今年も春が近づいてきました。花の季節です。
徐々に暖かくなり湿度も高くなってくると、季節性の疾患が増えてきますので、喜んでばかりもいられません。今回は、ムズムズ痒い、時に痛い「水虫」の受診率の季節変化を調べてみました。
水虫は、白癬菌というカビ(真菌)が皮膚の角質層に感染・寄生して生じる疾患で、高温多湿な梅雨の時期が流行のピークといわれます。ただ、秋冬にはかかりにくいかというと、必ずしもそうとはいえないようです。この時期はブーツなど蒸れやすい靴を履く機会が多く、また、暖房が完備された空間で過ごす機会も増えます。
つまり、白癬菌が繁殖するのに適した環境が保持されていれば、明らかな症状がなくとも、秋冬であっても白癬菌が残存しているケースは少なくないそうです。ただし、梅雨の時期などに比べれば増殖しにくいのは確かですから、その点で、水虫の治療は秋冬が勝負ともいわれます。
受診率は2月が底で、3月から上昇
今回調査対象にした疾患は、ICD10:B350-B359の爪・手足・体部・陰部・頭部などの白癬(はくせん)全般です。76万5000人を観察母集団(男性39万8000人、女性36万7000人)として、2009年1~12月の毎月の白癬(疑いは除外)での受診をレセプト上で観察しました。いつも通り、健康保険組合のレセプトを使って調査しています。
まず、男女別に月々の受診率の変化を見てみました。図1の通り、3月から上昇し、男女共に7月にピークを迎え、秋に向かって低下していく様子がよく分かります。やはり梅雨シーズンは高くなるようで、実感のある結果です。
また、男性を例に取ると、ピークである7月の受診率は、最低である2月の約1.5倍で、女性も似たような傾向です。皆さんは、この1.5倍という数字をどう考えますか? 私は、夏に向けてもっと急激に伸びると考えていたので、思いのほか差が小さいように感じました。
水虫受診率に大きな男女差はなし
受診率自体は、冬季は男性が0.7%弱、女性が0.5%強で、夏季は男性が1.0%弱、女性が0.9%前後。つまり、冬季は男性が150人に1人、女性が200人に1人、夏季は男性が100人に1人、女性が110人に1人といったところです。ただし、この数値はあくまでも医療機関への受診を対象としているので、OTC薬で治療している人も含めれば結構な割合の人が毎年困っているのだと思います。
受診率の男女差を見ると、通年で0.1%程度の違いがあります。「水虫は男性の病気」というイメージが強かったのですが、データを見る限り、男女差はそれほど大きくないようです。これもちょっと意外でした。
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著者プロフィール
木村真也(株式会社日本医療データセンター社長)●きむらしんや氏。1981年京都産業大学卒。大手外資系製薬会社マーケティング部長、CROバイスプレジデントなどを経て、2002年に日本医療データセンターを設立。
連載の紹介
レセプトを読み解く
日本医療データセンター(JMDC)では、複数の大手健康保険組合からのレセプトや健診データを基に、様々な分析を行ってます。1000万件を超える膨大なデータから、同社社長の木村氏が、医療の「今」を探ります。
この連載のバックナンバー
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2011/12/22
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