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大豊作だった2012年のウェブ炎上――ワタミから片山さつきまで

スカイツリー開業にロンドン五輪と、今年もいろんなことがありました。が、ニッチな世界の出来事も、大きな世界の潮流を映し出す。というわけで、さまざまなジャンルのウォッチャーたちに今年の10大ニュースを聞いた! 【ウェブ炎上ニュース】タレント揃いの大豊作の一年
山本一郎氏

山本一郎氏

 テレビや新聞などとは、また違う事件や騒動が起こるネットの世界。山本一郎氏は「一昨年、昨年は脊髄反射的な炎上が多かったものですが、今年はタレントが粒揃いで、連続性をもって楽しめた。大豊作の一年でしたよ」と振り返る。 「上杉vs町山論争を筆頭に物語的な展開を楽しめる騒動が多かったですね。町山さんの脇で小田嶋隆さんが煽り、上杉さんのシンパに茂木健一郎さんがいるという勢力図も面白く、何かが着実に壊れゆく過程は一年をかけて大団円へと目指す大河ドラマのようです。武雄市長の樋渡啓祐さんも高木浩光さんという好敵手を得ましたし、何かが起こると高木さんが狼煙を上げるという自動検知マシンができて、ヲッチしやすくなりました」  企業で目立ったのはアクの強い人間がトップに立つ楽天とワタミ。 「ワタミは労働環境がアレすぎるのに、会長本人が何も悪いと思っていないのがすごい。楽天はkoboで楽譜1つを1冊と数えて『7万冊突破!』と言ったり、ユーザーを愚弄するようなことをして叩かれていても、三木谷さん本人は意気軒昂で連戦連勝のノリだから、こちらもいっそカラッと笑える。あの自分を客観視しないさまは素晴らしいです」  一方でネトウヨと呼ばれるような集団は反原発運動に力が奪われたのか、行動がおとなしくなった。 「安倍晋三氏が支持を集め、片山さつきもネトウヨと相思相愛でインナーサークル化。互いに自分を全肯定してくれる状況は心地いいでしょうが、確認できない情報が乱舞する構造は残念です。今後、安倍自民とネトウヨが手を取り合って進むことにもなりそうですね」  今年に主役級の活躍を見せた彼らには、来年以降も注目だそう。 「発言の燃焼力の凄まじさ、人間の感情の琴線に触れる何かを必ずやらかしてくれる。見ているだけで笑みがこぼれます。彼らのためにどれほどの睡眠時間を削ったかわかりませんが、この皆さんが、日本のウェブ界を支えていると思うと、本当に頭が下がる思いです」  来年も眠れない夜が幾度となく訪れそう、である。 ●1位 ウィキの記事も楽譜も1冊!?楽天kobo騒動 電子書籍配信開始も、楽譜やWikipediaのページを加工して1冊とするなど、書籍数の水増し的行為が相次いで行われ、批判の的に
楽天

「花王の不買運動などは、見ているこちら側を微妙な気持ちにさせますが、楽天の三木谷さんの場合、カラッと笑える、“互いが幸せ”という気持ちで拝見できる稀有な企業炎上」(山本氏)

●2位 ネトウヨのデマを妄信! 片山さつき爆釣伝説 「NHK音楽番組の韓国人タレント占有率が36%」というネット発のデマ情報を国会で話すなど、数多くのデマに釣られて話題に ●3位 学費支援サービスstudygift大炎上 支援を受ける学生が大学を退学していたことなど問題多発。「再出発するらしいですが、さらなる炎上の予感がするので困ってます」 ●4位 上杉隆氏vs町山智浩氏らの論争、長期化 テーマを変えつつ、上杉隆氏と町山智浩氏とのツイッター抗争は長きにわたり、池田信夫氏にも訴状が飛び交うなど、油断できない状態 ●5位 盛り上がったブラック企業大賞でワタミに「市民賞」 社員の死が労災と認定されるも、渡邉美樹会長は「労務管理できていなかったとの認識は、ありません」と発言。猛烈な批判を浴びる ●6位 天皇陛下に謝罪要求竹島問題でネットも大騒ぎ 8月10日に李明博大統領が竹島を訪問し「天皇は訪韓したいなら謝罪せよ」などと放言。ネットでは断続的に騒ぎが続いている ●7位 ノマドの女王安藤美冬マルチ疑惑事件 『情熱大陸』出演で"ノマドの女王"とまで呼ばれたが、マルチ商法への関与疑惑が浮上。本人は過去の関与を認め謝罪をした ●8位 武雄市長樋渡さんvsネット住民事件 自称「Facebook市長」佐賀県武雄市長の図書館のTSUTAYA委託計画が議論に。生活保護をTポイントで支給する構想もネットで酷評 ●9位 アノニマス間違えて霞ヶ浦をハッキング&改竄 違法DL刑罰化反対で霞が関と霞ヶ浦を間違え攻撃。「技術力はあるが生産性が乏しい彼らですが、いいヤツらですよ、きっと」 ●10位 教授→研究員に金正勲氏経歴詐称事件 研究者、キャスター、政府委員会の委員と多方面で活躍も、経歴の「ハーバード大学客員教授」が客員研究員だったことが発覚した 【元・切込隊長 山本一郎氏】 東京都生まれ。ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。著書に『ネットビジネスの終わり』などがある ― 2012年ニッチな世界のジャンル別10大ニュース【2】 ―
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