トランプが指名したタフネゴシエーター

トランプ米大統領は大統領選挙期間中から日本に厳しい発言を繰り返しており、2017年1月11日の記者会見でも貿易不均衡の観点から中国・メキシコと並べて日本に言及している。在日米軍の駐留費用など、トランプ大統領の日本に対する方針はいまだ不透明感が漂う。17年早々に手掛かりとなる駐日米国大使人事が明らかになった。トランプ政権の重鎮ウィリアム・F・ハガティ氏が新たな駐日大使に就任することになったのだ。

信頼関係があると主張する安倍政権だが本当だろうか。(時事通信フォト=写真)

米国大使と言えば、前任者であるキャロライン・ケネディ氏は目立つ活動とは裏腹に、特に大きな実績を残さなかった。米国では大使ポストは選挙の論功行賞人事による情実任用ポストとして使用されることも多い。オバマ政権下におけるケネディ大使は典型例だ。トランプ政権では同政権内の実力者が駐日大使として赴任することが決まり、オバマ政権下で太平の世を謳歌してきた日本政府は経済・外交における厳しい交渉に直面することが予想される。

ハガティ氏は12年の大統領選挙では共和党・ロムニー陣営に所属しており、16年の共和党大統領予備選挙ではジェブ・ブッシュ氏を推していた。つまり、トランプ大統領とは対立する党内主流派に属する政治的エスタブリッシュメント側の人間だ。しかし、ハガティ氏はジェブ・ブッシュ氏が予備選挙から撤退した際、いち早くトランプ支持に転向してトランプ大統領の信頼を勝ち取った。

政権移行チームでは、政権の政治任用ポストに関する責任者の地位を得るに至っている。米国では大統領就任時に約4000人の政府スタッフが、政治任用によって総入れ替えになる。政治任用に影響力を持つ地位にあったことは、ハガティ氏に対するトランプ大統領の信頼の厚さを如実に表している。