スペックだけでは見えてこないAndroid端末のチェックポイント

法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows 7」「できるポケット Xperiaをスマートに使いこなす 基本&活用ワザ150」「できるポケット+ GALAXY S」「できるポケット iPhone 4をスマートに使いこなす基本&活用ワザ200」(インプレスジャパン)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。


 昨年来、各社から相次いでスマートフォンが発売されているが、なかでもプラットフォームとして、Androidを採用したスマートフォンは国内外の主要メーカーが開発し、国内市場においても今後、スマートフォンの主軸になると言われている。今回は最近の主要モデルを見ながら、スペックだけでは見えてこないAndroid採用端末のチェックポイントを考えてみよう。

共通プラットフォームであるということ

 ケータイ業界の春商戦は、新入学・新社会人をターゲットにしているため、秋冬や夏のボーナス商戦とは少し趣が異なると言われている。端末で言えば、年末商戦ではハイスペックなモデルが売れ、契約も機種変更などが多いのに対し、春商戦は初めてケータイを買う人が多く、エントリー向けの安価な端末がよく売れると言われてきた。しかし、今年は昨年来のスマートフォンへの急速な流れを受け、新入学・新社会人向けにもスマートフォンがよく売れているという。

 ただ、その一方で、スマートフォンはフィーチャーフォンと違い、なかなか機種ごとの違いが見えにくく、機種選びに悩むお客さんも多いそうだ。iPhoneのように、プラットフォームが違えば販売する側も説明しやすいが、最もOSのバリエーションが多いAndroidについては、2.1/2.2/2.3というバージョンの違いなどが見えているくらいで、その他はハードウェアのスペック、端末メーカーのブランドなどに頼って選ばざるを得ないのが実状だ。もっと広い範囲で見てみると、スマートフォンそのものがまだ十分に理解されていないということもあり、Android採用端末を見ながら、「これでもiPhoneみたいに、ネットもできるし、地図も見られるし、アプリでも遊べるんでしょ」と店員に同意を求めるようなシーンも多いという。

 こうした極端な例は別として、実際のところ、Android採用端末については、プラットフォームのバージョン、ハードウェアのスペック、端末メーカーのブランド力くらいしか違いがないのだろうか。すでに、複数のAndroid採用端末を触ったことがあるユーザーなら、おわかりだろうが、Googleが提供するサービスなど、ある一定のところまでは、どのAndroid採用端末も同じである一方、細かい部分では端末メーカーごと、キャリアごとの違いも見えてきている。細かい部分とはいえ、実際に初めてのユーザーがスマートフォンを使い始めるとき、戸惑ったり、使いにくく感じてしまうようなものが多い。もちろん、なかにはアプリを追加することでカバーできたり、ユーザーの慣れによって、何とかなってしまう部分もあるが、やはり、これだけスマートフォンが幅広いユーザー層に展開し始めている現状を考えると、もう少しチェックポイントを確認しておきたいところだ。

 そこで、今回は最近の主要モデルを見ながら、スペックだけでは見えてこないAndroid採用端末の気になるポイントをチェックしてみよう。

 

使いやすさを考えていないWi-Fi環境

 携帯電話事業者が販売する国内初のAndroid採用端末であるHTC製「HT-03A」の発売から約2年が経過し、端末ラインアップが充実してきたことで、今後のスマートフォンはAndroid採用端末が中心的な存在になると見られるが、実は約2年を経過しながら、意外に端末そのもののユーザビリティが向上していない機能がある。たとえば、Wi-Fi環境がそのひとつだ。

 Wi-Fiについては、現在、販売されているほとんどのスマートフォンがIEEE802.11b/g/nに対応し、タブレット端末では一部がIEEE802.11aにも対応している。スペック的にはそれで十分ということになるのだが、使い勝手の面を考えると、まだまだ不満点が多い。

