都心の大きな公園に行くと、あまりに大量のカラスが木の上にいることに驚かされる。

一般に、「カァーカァー」と鳴くのは、市街地に棲む「ハシブトガラス」で、「ガァガァ」「ガラララ」としわがれて鳴くのが、郊外に棲む「ハシボソガラス」だ。


ところで、街中で、特に朝方の繁華街などではたくさんのカラスを見るけれど、ハトなどと違って、民家の近くで寝ているところ・巣にいるところを見たことはない。
人間が近づいても平気なヤツもいるし、人間の弁当をかっさらっていく大胆不敵なヤツもいるのに、カラスは人間の近くでは眠らないのだろうか。もしかして、毎日公園などからエサを求めて「通勤」しているということなのだろうか。
山階鳥類研究所に聞いた。

「ゴミの出し方が悪いと、ゴミ置き場にカラスが朝方大挙して集まるという問題はありますが、個人的には公園に1日中残っているカラスもいるとは思います。ただし、カラスの移動経路はある程度決まっており、皇居や水元公園付近にねぐらをつくり、上野を通って、三々五々、朝に通勤してくるカラスはいると聞きますよ」

続いて、日本野鳥の会・東京支部に聞くと、以下の回答が得られた。

「夕方になると、大きな公園のこんもりした木などにねぐらを作り、安全なところで寝るというのは、カラスだけでなく、ほとんどの鳥が持っている習性です。カラスの場合、特に秋から冬にかけては集団でねぐらを作り、エサが十分にある春から夏にかけて繁殖します」

カラスの場合、秋から冬になると、集団になるために、ねぐらの数そのものが少なくなり、逆に春から夏にかけては繁殖のために、ねぐらの数が増えるらしい。
実際に、エサをとるために、毎日「通勤」しているのか。
「カラスは知恵があるので、棲みやすい場所を決め、エサを狙ってやってくることはありますが、決まったルートで『通勤』しているかどうかというと、個々に追跡したデータはないですね」

長期にわたって固定的なねぐらに棲むわけではなく、ねぐら場所やエサをとる場所も、意外と変更されているそう。
「カラスは、昼間にいた場所から一番近いねぐらに帰るとは限らず、その日の風向き・天気や場所の状況に応じて、ねぐらを変更します。エサをとる場所も、たとえば、同じカラスが『朝5時に新宿にいて、6時に渋谷に移動する』というように、みんなが順繰りにまわっているわけではなく、それぞれのカラスが、エサをとりやすい場所にそれぞれにとりにいくと考えたほうが自然でしょう」

東京のカラスは、郊外の公園などから繁華街の残飯などをめがけて「通勤」するのに対し、地方では、街中の大きな公園のねぐらから郊外の田畑などへ、いわば「都会から田舎へ」通勤するのもいるらしい。

「人間とカラスとは、どうしても『エサ』でつながっています。カラスの行動も、人間のように『通勤』に見えるのは、人間と近くなっているだけだと思いますよ」

カラスのゴミ問題や田畑の被害は深刻。だが、その生態がどこかユーモラスに見えてしまうのは、やはり人間に近いからなのだろうか。
(田幸和歌子)