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米国で学費を工面するための6つの方法

2011/03/02

 米国の大学の学費は決して安くない。私が進学した私立大学は年間207万円(1ドル=83円換算。以後今回の記事はこのレートで計算する)程度だった。では、米国の学生はどのようにして学費をまかなっているのか。またもし十分な貯蓄のない状況で、米国の大学院に進学することになった場合には、どのような手があるのか。今回はこれらについて解説したい。

 ナースプラクティショナーNP)の大学院に進学する前、私立大学の生物学部に進学した私は、幸いにも親が授業費と生活費のほとんどを負担してくれた。週に数時間のアルバイトの収入などたかが知れているし、親に負担してもらえなければとても通えなかったであろう。

 もっとも、だからといって大学に集まっていたのは裕福な家庭に育った子供たちばかりではない。もちろん、ニューイングランド地方の裕福な家庭で育った子供たちやインドの大金持ちの御曹司もいたが、ボストンの貧しい地域の出身で、奨学金とローンですべてをまかなっている学生や、生活費を稼ぐために授業の合間をぬってアルバイトしている友人もいた。それを見て「大学院くらいは経済的に独立しよう」と思った私は、親に「自分で払う!」と宣言したのだった。

 しかし、NP修士号を取得するための講座は、かなりお金がかかる。私の在籍当時、イェール大の看護大学院の学費は1学期で約116万円。米国は2学期制のため、1年で232万円である。しかも私は看護師ではなかったので2年では済まず、他専攻の学士保持者用の、看護師とNP資格を一気に習得する3年間のコースを受講する必要があった。

 ちなみに当時、イェール大のメディカルスクールは年間290万円と看護大学院よりもさらに高額だった。しかも4年間である(Webサイトによると、来年度の学費はNPが年間249万円、メディカルスクールは373万円に値上げされているようだ)。これは学費だけであり、実際に生活して、学んでいくためには家賃、生活費、健康保険代、教科書代、車代(臨床研修に行くのに車がほぼ必須となる)などが加わることになる。

受験と同時に申し込む、大学進学のためのローン
 米国で医師やNPとなるための大学もしくは大学院の費用を、個人で捻出するための主な方法は、(1)積み立て貯蓄(2)借金(3)学校からの奨学金(4)外部からの奨学金(5)軍への入隊(6)医療機関の制度の活用-の6つがある。

 大学に通うための借り入れには大きく分けて、学生の親が借りるローン(PLUS loanなど)、本人が借りる公的ローン(Stafford loan、Perkins loanなど)、プライベートローン(Alternative student loanとも呼ばれる)の3つがある。前回の記事でも書いたように、公的ローンとプライベートローンにはかなりの金利差がある。そのため、公的ローンだけでどのようにやりくりするかがポイントになるのだ。

 公的ローンの申し込みは、大学・大学院受験と同時に行う。「FAFSA」と呼ばれるその申込書では、過去数年間の収入、(年齢によっては)親の収入、結婚していれば結婚相手の収入、家庭に住んでいる人数と家族構成、などの質問に細かく答えさせられる。これを基にして、政府が借り入れできる額を設定するのだ。ところが公的ローンには上限額があり、私立大学に進学するとどうしても足が出てしまう。

 そのため、プライベートローンを借りることになるのだが、ローンの前に通常はまず奨学金に応募する。学校から出る奨学金には、トップクラスの新入生に自動的に付与されるものと、目的が明示されたフェローシップとがある。学校が成績上位者に付与する奨学金の額は、FAFSAの情報を参考に決められ、入学試験上位の学生には、合格書類と共に「入学した際には学費を●●ドル免除します」という知らせが来る。優秀な学生を集めるため、よりランクの低い大学では、優秀な学生には奨学金が多く出る可能性が高くなる。私の友人もハーバード大に受かったのに、奨学金の出たコーネル大学に進学した。

著者プロフィール

緒方さやか(婦人科・成人科NP)●おがた さやか氏。親の転勤で米国東海岸で育つ。2006年米国イェール大学看護大学院婦人科・成人科ナースプラクティショナー学科卒。現在、カリフォルニア州にある病院の内分泌科で糖尿病の外来診察を行っている。

連載の紹介

緒方さやかの「米国NPの診察日記」
日本でも、ナースプラクティショナー(NP)導入に関する議論が始まった。NPとは何か?その仕事内容は?米国で現役NPとして働く緒方氏が、日常診療のエピソードなどを交えながら、NPの本当の姿を紹介します。

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