 まず、過去にも何度となく指摘したことだが、初期設定の部分に違いがある。Wi-Fiを利用するには「SSID」とも呼ばれる無線ネットワーク名、WPAなどの暗号化通信のための「暗号化キー」を設定するが、Android標準の状態ではこれらを手動で入力する。本誌読者なら、すでにパソコンなどでWi-Fiの設定に慣れているから大丈夫という人も多いだろうが、今までフィーチャーフォンを使ってきて、家庭のブロードバンド回線に設置された無線LANアクセスポイント(ルーター)は初期設定のまま、という人も、実際には少なくない。こういった人たちにとって、はじめてのフルタッチのユーザーインターフェースで、10文字前後のランダムな文字列で構成された暗号化キーを間違いなく入力するというのは、やはりハードルが高い。なかにはWi-Fiの設定が面倒に感じられ、自宅にブロードバンド回線がありながらもスマートフォンを3G回線経由でしか利用しない(できない)ユーザーもいる。

 そこで、スマートフォン側でサポートしておいて欲しいのが、Wi-Fiの簡易設定機能だ。Wi-Fiの簡単設定機能としては、業界標準として策定された「WPS(Wi-Fi Protected Setup)」や、バッファローの「AOSS」、NECアクセステクニカの「らくらく無線スタート」が知られており、各社の無線LAN製品だけでなく、ゲーム機やプリンター、家電製品などにも採用例が増えている。ところが、ここ1年から半年くらいの間に発売されたスマートフォンの内、触れることができたモデルでチェックしたところ、これらのWi-Fiの簡易設定機能をサポートする機種が非常に少ないのだ。

 個別に見てみると、業界標準のWPSはサムスン製とシャープ製のスマートフォンがサポートするのみで、Xperiaのようなグローバルモデルでもサポートされていない。Optimus Pad L-04Cをはじめ、一部の機種では、端末の[設定]-[無線とネットワーク]-[Wi-Fi設定]で「WPS設定」などの項目が表示されないものの、Wi-FiネットワークがWPS対応であることを検出し、WPSボタン利用時と同じように登録することも可能だ。

 バッファローのAOSSについては、過去のフィーチャーフォンや家電製品でサポートされていた関係もあってか、シャープ製スマートフォンが標準で対応しているが、こちらについてはバッファローが自らAOSSのアプリをAndroidマーケットで公開し、無料でダウンロードできるようにしている。NECアクセステクニカのらくらく無線スタートについては、今のところ、MEDIAS N-04Cのみが対応しており、アプリは公開されていない。NECアクセステクニカは市販の無線LAN製品だけでなく、ADSLや光ファイバなどのサービスで各事業者が貸与するADSLモデムやFTTH向けルーターのOEM供給元としても知られており、家庭のブロードバンド回線でも利用されている例が多いだけに、AOSS同様、らくらく無線スタートを設定できるアプリの公開を期待したいところだ。

GALAXY S SC-02BはWPSに対応するWPSボタン接続を選択後、2分以内に無線LANアクセスポイントを操作すれば、簡単に接続設定ができるGALAPAGOS 003SHをはじめ、シャープ製スマートフォンはAOSSとWPSに両対応となっている
バッファローはAOSSのアプリをAndroidマーケットで無料公開しているMEDIAS N-04Cにはらくらく無線スタートが実装されている他の対応製品と同じように、らくらくスタートボタンを長押しするガイダンスが表示される

 

 全体的に見れば、やはり、Wi-Fiの簡易設定機能をサポートするスマートフォンは少なく、ユーザー、なかでも初心者にとっては非常に『不親切』な機種が多いというのが実状だ。ライセンスなどの問題も含め、どの方式をサポートするかなど、端末メーカーとしての思惑があるのかもしれないが、少なくとも業界標準であるWPSくらいはサポートしておいて欲しいというのが筆者の本音だ。

 

