2017.06.30

「若い女性の8割が消える」地方自治体のゾッとする未来

さて、対策はあるのだろうか…
わずか7年後には、国民の3人に1人が65歳以上、23年後には自治体の半数が消滅――急激に少子高齢化する日本には、次々と悲惨な事態が待ちうけている。では私たちはどうすればよいのだろうか? 近著で人口減少日本の現実を暴いた河合氏(『未来の年表』)と石破氏(『日本列島創生論』)が、日本を救う「カギ」について語り合った。

就職氷河期のツケ

河合 今年4月、新しい「将来推計人口」が発表されました。高齢化や少子化のペースは従来の予想よりも少々緩やかになりましたが、50年後には総人口が9000万人を割るなど、そこで示された「未来予想図」は相変わらず厳しいものです。

石破 少子化・高齢化の大きな傾向は変わっていませんね。

同じ4月には「生涯未婚率」も発表されていますが、こちらもなかなかショッキングな数字でした。50歳までに一度も結婚したことのない人が男性の4人に1人、女性では7人に1人もいるという。これでは出生率が高くなるはずもない。

未婚の人が増えている背景には、「見合い結婚」が消滅したこともあります。というのも、未婚の女性に話を聞いてみると、断られるのを怖がってか、「声をかけてくれる男性がいない」「男性が本気で交際を申し込まない」というのです。

河合 ひと昔前ならお見合いという手段が、多少強引にでも男女の出会いを演出してくれていた。戦前など、見合い写真だけで決めちゃう、なんていうこともありましたよね。

河合雅司『未来の年表』著者の河合雅司氏

石破 そう。そんなやり方がいいとはあまり思いませんが、お見合いという仕組みが結婚を促進していたのは事実です。

出生率を上げるためにも、独身の人がどうやって結婚相手を見つけるかが社会的な課題です。国の政策としては難しい面もありますが、誰かが仲人さん的な役割を果たすとか、出会いの場を増やしてあげないといけないのでしょうね。

河合 2020年には女性の過半数が50歳以上になります。つまり、出産可能な女性が大きく減り始めるということですから、少子化は今後も歯止めがかかりそうにありません。

石破 少子化の背景には社宅や官舎の減少もあると私は考えています。家賃が安い社宅や官舎は、まだ収入が多くない若い夫婦にとっては可処分所得を増やす機能があった。だからかつては若いうちに子供をもうける余裕がありました。

ところが今は、企業や役所が社宅や官舎を削減しています。であるならば、ほかの手段で若い世代の可処分所得を増やしてあげないと、出生率は上がらないと思います。

河合 出会いの場としては職場も大きなファクターですが、「職場には結婚対象になる異性がいない」という人が、全体の4割になっているという調査結果も出ていますね。

石破 4割も……なぜそんなに高くなるんですか?

河合 就職氷河期と呼ばれた時代に若者を採用せず、非正規の労働者で対応してきたツケが出てきているからです。

石破 なるほど。就職氷河期の影響が若者の結婚問題、ひいては日本の人口問題に影響しているわけですか。

AIやロボットは人口問題を解決しない

河合 人口問題については、ある時期に起きた出来事が数年後にどういう形で現実に跳ね返るかが予測できる側面があります。そこで私の最新刊『未来の年表―人口減少日本でこれから起きること』では、これから現実に起きうる出来事をカレンダー形式で体系的に示しました。

たとえば、2018年に75歳以上人口が65~74歳人口を上回る、2024年に全国民の3人に1人が65歳以上になる、2039年には火葬場不足が深刻化する……。

こうした近未来の現実を踏まえないまま、政治家も官僚も議論していることが多いのです。何がこれから日本に起こるのかをまず明確に理解してから議論していかないと、一筋縄ではいかない人口問題は決して克服できません。

石破 世代間の温度差もあるのでしょうね。私たちの年代は、嫌な言葉ですが、「逃げ切れる」世代。年金でも社会保障でも、そのメリットを大いに享受できる。しかし、20代になる2人の娘世代を考えると、「彼女たちが生きてゆく時代は一体どうなっちゃうんだろう?」と、ゾッとします。

『日本列島創生論』を上梓した石破茂氏

だから、私は最近「投票義務制」に関心を持っているんです。日本では18歳から投票権を付与されましたが、若年世代はともすると自らは投票権を行使しないのに、「高齢者がみんな勝手に決めて」と“シルバー民主主義”批判をしがちです。だけど、そんな彼らこそが人口減少時代の主役なんですから、きちんと投票して、彼ら自身に未来を決めてほしい。

そして政府は、彼らが正しい判断を下せるよう、人口問題についての情報を提供すべきです。いまは静かな有事。有事における情報発信こそがものすごく大切です。

河合 近未来についての正確な情報がないと、危機感の共有ができませんからね。誰もが人口が減っていく事実も知っている。だけど、それが実際どう進行してゆくのか、自分の子孫がどんな社会に生きていくのか、ということを知らなさすぎます。

たとえば『未来の年表』で書いたように、2025年をピークに、ついに東京都ですら人口が減少していくのですが、知る人はほとんどいないのではないでしょうか。