不動産アドバイザーに聞く。悪事は水道代で露見する
マンションやアパートなどに入居すると、水道代は家主や管理会社、管理組合から請求されることがあります。「それゆえに、水道代から部屋での悪事が露見することがあるんですよ」と話すのは、「女性の安全な暮らし」をテーマに活躍する不動産アドバイザーの穂積啓子さん。

詳しいお話を聞いてみました。

■水漏れでない場合は、悪事かも?

穂積さんは、水道代で悪事が露見した例をこう話します。

「ある高級賃貸マンションのオーナーから、『2カ月前に入居した一人暮らしの会社員さん、水道代が月に5万円を超えているのだけど……』と連絡がありました。『単身者の一般住居』として契約、入居された方です。水漏れにしても使用量が多すぎます。何かあるのでは、と心配しつつ、その方の部屋をお訪ねして、『水漏れでは? 部屋の点検をさせてください』とドア越しにお聞きしました。が、ご本人からは、『自分で点検します』、『業者に見てもらったけど大丈夫だった』という返事ばかりで、われわれの点検依頼には応じていただけませんでした。

それとは別に、隣近所から、『深夜に騒ぎ声がする』などの苦情もありました。

すると3カ月後、その部屋に警察が踏み込んだのです。部屋で、違法の風俗店を営業していたというわけです。トラブルがあったお客が通報したそうです。

入居時の『会社員』としての申告は正しかったのですが、夜と週末に、その部屋で副業をしていたとのことでした。

ほかに、『不法入国の外国人を複数、住まわせていた』、『レンタルルームや、ホテルのデイサービスのような営業をしていた』、『また貸しをしていた』という事例もあります」

一般住居の場合、水道代の半分以上は、トイレと風呂での使用によるというデータがあります。

「そうです。ですから、半端ではない水道使用量となったときは、トイレと風呂をそれだけ使用していると考えられます。共同住宅において、水道代を管理会社や家主が入居者に請求する場合、当然、家主側は各入居者の水道使用量と水道代を把握しています。ある入居者が、今月だけその量が跳ね上がっていたり、また、ほかの居住者の平均的使用量に比べて格段に多かったりする場合は、たいてい、『なぜこんなに使っているのかな』という疑問がわきます」(穂積さん)

■同せいを始めたら、家主は水道代で気付く

水道代が急に上がっている入居者に対しては、「まずは、『トイレの水漏れ』を疑います。入居者が知らないうちに水が漏れているということが時々あるからです。ですから、家主側は入居者に対してその都度、水漏れ点検の依頼など、確認をするようにします。水漏れでない場合は、複数か長期の来客があった、または入居者が増えたのだなと予想します。入居者が1人、2週間だけ増えたとしても、水道代は跳ね上がりますから」と穂積さんは説明を加えます。

「何かあるな」と危ぶむのはどういうときですか。

「点検の依頼をしたとき、居住者が挙動不審だったり、かたくなに部屋に入ることを拒むなどの反応がある場合は、契約違反になることをされている場合が多いです。例えば、賃貸マンションで単身者入居の契約をしていたけれど、『同せいを始めた』というケースは多いですね。この場合、入居時の契約内容に違反することになりますから、家主か管理会社に通知してください」(穂積さん)

同居者ができた場合、家主に伝える必要性について、穂積さんはこう説明します。

「例えば、火災が起こったときの事後処理にかかわる、指名手配犯や不法滞留外国人を隠ぺいしているなどということも考えられるわけです。よって、入居者が増える場合は、入居時に誰もが審査を受けるのと同様に、住民票、身分証明書の写し、緊急連絡先などを家主に提示する必要があります。単身者専用住宅でない限り、移転を促されたり家賃がアップすることはありませんので、安全に快適に暮らすためにも、ぜひ通知をしてください」

では、身に覚えがない高い水道代を請求された場合はどうすればいいのでしょうか。

「すぐに管理会社や家主に連絡してください。業者や水道局が点検に来て、水漏れだと判明した場合は、修理代と、漏れた分の水道代が免除になる場合もあります」(穂積さん)

水道代ひとつで、生活の様子や状態が判明するのです、恐るべし、水道代。

監修:穂積啓子氏。

「女性の安全な暮らし」をテーマとして、大阪市中央区を拠点に活動する不動産アドバイザー。その活躍ぶりは、コミックエッセイ『不動産屋は見た! 〜部屋探しのマル秘テク、教えます』(原作・文:朝日奈ゆか、漫画:東條さち子 東京書籍 1,155円)に描かれました。同書の主人公「善良なる大阪の不動産屋さん」は、穂積氏がモデルです。

(藤井空/ユンブル)