公衆無線LANサービスの利用環境も不十分

 同様の事例は、公衆無線LANサービスへの取り組みにもみられる。今のところ、携帯電話事業者が提供する公衆無線LANサービスとしては、NTTドコモの「spモード」のオプションで提供されている「spモード『公衆無線LANサービス』」、ソフトバンクの「ソフトバンクWi-Fiスポット」、UQコミュニケーションズのUQ WiMAXのオプションサービス「UQ Wi-Fi」などが挙げられる。この他に、携帯電話事業者以外が提供するサービスとして、NTTコミュニケーションズの「HOTSPOT」、ソフトバンクテレコムの「BBモバイルポイント」、NTT東日本/NTT西日本の「フレッツ・スポット」、ケイ・オプティコムの「eoモバイル Wi-Fiスポット」、ライブドアの「livedoor Wireless」、ワイヤ・アンド・ワイヤレスの「Wi2 300」、トリプレットゲートの「WIRELESS GATE」などが提供されており、ここ数年で一気に利用環境が整備されてきた印象だ。

 ただ、これまでの公衆無線LANサービスは、どちらかと言えば、パソコン向けに展開されてきた印象が強く、スマートフォンについてはソフトバンクがiPhoneで積極的に展開してきたくらいで、Android採用端末については昨年あたりから、ようやく拡がりはじめたという状況だ。

 一般的に公衆無線LANサービスを利用するには、あらかじめ端末に無線LANのSSIDと暗号化キーを設定しておき、それぞれのエリアに移動したとき、ブラウザを起動し、表示された画面でログインIDとパスワードを入力するという流れになる。利用する端末がパソコンであれば、ログインIDなどの文字入力は容易であり、それほどストレスに感じることもない。ログインIDやパスワードが覚えにくい文字列で構成されていてもパスワード管理ソフトや指紋センサーを利用したり、別の場所(たとえば、ケータイ)にメモしておいて、必要に応じて参照するといった使い方ができる。

 しかし、これがスマートフォンになると、文字入力にはある程度の慣れが必要であり、ログイン画面が必ずしもスマートフォン対応になっていないため、画面拡大などの操作が必要になる。パソコンで利用しているときに比べると、格段に操作が煩雑になってしまう。

 そこで、公衆無線LANサービスに簡単にログインするための機能をAndroid採用端末に搭載して欲しいところなのだが、実はこうした機能を搭載している端末は非常に少なく、メーカー別ではシャープが開発したスマートフォンのみがサポートしている。携帯電話事業者では、ソフトバンクがiPhoneでスマートフォン向けのWi-Fiサービスをいち早く提供してきた経験を活かし、「Wi-Fiスポット設定」というAndroid向けのアプリをMySoftBankからダウンロードできるようにしている。

 これに対し、NTTドコモの「spモード『公衆無線LANサービス』」は何もアプリを提供しておらず、ブラウザでのログインIDとパスワードの入力が必要になる。一度、ログインすれば、30日間はログイン状態が保持されるようにしているが、期間が経過すれば、再びログインIDとパスワードを入力しなければならない。「spモード『公衆無線LANサービス』」が3月に開始されたばかりだから、しかたがないと見てしまいそうだが、実はこのユーザーインターフェイスは、同社のISPサービス「mopera U」の公衆無線LANサービスの仕様をそのまま受け継いだものとなっている。

 やはり、端末メーカーにはできるだけ、公衆無線LANサービスを手軽に利用できる機能を標準で搭載して欲しいところだが、携帯電話事業者も自社が提供するサービスについては、後述する公衆無線LANサービス事業者のように、アプリを提供するなり、あるいはショートカットをあらかじめ端末にセットしておくなり、ユーザーが利用しやすい環境を整えておくべきだろう。

 各携帯電話事業者としては、ソフトバンクのiPhoneに対するWi-Fiサービスの提供を見てもわかるように、スマートフォンでWi-Fiを利用しやすい環境を整えることで、データトラフィックをブロードバンド回線などに逃がすことができ、ネットワーク的にも助かるはずなのだが、現状のAndroid採用端末は機能としてのWi-Fiを搭載するだけで、必ずしもユーザーがWi-Fiを使いやすい環境を整えているとは言い難い。

