「枝野批判」オフレコ発言をすっぱ抜かれ、
今度は東京新聞記者を「出入り禁止」
にした経産省の「醜態」

広報室長は直撃にひたすら沈黙

 東京電力・福島第一原発の賠償案をめぐって、細野哲弘資源エネルギー庁長官の「オフレコ発言」を14日付け当コラムで紹介したところ、経済産業省の成田達治大臣官房広報室長が私の「上司」に抗議電話をかけてきた。その件は17日付け当コラムでお伝えした。

 いずれの記事も大きな反響を呼び、ツイッターでは前者に1000、後者には2000を超えるツイートをいただいた。多くが「面白い」と評価してくれたようで、応援メッセージもたくさん受け取った。1人で強力な役所を敵に回す記事は、読者の支持がなければ続けられない。この場を借りて厚くお礼申し上げる。

 今回もその続報である。

 私は18日付けの東京新聞でも『私説』という署名入りコラムで細野長官の発言内容を紹介した。

「経済産業省・資源エネルギー庁は歴代幹部の天下りが象徴するように、かねて東電と癒着し、原発を推進してきた。それが安全監視の甘さを招き、ひいては事故の遠因になった」と指摘しつつ、細野発言について「自分たちがどちらの側に立っているか、率直に述べている。まあ正直な官僚である」と書いた。

 すると、経産省はまたもや思いもよらない方法で「反撃」に出た。

 東京新聞の経産省クラブ詰め記者に対して、事務次官など幹部との懇談に出席するのを禁止したのだ。いわゆる懇談への「出入り禁止処分」である。

 当事者である私自身に対しては、これを書いている19日午後7時現在に至るまで、経産省はいっさい接触しようとしてこない。私との接触を避ける一方、先のコラムで紹介したように「上司」に抗議電話をかけ、それでも効き目がないとみるや、今度は取材現場で働く記者に懇談出席禁止の制裁を加えたのである。

 これには本当に驚いた。

 こうした展開は霞が関のマスコミ対応、そして「記者クラブ」という制度の本質を物語っている。日常の取材活動をしていると、なかなか見えてこないが、いったん役所をはっきり敵に回すと何が起きるか。「権力の本性」をかいま見る思いがする。今回はその点を書く。

 「出入り禁止処分」について確認しようと思って、私は19日午後、事前のアポイントなしで経産省広報室を訪ね、成田を直撃した。アポなしで訪ねたのは、前回コラムで紹介したように、成田はまず「それは『上司』に聞いてください」と逃げようとしたからだ。事実を確認しないことには、話が始まらない。

直撃に沈黙する広報室長

 成田は室長席に座っていた。私を見ると一瞬、驚いた様子を見せながらも「あちらへ」と部屋の隅の椅子に案内してくれた。以下は、やりとりである。

「どうも突然、時間をいただいて、すみません。いくつか聞きたいことがあって来たんですが・・・」と話し始めると、成田は途中で言葉をさえぎって「これはどうなるんですか?」と聞いた。

「どうなるって」


「いや、つまりこれは記事になるんですか」


「まだ何も決めていません」

「きょうお話を聞きたいと思ったのは、私のコラムがサイトに出た。そして昨日の東京新聞にも記事が出た。すると、経産省は東京新聞記者に対して幹部との懇談に出席するのを遠慮するよう求めたという。まず、それは本当なのか。私の記事に関連して、東京新聞記者の取材活動を制限するような措置をしたとすれば、それはどういう判断か?」

 成田は沈黙している。

「つまり、事務次官や官房長との懇談への出席を遠慮してくれ、と言った件です」

 成田はしばらく下を向いていたが、ようやく口を開くと「お話しできないですね」と言った。

「どうしてか」

「こないだのようなことがあったので・・・」

「こないだのようなこと、というのはどういうことか」

 沈黙が続く。

「つまり、私があなたと電話で話をして、それを記事にしたということか。それでお話しできないということか」

さらにたたみ掛けた。

「私は先ほど言った理解で正しいかどうか、を聞きに来ただけだ」

 すると沈黙した後、成田は「これからミーティングがあるので、あらためてアポイントをとってください」と言った。

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