2011年02月22日
電子出版「緊急報告」 ――アップル「いつもの悪い癖」は「高圧的で独禁法違反」と、やっぱり司直が動いた。
昨日の続き。
アップルの方針転換で今後の電子出版がどうなっていくか。昨日は読者に対する影響を見たが、今日は電子出版を手掛ける側の今後。そして司法の動きなど。
電子出版を手掛ける企業側から見ると、Appleデバイスに書籍を配信する場合、「すべて」をアップルに握られてしまう。
なんたってまず、「AppStoreで買ったもの以外が見られるアプリは御法度である」なのだから、他で売った書籍や雑誌はアップルデバイスで読めない。
信じられないことに、付随して「アプリから外部の販売サイトにリンクを貼るのは禁止」「アプリ内からのコンテンツ購入禁止」(笑)とかいうゴーマン条件も出されており、事実上、アップルデバイスで読みたい人向けには「すべて」AppStore内で完結させて売るしかない。
つまり、嫌でもアップルに30%のマージンを取られてしまう。アップルより仕切りのいい電子書店があってもそこを使えないし自社決済もできない。要は追加コンテンツ配信とかいうレベルまで含め「全部寄こせ」ってわけだ。
問題はコストだけでない。
たとえば追加コンテンツを仕方なくアップルから流すとしても、それはそれでアップルの審査に時間が掛かる(いつまでに審査するというガイドラインはなく、先着順でもない)。もちろんOKが出るかはわからないし、たとえ審査に通って公開しても、今度はいつでもアップルの度量で配信停止にされてしまう危険性がある。
つまりアップルは、言うことを聞かない企業や気に入らない企業に対しては、理由も明示せずいつまででも「審査中」あるいは「拒絶」とかやって圧力を掛けられる。
これは「インフラ屋」がやっていいことではない。
さらに問題なのは、アップルの方針により顧客情報を発行元が掴めない点だ。電子書籍や電子雑誌は紙版よりはるかに売れない(現状では)。出しても損ばかりだから移行が遅い。
その状況で普及を考えるなら、単に「出しました」以上の戦略が必要だ。たとえば電子雑誌で顧客属性がわかればそれに従った広告提案が可能になり、広告主の効率的な開拓ができる。
それがアップルの方針ではできない。
さらに、長くなるので今日は書かないが、広告を巡りさらに恐ろしい「ビッグブラザー」が生まれる可能性すらある。まあ業界の方なら想像できるだろうけど。
「さすが」「アップル」(怖)。
もちろん電子出版業界はこの話でもちきりだ。
この方針が決まる前にリリースされたアプリに関しても、アップルは6月末を期限としてこの方針を強要する構えらしいと噂では聞く。
つまり各社とも、アップルから抜けるか嫌々言うことを聞くか、準備を始めるためにあと1、2か月で決断を迫られることになる。各社冷静に対処方針を検討中と聞くが、私が聞いた範囲では、陰でアップルはどえらく評判が悪い。
アップルジャパンには調整に動いてほしいんだけど。まあいつもどおりか(ハアー)
ここからは私の予測だが、もしこのままの状況が放置されるなら、自社にある程度のブランド力を持っている大手出版社は、アップルとにこにこ付き合いつつも半身は引いて、アップルがドミナントにならない限りアンドロイド陣営やソニー、アマゾンに徐々に軸足を移すだろう。食うや食わずの小規模出版社はどうするんだろうか(気の毒)。
でもまあ救いはある。
あまりにあからさまに悪質で強欲な方針のため、米国や欧州で独占禁止法違反の調査が掛かった。「優越的地位の濫用」という判断なのだろうか。詳しくはWSJに詳しいのでぜひ。
WSJ記事では30%という仕切りの適正さも問題にされているが、私が問題と思うのはそれよりも前述のリンク禁止やアプリ内コンテンツ購入禁止だ。そこまで干渉するのでは「高圧的」と言われても仕方ないだろう。
それに顧客属性情報の独占も問題。
米国は広大な国土を持つため書店が身近にない人が多く、日本よりはるかに雑誌の定期購読が進んでいる。そのため出版界にとって定期購読者の読者管理や媒体ブランド育成、各種プロモーションに、読者属性把握は極めて重要だ。そこをアップルが握って離さないのでは、日本より仕事が厳しいだろう。
業界外の方には理解が難しいかもしれないが、日本でも米国でも、今回のアップル騒ぎで最大の問題とされているのは実は電子書籍ではなく、電子雑誌の「定期購読」だ。コスト面、情報面、広告面で、アップルが電子雑誌を潰すという見方すら出てきている。
独禁法違反捜査を受けてアップルがどう出るか、見守っていく。司直が動けばこのような「アレ」方針は撤回されると信じたいが、能天気に楽観視していては危険だろう。なんたってなあ(笑)。
アップルの方針転換で今後の電子出版がどうなっていくか。昨日は読者に対する影響を見たが、今日は電子出版を手掛ける側の今後。そして司法の動きなど。