 一方、携帯電話事業者以外の公衆無線LANサービスについて、少し補足しておきたい。前述のように、現在、国内ではいくつかの事業者が公衆無線LANサービスを提供しているが、基本的なアクセス方法は前述の携帯電話事業者の提供する公衆無線LANサービスと変わらないため、利用時はログインIDとパスワードの入力が必要になる。

 しかし、ほとんどの事業者は独自でAndroid向けのアプリを提供しており、必要な情報を入力しておけば、いつでも簡単にログインできるようにしている。なかには利用できる公衆無線LANスポットを検索できる機能を搭載したアプリなどもあり、なかなか実用的だ。ただ、スマートフォンがはじめてという初心者にとっては、いきなりアプリをダウンロードして使うというのは、ややハードルが高い印象も残る。できることなら、出荷時の端末に各公衆無線LANサービスのサイトへのショートカットを設定したり、ポータルサイトで案内をするなどの工夫もして欲しいところだ。

IS03をはじめ、シャープ製端末には公衆無線LANに自動ログインする機能が実装されているログインIDとパスワードを設定すれば、エリアに移動したとき、自動的にログインすることが可能公衆無線LANサービス「Wi2 300」では、かんたんアクセスツール「Wi2 Connect」をAndroidマーケットで公開中
公衆無線LANサービス「WIRELESS GATE」では、接続アプリ「WGConnect for Android」をAndroidマーケットで公開中公衆無線LANサービス「HOTSPOT」では、接続アプリ「iHOTSPOT」をAndroidマーケットで公開中エリア検索では公衆無線LANスポットを現在地や地名などで検索することができる

 

○メガピクセルカメラを搭載しても……

 スペックに見えてこないAndroid採用端末に差には、Wi-Fi周り以外にも数多くある。たとえば、ハードウェアに関係する部分で言えば、カメラや電源周りが非常に気になるところだ。

 かつてフィーチャーフォンで「メガピクセル」カメラが登場したとき、一部で「ケータイにそんなハイスペックなカメラはいらない」といった声が聞かれたが、今やほぼ全機種にカメラが搭載され、コンパクトデジタルカメラ並みの16Mピクセルものハイスペックなカメラを搭載するモデルもラインナップされている。もちろん、その流れはスマートフォンにも受け継がれており、ほとんどの機種が5Mピクセル以上のカメラを搭載している。しかし、せっかくフィーチャーフォンで培われたノウハウが受け継がれず、スマートフォンでは機能不足になっている面もある。それは、撮影した画像の利用だ。

 フィーチャーフォンのカメラ機能が普及した背景には、写メールをはじめ、撮った写真を使う方法が確立されていたこと、なおかつ使うための機能が実装されていたことが挙げられる。筆者はその当時、何度となく、「気の利いた機種なら、どんなサイズで撮ってもボタン1つか、2ステップくらいで、メールに添付できるサイズに変換できるべきだ」と書いてきた。つまり、5Mピクセルのカメラは最大2560×1920ドットで撮影できるが、ファイルサイズは約2MB前後になってしまうため、ケータイメールではそのまま送ることができない。そこで、気の利いた機種では撮影直後のプレビュー画面で、メールボタンなどを押せば、メールで送れない旨が表示され、VGAなり、QVGAサイズにワンタッチで変換し、メールに添付した状態で、メール作成画面が表示されるようになっていた。また、複数の人物を写すときでも最大サイズで撮影し、特定の人だけを切り抜いたり、風景の写真では必要な部分をトリミングして、メールに適したサイズに変換するといった使い方ができた。

 ところが、Android標準アプリの「ギャラリー」は、標準で撮影した写真の切り抜きと回転ができるものの、切り抜きサイズの指定やリサイズ(解像度変更)などができないため、メールで送りやすいサイズの写真を生成することができない。そこで、富士通東芝モバイルの「REGZA Phone」2機種やシャープの5機種では、「ギャラリー」(REGZA Phoneは「メディアフォルダ」)からリサイズなどをできるようにしている。また、GALAXY S/GALAXY Tab、SIRIUSα IS06では、画像編集ソフトをプリインストールすることで、カメラで撮影した画像を自由に編集できるようにしている。

