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津波避難計画、半数のみ 朝日新聞が197市町村調査

2011年7月9日2時23分

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図:東海、東南海、南海地震の想定震源域拡大東海、東南海、南海地震の想定震源域

図:沿岸197市町村の津波避難計画の策定状況と震災後の変更の有無拡大沿岸197市町村の津波避難計画の策定状況と震災後の変更の有無

 今世紀前半にも発生の可能性が指摘されている東海、東南海、南海地震の対策対象地域のうち、沿岸の17都府県197市町村に朝日新聞がアンケートしたところ、住民避難の指針となる「津波避難計画」を作っていると回答したのは99と半数にとどまっていた。

 一方、避難の際の司令塔となる市役所・役場の本庁舎や、消防署、警察署のいずれかが津波の浸水予想地域にあると答えたのは83と4割余りに上っていた。

 各地に津波被害をもたらした東日本大震災を教訓に、いかに素早く住民を避難させるかが自治体に求められており、各市町村は対応を迫られている。

 アンケートは選択と記述の両方式で6月下旬から7月上旬に実施し、全197市町村から回答を得た。

 津波避難計画を策定していると回答したのは、58市38町3村。約8メートルの津波を想定してきた高知県黒潮町や、徳島県海陽町、三重県尾鷲市など、太平洋に面して被害が見込まれる自治体が目立った。さらに42市26町1村の69自治体は、町内会など、地域ごとの細かな計画策定にも取り組んでいると答えた。

 未策定だった70市25町3村の98自治体は、東海、東南海、南海地震の想定震源域から離れ、従来の想定で津波被害が少ないと判断してきた神奈川県や、中四国・大分県などの瀬戸内海に面したところが多かった。

 想定の2倍以上の高さの津波が各地を襲った東日本大震災を受け、神奈川県小田原市や大分県豊後高田市など28自治体が新たに計画の策定を決めたとした。策定ずみの市町村でも、43自治体が「一から再検討」(東京都神津島村)、「避難場所を一定以上の高さにした」(宮崎県延岡市)などと回答し、見直しをするとした。

 津波の浸水予想地域に、防災の拠点となる市役所・役場の本庁舎があると回答したのは53、消防署があると答えたのは42、警察署は34だった。いずれかの施設が同地域に含まれていたのは51市31町1村だった。こうした市町村では、施設の移転の動きも出ている。

 国の中央防災会議は東海、東南海、南海地震の津波想定を来夏ごろまでに見直す予定だが、31市10町2村の43自治体は、その結果を待たずに、避難計画のもととなる津波の高さを暫定的に変えると答えた。「2倍にした」(静岡県伊東市、愛媛県伊方町、大分県別府市、津久見市など)との試みもあった。「国はできるだけ早く結論を出してほしい」と望むのは176と約9割に及んだ。(天野剛志、宋光祐、塩原賢)

     ◇

 〈津波避難計画〉 北海道・奥尻島に大きな被害が出た北海道南西沖地震(1993年)や、東海、東南海、南海地震の対策強化を受け、国が02年から全国の沿岸市町村に策定を求めている。市町村は、津波の浸水予想地域や到達予想時間、避難できる公共施設、避難経路などを盛り込み、住民に知らせる。国は町内会など地域単位の策定も必要としている。市町村が災害対策基本法に基づき、災害全般を網羅して作る「地域防災計画」を津波の面で補う。

 宮城、岩手、福島県によると、3県の沿岸37市町村は、約6割の23市町村(宮城は昨年3月時点)が作っていた。宮城、岩手両県の担当者は「被害との関係の検証はこれから」という。

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