-ookamiさんは、sionsuzukazeさんという人が自分の都合のいいように記憶を書き換えて他人を批判している……といったことを指摘している。そのついでに、以下の発言を引用したうえで差別主義者であるとも断定している。

sionsuzukaze [韓国] 世の中のあらゆる「パクリ」と「偽造」を一通りやらないと気がすまないんだろうな、あの国は。 2009/02/19

はてなブックマーク - 入国審査すり抜ける「ニセ指紋」、韓国で広く流通か : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 確かにこの発言はひどい。酔っていたとか苛立っていたとかでは弁護不可能なレベルの、正真正銘の差別発言だと思う。正直こっちをメインに取り上げてもいいと感じるほどだ。

 私はこの差別発言についてどんな釈明がなされるのかとワクワクしながら見守っていたのだけど、sionsuzukazeさんはhokke-ookamiさんの指摘全体に対して不貞腐れた態度を見せるだけで、はっきりとした反論をすることはなかった(と思う)。

 この後もhokke-ookamiさんは別のエントリで話を続けたものの、sionsuzukazeさんおよびsionsuzukazeさん寄りと思われる人々は「粘着うぜえ」的な方針を貫いた。それに対して「ダッセー」的な声も寄せられたという印象だけど、結局sionsuzukazeさんの差別発言が大々的に問題にされることはなかった。

 しょうがないので、自分でこの話題を取り上げることにする。ここからようやく本題。

 私が驚いたのは、sionsuzukazeさんの発言程度では人格的評価に対する失点にならないらしい、という事実だ。在特会あたりのメンバーが言っていても違和感ゼロの差別発言なのに、「最悪だ」とか「失望した」とか、そういう声はまるで見かけられなかった。韓国人がパクリ大好きの低モラル民族*1というようなカジュアルな蔑視は、もう空気のようなレベルで日本社会(あるいは日本のネット社会)に根付いているらしい。

 わざわざ具体的に名前を出す必要はないかもしれないけど、とりあえずここではMukkeさんを名指しする。

 たとえば在特会や排害社などに対しては「黙れ」「死ね」などと威勢よく批判の声を発してくれるMukkeさんでさえ、sionsuzukazeさんのカジュアルな差別発言は完全にスルーしていた。問題のエントリのブックマークページでsionsuzukazeさんのコメントにスターをつけていたので、あの差別発言を読んでいなかったはずがないのに。

 この件についてMukkeさんに「ねえねえ、あの差別発言をなんとも思わないの? なんでスルーしてるの? なんでsionsuzukazeさん相手だと腑抜けになるの? ねえ、なんでなんで?」と問い合わせるのも面白そうだけど、さすがに大人げないので自制する。ふざけた口調ではなく真面目に質問してもいいのだけど、それもやらない。

 というのも周囲の人々(より正確にはsionsuzukazeさんを好意的に見ている人々)があの差別発言を批判しない理由*2は容易に想像がつくからだ。

  • あのぐらいで目くじらを立てるのは大人げないと思われちゃうし……
  • 変な目で見られちゃうし……
  • 教条サヨクみたいで恥ずかしいし……
  • バランス感覚のある論客という立場を堅持したいし……
  • 空気が悪くなるし……
  • sionsuzukazeさんとの人間関係もあるし……
  • うっかり口を滑らせただけで本心とは思えないし……
  • 差別主義を批判するsionsuzukazeさんを差別主義者と批判するのは戦略が悪いし……
  • sionsuzukazeさんの大きな功績を考えれば些細な失言だし……
  • リアルタイムで見ていれば批判するけど気づいていなかったし、もう今となっては古い話だし……

 一部トンチキなものも混じっているが、概ねここに挙げたような理由で間違いないだろう。別の理由だという場合は、申告してくれれば付け加える。

 Mukkeさんは別の場所*3で「何故普通の日本人が普通に持っている良識を信じることが出来ないのだろうか?」という言葉に激しく同意していたようだけど、ご本人が周囲の目を気にして「差別ダメー」と声を出すことさえできない現実と照らし合わせると、かなり欺瞞的なものを感じてしまう。傍観と沈黙によって差別は保存されてきたわけだし、「沈黙しているけど本心は反差別だよ!」というのは罪悪感を軽減する言い訳としか思えない。

 念のためだけど、だから差別発言を法で規制しろとかロボトミー手術しろとか、そういうことは主張していない。「法規制しろということですね、わかります」といった馬鹿馬鹿しい混ぜっ返しをする人間が出てくる前にはっきり否定しておく。私が言いたいことは以下の三点だ。

  1. 在特会レベルの突き抜けた連中さえ批判していればOKとは考えないでほしい。
  2. カジュアルに差別発言をしないでほしい。
  3. カジュアルな差別発言を見かけたときも「はいダメー」と言ってほしい。

 戦略が悪いと言われないように、あくまで下手に出て要望する。Mukkeさんなどの例を見るとマジョリティに3を期待することは酷かもしれないけど、決して筋違いではないと思うので、気が向いたときだけでも実行してもらいたいところだ。

 ここで名前を出したsionsuzukazeさんとMukkeさんには一応IDコールをしておく。しかし特に応答は不要だし、わざわざ苦悩するようなポーズも見せてくれなくていい。上の要望を頭の片隅にでも留めておいてもらえれば充分だ。id:sionsuzukaze id:Mukke

*1:sionsuzukazeさんのコメントはそういった意味だろう。

*2:万一「俺はクローズドな場所で直接批判していたよ!」という人がいた場合は、公然とノーを突きつけることがなかった理由としてもいい。

*3:はてなブックマーク - miraclemiracle.net