 人によっては、「そもそもスマートフォンだから、画像サイズなんてどうでもいいのでは?」と考えるかもしれない。確かに、spモードで送信できる最大サイズは10MBなので、2MBの写真も添付できるが、写真を受け取る相手は必ずしもパソコンやスマートフォンばかりではないし、パソコンやスマートフォンであっても、2560×1920ドットもの大きな写真を送られてはちょっと迷惑だろう。もちろん、Androidなので、Picasaなどのオンラインアルバムサービスをすぐに使うこともできるが、メールへの添付とオンラインアルバムへの登録は根本的に別の用途であり、代替にはならない。

 「画像を編集したいのなら、自分でアプリを追加すればいい」という意見もあるだろうが、幅広いユーザー層にスマートフォンが拡大している状況を鑑みると、こうした基本的な使い勝手の部分まで、ユーザーが購入後にアプリを追加することを強いるのは不親切な印象が残る。高機能である必要はないが、高画素のカメラを搭載するのであれば、最低限の機能として、リサイズや切り抜きなどができる画像編集機能やツールを実装しておいて欲しいところだ。かつても同じようなことをフィーチャーフォンで書いたが、「何のための○メガピクセルカメラなのか」を端末メーカーと携帯電話事業者にはもう一度、よく考えてもらいたい。

標準アプリを搭載したMEDIAS N-04Cでは、トリミングと回転のみをサポート。トリミングは細かいサイズ指定ができないGALAPAGOS 003SHをはじめ、シャープ製スマートフォンではさまざまな画像編集が可能

 

充電環境を選ぶAndroid採用端末

 そして、こうしたアプリや機能追加では対応できないのが、電源周りだ。Androidを採用したスマートフォンがフィーチャーフォンと比較して、省電力性能が今ひとつであることはよく語られているが、この点についてはプラットフォームのバージョンが進み、端末メーカーがいろいろとノウハウを積んでくることで、徐々に改善していくことが予想される。現に、Android 2.1に比べ、Android 2.2は若干ではあるものの、電池の持ちが改善されており、徐々にロングライフを実現しつつある(まだまだ足りないが……)。先日、メジャーバージョンアップが実施されたauのIS03についてもネット上で「バージョンアップしたら、電池の持ちが少し良くなった気がする」といった声が聞かれる。

 しかし、こうした電池の持ちとは別に、気になるのが充電環境だ。現在、国内外で販売されているAndroid採用端末は、ほとんどの機種で充電に利用する外部接続端子として、microUSB端子を採用している。スマートフォンを購入するユーザーの多くがフィーチャーフォンからの機種変更であることもあり、国内で販売されている各製品のパッケージにはフィーチャーフォン用のACアダプタからmicroUSB端子に変換するアダプタが同梱されている。

 この純正ACアダプタと変換アダプタという組み合わせについては、当然、問題なく充電ができるが、純正ACアダプタを市販のUSBポート付きACアダプタやUSBポート付き充電池に代えたり、ケーブルを市販のサードパーティ品に代えると、まったく充電ができなくなったり、ケーブルによって、充電の可否が変わってしまう機種が見受けられる。

 具体的には、昨年発売されたXperia SO-01Bをはじめ、今春発売のMEDIAS N-04C、Xperia arc SO-01Cが充電環境をかなり選ぶという印象だ。なかでもMEDIAS N-04Cはもっとも充電環境がシビアな印象で、よく利用されている巻き取りタイプのUSB-microUSBケーブルは使えない(充電できない)ものが非常に多く、実質的には製品に同梱されているUSBケーブルのみが安定して使える。三洋電機の充電式外部バッテリーであるeneloop mobile boosterも、筆者が試した範囲では、MEDIAS N-04C同梱のUSBケーブルだけでは充電できず、N-04C同梱のmicroUSB-FOMA/3G変換アダプタとFOMA充電機能付きUSB接続ケーブルの組み合わせでしか充電できなかった。

