(旧姓)タケルンバ卿日記避難所

はてなダイアリーからの避難所

あらゆる生食にはリスクがある

なんとも痛ましい話であります。

富山県砺波市の焼き肉チェーン「焼肉酒家えびす」砺波店で発生した集団食中毒は、10歳未満の男児が29日、死亡するという最悪の事態となった。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110430-OYT1T00045.htm

これまでに食中毒とみられる症状が出ている15グループ24人の患者は、21〜23日の3日間に同店で食事をした。全員がユッケを食べており、ほかに感染の原因となる共通食材がないことなどから、県はユッケを食中毒の原因と判断した。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110430-OYT1T00045.htm

ユッケか。ううむ。
基本的にあらゆる生食にはリスクがあります。これは肉に限らず、魚でもそうです。

これまで食中毒の原因となる寄生虫がおらず、刺し身として食べることが可能とされてきた養殖ヒラメと馬肉に、食中毒のような症状を起こす可能性のある寄生虫が発見されたことが25日、食品衛生などについて話し合う厚生労働省の専門部会で報告された。

http://sankei.jp.msn.com/life/news/110425/bdy11042520240001-n1.htm

生食は食材に手を加えないため、食材に食中毒菌や寄生虫が付着していた場合、それを取り除く機会がない。そのため、食材が汚染されていた場合に症状が出やすいと。
誤っては困るのは、この話は「生食」のリスクで、「肉」とか「魚」とかのリスクではないってこと。卵でも、時には野菜であっても生食にはリスクがある。食材に手を加えなければ、食材に付着していた食中毒菌や寄生虫がそのまま体内に入り、悪影響を及ぼすことがある。そういう話。
調理は、そうしたリスクを減らし、安全に且つおいしく食べるための知恵で、例えば「湯引き」とか「タタキ」は、表面を加熱することで、表面に付着していた食中毒菌や寄生虫を殺す。冷凍する「ルイベ」は加熱の逆の発想。冷やすことで、加熱と同じ効果を生む。
何気なく見えるサラダとかの場合、レストランなんかでは野菜を殺菌処理するのが普通。要するに漂白。ハイターみたいな薬品(次亜塩素酸ナトリウム)の溶液に浸して殺菌する。カット済みの野菜工場なんかでは、工場でこの処理をしてある。
そういう調理ができない場合は薬味の出番。お刺身におけるわさびの効用。

あるいはニンニクや生姜。抗菌作用成分のあるものと、生の魚介を合わせて食べる。お寿司の場合、シャリに含まれる酢にも抗菌効果がある。生食の代表的な料理であるお寿司は、魚介と抗菌作用のあるものとの組み合わせで成り立っており、魚を如何に安全においしく食べるかという知恵のかたまり。おっと、俺がわさび嫌いで、わさび抜きでしかお寿司を食べれないことは内緒だ。
で、ユッケ。ユッケはある意味で肉のお刺身で、生のお肉にネギやゴマなどの薬味を合わせ、コチュジャンや砂糖、お酒などで作ったタレをからめて食べる。生の肉を安全においしく食べるための知恵がこういう料理になっている。似たようなものにタルタルステーキもあるが、こちらもまた同様。生肉に薬味とタレを合わせて食べる。
しかしながら、当然のごとくリスクはゼロにはならない。ゼロに近づけるための工夫がユッケという料理になったわけだけども、ユッケだからといって安全というわけではない。これはお寿司だってサラダだって何でもそう。食中毒菌が付着したものを食べてしまえば、食中毒に感染してしまう。それが発病するかしないか、症状の程度などは、菌の悪性度とか、その人自体の体力とかによって左右されるが、リスクの有無という観点で言えば「有」だ。
ユッケだから、肉だから、こういう痛ましい事故が起こったのではなく、生食には概してこういうリスクがある。外食だからという話でもない。家庭内でも十分に起きる話。衛生管理が行き届いていない環境を経ると、特に危険性が高まるというだけのこと。それが生産地であれ、加工場であれ、調理場であれ、食べるその直前であれ。安全な食材であろうと、加工段階で混入することもあるし、食べる人の衛生感覚がなければ、食べるその直前まで安全であっても、最終的に危険な食材となることもある。
問題はこのリスクをどう考えるか。防げると思うか、防げないと思うか。割りに合わないと思うか、合うと思うか。すべてはここにかかってくる。「ふぐは食べたし、命は惜しし」と言うけども、うまさとヤバさ。このリスク判断。
一般的な話として、お子さんやご老人、そして妊婦の方はなるべく生食を控えられたほうがいいと思う。食中毒や寄生虫、あるいは感染症などを発症した場合の結果が重大になりやすいから。
しかしながら、結局は自己責任の問題として、各個人でどうすべきかを決めること。俺はこれまでも生食をしてきたし、今後もする。ユッケも食べるし、お寿司やレバ刺しだって食べる。しかしそれは食べた結果が自分の体に返ってくるからできることで、人に対して食べることを強制はしない。人の体については責任が持てないから。
凡庸な結論だけども、それしか言えない。生食のリスクは各自で判断くだされ。但し、繰り返しになるけども、今回の事故は生食それ自体にリスクがあるという受け止め方をしたほうがいいと思う。野菜だって扱い次第では危ない。ユッケだから、肉だからの話ではない。対岸の火事の感覚でいると、別の食材、別のケースで痛い目を見る。
これから気温が上がっていきます。やがては夏が来ます。食中毒がより危険な季節が近づいて来ます。だからこそ、改めて自らの衛生感覚を問い直してみては如何。