コンビニ店頭の熾烈な“棚争い”が繰り広げられる中、スナック菓子コーナーで鎮座し続けている製品がある。それはカルビーの『堅あげポテト』。


あまりスナック菓子を買うことはないのだが、この『堅あげポテト』は試しに買って以来、ビールのおともになっている。じゃがいもそのものの旨みが感じれられて美味しい。最近では類似の商品もよく見かけるようになったが、調べてみると本商品は10年以上にわたって市場を拡大し続けているロングセラー。どうして人気を定着することができたのか、いわゆる「普通のポテトチップス」との違いはなんなのか? とっても気になったので、『堅あげポテト』の開発者・遠藤英三郎氏(現・研究開発本部 開発1部部長)にコメントをいただいた。

そもそも『堅あげポテト』が誕生したきっかけはなんだったのですか?
「それまでのポテトチップスの新商品は、味付けを変えたものが大部分でしたが、そうではなく、『新しい製法の商品を作ろう』ということになり、また日本では少子高齢化がすぐ先の現実として見えていましたので、ボリューム重視の若者向けの商品ではなく、大学生以上のお酒を飲む年代に向けた、大人向けの商品ということで開発に着手しました」
おやつとしてのポテトチップスを“卒業”してしまった大人に向けて、という意味合いもあったそうだ。

この大人向けポテトチップスを開発するにあたって遠藤氏が注目したのが、米国の伝統的な“釜揚げ製法”で作られたケトルタイプのポテトチップス。
釜で低温でフライし、通常のポテトチップスよりも分厚く堅い食感が特徴といった、現在の『堅あげポテト』の原型にあたるものだ。

とはいえ、1992年に開発に着手、通常のポテトチップスで人気のフレーバーで発売したり、別ブランドを開発したり試行錯誤を繰り返すが大ヒットにはいたらず……。そこで、大人が好むポテトチップスについて味、食感などさまざまな角度から行ったマーケティング調査の結果、98年に「噛むほどうまい!」のコンセプトにたどり着いた。

味や製法について確固とした答えが見つかり、そこでホッとひと安心かと思いきや、今度は、“大量生産に向かない”という問題にぶち当たった。
「普通のポテトチップスは高温短時間で揚げるのですが、『堅あげポテト』は160℃以下の低温で8分から10分という、普通の製法の約4~5倍の時間をかけてフライしますので、生産量が普通のポテトチップスの10分の1の量しかできません」
10分の1程度しか生産ができない! また、「堅あげポテトは原料品質の良し悪しが普通のポテトチップスよりも明確に製品品質に反映されるので、当社のじゃがいもの品質ランクでも上位の原料を使用しています」とじゃがいもの選定にもより手間がかかった。

当初は北海道・東北地方など限定で発売していたが、じゃがいもの品種の数を増やしたり、設備を整えていき、2005年に全国展開できるようになったという。


実際に購入している人の反響は?
「これまでになかった“堅い食感”と“凝縮されたじゃがいものおいしさ”が味わえることがお客様の購買動機となっているようです。購買層は大人を想定していましたが、開発初期に試作品を家に持ち帰り、当時小学生だった我が家の子供に試食をさせてみたところ、普通にカリカリ食べていましたので、商品の受容性としては子供も十分ありだと思います。ただ、これまでの調査などからわかったこととして、あるお母さんは、“子供に食べさせるのがもったいないので、子供が寝てからこっそりと夫婦で食べる”、という方もいらっしゃいました」
いや、このキモチはわかる。

この『堅あげポテト』、 “油分が低い”ことや“ひと口サイズ”であることから女性ファンも数多く存在するのだという。
「ポテトチップスはフライの工程で水分と油分が入れ替わりますが、『堅あげポテト』は低温長時間でフライを行うために、水分がゆっくり抜けてゆきます。これにより普通のポテトチップスよりも縮んだ小さい形になり、油が中に入り込めない構造となり、結果として低油分に仕上がります」

大きめのサイズが二つ折りになっているのは、「フライされている間中、堅あげポテトは専用の釜の中でかき混ぜられて続けています。
フライの途中でじゃがいもが柔らかくなっている際にもずっとかき混ぜられていますので、曲がった形や二つ折りの形になってゆきます」という理由から。この結果、“ひと口サイズ”となってより食べやすくなっている。

どうしてロングセラーを続けられていると思いますか?
「堅あげの製法を頑固に守り続け、商品の持つ“世界観”もぶれることなく継続していることがお客様に長い間支持されている理由と考えます。自然の恵みであるじゃがいもをそのまま丸ごと使用していますので、形や大きさなども、季節によって多少のバラツキが発生しますが、“堅い食感”“折れ曲がった個性的な形”“かみしめて味わうじゃがいものおいしさ”それと“油分が普通のポテトチップスと比べて低い”という堅あげの特徴は、他の商品では味わえないものです。今後もお客様を裏切らない、より良い製品を提供できればと考えています」

そんなこだわりは無骨な!? デザインのパッケージにもあらわれている。『堅あげポテト』は「うすしお」「ブラックペッパー」「のり」のほか、この3月には「コンソメ」味があらたにラインナップ。
店頭で見かけたら、ぜひ手にとってみてください。
(dskiwt)