 もちろん、基本的には純正品の組み合わせでしか充電は保証されていないので、あまり厳しいことを言える筋合いではないが、少なくとも筆者の手元にある十数機種の他のスマートフォンではまったく問題なく充電ができている組み合わせでも、これらの機種に接続すると充電ができなくなってしまうのは、やはり何かがおかしいと言わざるを得ない。もし、こうした仕様が正しいというのであれば、逆にサードパーティのメーカーに対し、こういう仕様なら充電ができるといった情報を開示するなり、サードパーティ製品の動作確認情報をWebページで公開するといった取り組みも検討するべきだろう。

 くり返しになるが、現在のAndroid採用端末はフィーチャーフォンと比較して、省電力性能が今ひとつであり、電池の持ちは明らかに良くない。原因は発展途上中のプラットフォームやハイスペックなCPUにあるわけだが、だからと言って、メーカーや携帯電話事業者は「しかたない」というスタンスを取るのではなく、少しでもユーザーが充電しやすい環境を整えるなり、情報を提供するなりの工夫が必要ではないだろうか。電池パックを2つ同梱するのもひとつの手かもしれないが、電池パックのみで充電する環境がなければ、どれだけ意味があるのかは疑問だ。多くのユーザーにとって、本当に役立つことは何なのかをもう一度、よく考えて欲しいところだ。

 

もっと使いやすいAndroidスマートフォンに期待したい

 今回は、Android採用端末のスペックだけでは見えてこない差について取り上げた。今回紹介した「Wi-Fi」「画像編集」「電源」は、そのごく一部でしかなく、実際に各社のスマートフォンを使ってみると、「あれ? こんなこともできないの?」「あの機種ではできるのに、どうしてこっちはできないの?」と感じることが少なくない。

 こうした見えにくい部分の機能差が生まれてくる背景には、Androidというプラットフォームが急激な発展途上のプロセスにあり、メーカーとしても手を入れにくいという考えがあるようだ。昨年、auのIS01がアップデートを見送った例からもわかるように、開発段階でメーカーが検討していても、結果的にバージョンアップに対応できないケースがあり、そうしたリスクを冒してまで機能を拡張することは避け、できる限り『素のAndroid』で仕上げておきたいと考えているわけだ。本誌掲載の開発者インタビューなどに同席していると、おっかなびっくりでAndroid採用端末を開発しているのではないか、と感じられるケースもあるくらいだ。

 しかし、考えてみればこれもおかしな話で、将来のバージョンアップのために今は不便を強いられる、というのは、本当にユーザーにとってハッピーなことなのだろうか。長く使うために、バージョンアップを重視するユーザーがいることは認めるが、バージョンアップのために、他機種で実現できていることも今は我慢して使わなければならないというのなら本末転倒だ。画像編集の例を見てもわかるように、アプリを1つプリセットするだけでも大きく違うのに、それすらできていないというのは、非常に残念な限りだ。どうも各社の姿勢を見ていると、Android採用端末を製品として仕上げるのに手いっぱいで、ケータイ時代に培われてきたユーザーインターフェースの良さやユーザビリティが十分に活かされていないように見受けられる。ハイスペックなスマートフォンは確かに魅力的だが、それと同じくらい、使いやすいこと、わかりやすいこと、便利なことも重要なはずだ。

 東日本大震災のの影響もあり、今夏以降の新モデルがどう展開されるのかはわからないが、本格的な普及が始まったスマートフォン市場をより拡大するためにも端末メーカーや携帯電話事業者には、ケータイで培ったノウハウを活かしながら、もっとユーザーの利用シーンをよく考えた機能を実装して欲しいところだ。そして、我々ユーザーもメディアも目先のスペックばかりに惑わされないように、しっかりと内容を見極めるようにしたい。

 




(法林岳之)

2011/4/19 13:37