電子出版を手掛ける企業側から見ると、Appleデバイスに書籍を配信する場合、「すべて」をアップルに握られてしまう。
なんたってまず、「AppStoreで買ったもの以外が見られるアプリは御法度である」なのだから、他で売った書籍や雑誌はアップルデバイスで読めない。
信じられないことに、付随して「アプリから外部の販売サイトにリンクを貼るのは禁止」「アプリ内からのコンテンツ購入禁止」(笑)とかいうゴーマン条件も出されており、事実上、アップルデバイスで読みたい人向けには「すべて」AppStore内で完結させて売るしかない。
つまり、嫌でもアップルに30%のマージンを取られてしまう。アップルより仕切りのいい電子書店があってもそこを使えないし自社決済もできない。要は追加コンテンツ配信とかいうレベルまで含め「全部寄こせ」ってわけだ。
問題はコストだけでない。
たとえば追加コンテンツを仕方なくアップルから流すとしても、それはそれでアップルの審査に時間が掛かる(いつまでに審査するというガイドラインはなく、先着順でもない)。もちろんOKが出るかはわからないし、たとえ審査に通って公開しても、今度はいつでもアップルの度量で配信停止にされてしまう危険性がある。
つまりアップルは、言うことを聞かない企業や気に入らない企業に対しては、理由も明示せずいつまででも「審査中」あるいは「拒絶」とかやって圧力を掛けられる。
これは「インフラ屋」がやっていいことではない。
さらに問題なのは、アップルの方針により顧客情報を発行元が掴めない点だ。電子書籍や電子雑誌は紙版よりはるかに売れない(現状では)。出しても損ばかりだから移行が遅い。
その状況で普及を考えるなら、単に「出しました」以上の戦略が必要だ。たとえば電子雑誌で顧客属性がわかればそれに従った広告提案が可能になり、広告主の効率的な開拓ができる。
それがアップルの方針ではできない。
さらに、長くなるので今日は書かないが、広告を巡りさらに恐ろしい「ビッグブラザー」が生まれる可能性すらある。まあ業界の方なら想像できるだろうけど。
「さすが」「アップル」(怖)。
もちろん電子出版業界はこの話でもちきりだ。
この方針が決まる前にリリースされたアプリに関しても、アップルは6月末を期限としてこの方針を強要する構えらしいと噂では聞く。
つまり各社とも、アップルから抜けるか嫌々言うことを聞くか、準備を始めるためにあと1、2か月で決断を迫られることになる。各社冷静に対処方針を検討中と聞くが、私が聞いた範囲では、陰でアップルはどえらく評判が悪い。
アップルジャパンには調整に動いてほしいんだけど。まあいつもどおりか(ハアー)
ここからは私の予測だが、もしこのままの状況が放置されるなら、自社にある程度のブランド力を持っている大手出版社は、アップルとにこにこ付き合いつつも半身は引いて、アップルがドミナントにならない限りアンドロイド陣営やソニー、アマゾンに徐々に軸足を移すだろう。食うや食わずの小規模出版社はどうするんだろうか(気の毒)。
でもまあ救いはある。
あまりにあからさまに悪質で強欲な方針のため、米国や欧州で独占禁止法違反の調査が掛かった。「優越的地位の濫用」という判断なのだろうか。詳しくはWSJに詳しいのでぜひ。
WSJ記事では30%という仕切りの適正さも問題にされているが、私が問題と思うのはそれよりも前述のリンク禁止やアプリ内コンテンツ購入禁止だ。そこまで干渉するのでは「高圧的」と言われても仕方ないだろう。
それに顧客属性情報の独占も問題。
米国は広大な国土を持つため書店が身近にない人が多く、日本よりはるかに雑誌の定期購読が進んでいる。そのため出版界にとって定期購読者の読者管理や媒体ブランド育成、各種プロモーションに、読者属性把握は極めて重要だ。そこをアップルが握って離さないのでは、日本より仕事が厳しいだろう。
業界外の方には理解が難しいかもしれないが、日本でも米国でも、今回のアップル騒ぎで最大の問題とされているのは実は電子書籍ではなく、電子雑誌の「定期購読」だ。コスト面、情報面、広告面で、アップルが電子雑誌を潰すという見方すら出てきている。
独禁法違反捜査を受けてアップルがどう出るか、見守っていく。司直が動けばこのような「アレ」方針は撤回されると信じたいが、能天気に楽観視していては危険だろう。なんたってなあ(笑)。
この記事へのコメント
1. Posted by _ 2011年02月26日 10:03
アップル批判のコラムなのに、左側のAmazonアフィでしっかりアップル商品を載せてるとは、スゴいですね。
2. Posted by (・∀・) 2011年07月16日 15:27
「インフラ屋」の定義とは何ですか?
ただの家電屋にしか見えませんが。
農家や八百屋も「インフラ屋」ですか。
ただの家電屋にしか見えませんが。
農家や八百屋も「インフラ屋」ですか。