販売台数の76%を海外で占めながらも、国内偏重の生産体制を取っている富士重工業。だが、円高を物ともせず、2013年3月期決算は過去最高となる見込みだ。小さな巨人のカラクリに迫る。

 1月15日、富士重工業の株価は1208円となり、上場来の最高値(調整後)をつけた。490円前後で推移した1年前と比較すると、株価上昇率は146%と業界で突出している。

 同日、吉永泰之・富士重社長は2012年の世界販売実績70.7万台、13年3月期の売上高1兆8400億円、当期純利益660億円のすべてが過去最高となることを発表した。同時に、「超円高をはね返して新たなステージへ行く」(吉永社長)として、13年の販売目標75万台、米国生産ラインの増強と意欲的な計画をぶち上げた。

 このメッセージを受けて、株式市場は敏感に反応した。髙橋充・取締役専務執行役員は「ようやく、われわれの計画が画餅ではなく、達成可能と信認を得られた」と言う。その言葉からも察せられるように、富士重は一朝一夕に成功を収めたわけではない。

 何せ年産80万台(OEMを含む)の国内最小乗用車メーカーである。大手のようにグローバルな生産拠点を多数設けるわけにはいかない。全体の76%を海外で販売しているが、生産拠点は日米の2拠点のみで国内生産比率は76%に上る。超円高の煽りを食う構造のはずなのだ。ちなみに富士重は為替が1円円高になると、対ドルで65億円、対ユーロで4億円の減益要因となる。リーマンショック以降、対ドルだけでも20円以上円高に振れているので、1300億円以上の減益となる計算だ。

 逆境下で過去最高の業績を挙げる背景には、どんなカラクリがあるのか。

 それは、身の丈経営を貫きながらも、“スバルらしさ”を追求したことに尽きる。最大の方針転換は、07年に米国を最重要市場と位置付け、“日本仕様車の海外展開”から“グローバルモデルの海外展開”へ舵を切ったこと。軽自動車生産からの撤退、国内ディーラー再編などの構造改革に着手する一方で、経営資源を「米国」と「水平対向エンジン」という得意地域・分野に集中投下した。

 まず、富士重の利益の源泉は、販売台数の半分弱を占める米国事業である。車体の大型化など米国ユーザーを意識して開発された「インプレッサ」「フォレスター」「レガシィ」が順次フルモデルチェンジされ、12年は販売台数33.6万台、シェア2.33%となり、共に過去最高となった(図1)。