大学図書館における外部委託状況の量的調査

  • 佐藤 翔
    筑波大学大学院図書館情報メディア研究科
  • 逸村 裕
    筑波大学大学院図書館情報メディア研究科

書誌事項

タイトル別名
  • A survey of outsourcing in academic libraries in Japan
  • ダイガク トショカン ニ オケル ガイブ イタク ジョウキョウ ノ リョウテキ チョウサ

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抄録

【目的】近年,大学経営の効率化等の要求を背景に,大学図書館ではサービスの増強・拡大とその一方での外部委託の進展が著しい。しかし大学図書館全体の外部委託の状況についてはこれまで十分には把握されてこなかった。本稿の目的はわが国の大学図書館における外部委託の現状を明らかにすることである。【方法】2007年6月から8月にかけて,全国の4年制大学704館を対象に外部へ委託している業務の内容に関する郵送・自計式の質問紙調査を実施した。回答者は質問紙に挙げた41の業務それぞれについて委託・非委託・業務自体行っていない,のいずれかを回答する形式とした。有効回答数は358大学(51%)であった。【結果】調査結果は次の通りである。(1)外部委託は業務の専門性を問わず広範囲で行われている。(2) 整理・閲覧など図書館固有の業務を委託する場合には委託範囲が業務全体に及ぶ場合が多い。(3)国公立大学よりも私立大学,研究重視型の大学よりも教育重視型の大学で外部委託が進んでいる。(4)規模の大きい図書館で各業務を委託している割合が高いが,企画・立案や選書等まで含めた委託については規模による差が小さく,むしろ中規模館のほうが進んでいる場合もある。(5)外部委託の進行状況については地域差があり,地方よりも都市部で委託化が進んでいる。特に近畿地方で閲覧関連業務の委託化が進んでいる。これらの結果から,都市部にある中規模・教育重視型の私立大学において現在最も図書館業務全体の外部委託(全面委託)化が進んでおり,委託を受け入れる市場も成熟しつつある。これらの大学で今後さらに委託化が進んでいくことが予想される。

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