「子どもが主役」のApple体験――キッズワークショップの取り組み神尾寿の時事日想(1/4 ページ)

» 2011年08月10日 10時45分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

著者プロフィール:神尾 寿(かみお・ひさし)

ALT 『TOYOTAビジネス革命 ユーザー・ディーラー・メーカーをつなぐ究極のかんばん方式』

IT専門誌の契約記者、大手携帯電話会社での新ビジネスの企画やマーケティング業務を経て、1999年にジャーナリストとして独立。ICT技術の進歩にフォーカスしながら、それがもたらすビジネスやサービス、社会への影響を多角的に取材している。得意分野はモバイルICT(携帯ビジネス)、自動車/ 交通ビジネス、非接触ICと電子マネー。現在はジャーナリストのほか、IRIコマース&テクノロジー社の客員研究員。2008年から日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員(COTY、2009年まで)、モバイル・プロジェクト・アワード選考委員などを務める。

トヨタ自動車の豊田章男社長ほか、キーパーソンへのインタビューを中心にまとめた『TOYOTAビジネス革命 ユーザー・ディーラー・メーカーをつなぐ究極のかんばん方式』、本連載(時事日想)とITmedia プロフェッショナルモバイルに執筆した記事をまとめた『次世代モバイルストラテジー』(いずれもソフトバンククリエイティブ)も好評発売中。


 7月26日、Appleの株価に世界が注目した。この日、同社の終値は初めて400ドル台に乗り、時価総額で世界1位のエクソンモービルに迫ったのだ。むろん、IT企業で見ればAppleは世界一の企業であり、その時価総額はMicrosoftやGoogle、Intelよりも高い。

 Appleの時価総額の高さは、同社の好調な業績に支えられている。7月19日に発表された同社第三四半期の決算では、iPhoneとiPadが過去最高の販売台数、Macの売り上げも好調で、四半期ベースでは過去最高の売上高および純利益となった。売上高が前年同期比82%増の285億7100万ドル、純利益は同125%増の73億800万ドル(1株当たり7.79ドル)という結果は、同社が前期に発表した見通し(売上高が約230億ドル、1株当たり純利益が5.03ドル程度)を大きく上回っている。

 Appleはなぜ、こうも好業績を続けられるのか。

 その大きな要因が、「優れたプロダクトデザイン」「秀逸なソフトウェアとサービス」「先進的なビジネスモデル」の三位一体にあるのは確かだが、同社の強みはそれだけではない。Appleは自社の製品やサービスに触れるすべてに独自の世界観を構築し、顧客との関係性を重視する。Appleの「ユーザー体験」を継続的に提供することで、顧客との長期的かつ良好な関係の構築と、それによる高い収益性を実現しているのだ。

 このAppleの「ユーザー体験」において、重要な位置を占めているのが直営店舗のApple Storeである。これは全米200店舗余を筆頭に世界中に展開されており、日本にも7店舗が出店している。AppleはこのApple Storeを単なる販売拠点ではなく、Appleのユーザー体験を広める場所として積極的に活用。各種イベントやワークショップを多数実施して、顧客満足度やブランド力の向上に成功している。

 筆者は以前からApple Storeを重点的に取材しているが、先日、同店舗がファミリー向けに実施している「キッズワークショップ」に参加する機会を得た。そこで今回の時事日想では、キッズワークショップの取り組みを紹介しながら、Appleブランドの魅力と、そのマーケティング手法に注目したいと思う。

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