今日届いた
『新世紀読書大全 書評1990-2010』柳下毅一郎 洋泉社 凄い書評集です。中身については私はこれ一気読みしないで ぼちぼち一日一頁ずつくらいの感じで読むつもりなんで、 すんません。まとめた感想は書けません。 んが、造本の凄さについてどうしても書いておきたいので。 マニアックですみません。 奥付までで653頁という大著にもかかわらず、ツカを実測したら29ミリ。 本文紙がとにかく薄い。なのに裏映りない。 同じくらいの厚さの普通の上製本と比べてみた。 本文紙もよくあるクリーム色の、あれ。名前しらないけど。 こんな感じ。二ミリボールの表紙分、載せて置いて、同じ高さにしてます。 で、こちらの本は、本文紙奥付まで数えると535頁しかないんです。 いかに薄いかがわかるでしょう。 しかもこの本の開きの良さはなに?! 驚くほどよく開く。だから読みやすい。 紙目が強いんです。抄紙のスピードが速いと目が強くなるんだったかな。 横によくしなるようにできてる紙をわざと選んだんだろうなあ。 これは開きの悪い本の例。 いや、悪いというほどではなく、普通です普通。 紙も厚くて重い。 これ事典形式の本なのであっちゃこっちゃと開くから、 落ち着いてくれないからちょっとイラッとする。 しかし本文紙はロット買いの単位がデカイためなのか デザイナーがなんとかしようにも、 版元の手持ち資材でよろしく☆ みたいな事情も大きいのです。 デザイナーが選べないことも多い分野。 それにフロントカバーにお金かけたいと思うのも人情だし、 まず買ってくれないと困るからカバー大事だし。 でも本文紙というのは、本を読んでいる時間ずっと つきまとうんです。 開きが悪けりゃムカッとするし 重けりゃ持ち運ぶたびにうんざりしたり 寝ながら読むだけで手首痛めたり いい本文紙だと誰の気にもとまらないという縁の下の力持ち だけど、これだけ薄くて紙目も強いとなると、 大抵の場合、湿気に敏感に伸びるんじゃないかと予測。 そうじゃない紙もあるのかもしれないけど。 それの何が困るのかというと、これ小口に文字が出るようになってます。 小口印刷と言ってしまってるけど、その昔は小口にマーブル模様を 文字通り押し付けてのせたり、絵を書いたりしたんだけど、 現代の工業製本では、本文の脇に絵柄をずらして刷り、小口に反映させるわけです。 昔の工作舍の本とかに、あった。記憶に間違いなければ杉浦康平氏のデザインで。 で、この小口に出る文字をきちんと出すには、 印刷のズレがまず許されない。ズレの許容範囲が異様に狭くなると予測。 なのに紙が、伸びやすいかもって……。天気ひとつで紙は伸び縮みしますし、 オフセットは水が必要な印刷…、いや、水いらないオフセットもあるんだったか? それから、折りと、折り丁の合体接着も、正確でなければならない。 どうしても一折りの中の内側と外側でも、少しズレがでるはず。 紙が薄いから、折り山のズレは少ないかもしれないけど。 天地左右いかなるズレも最小限に抑えなければならない。 というような、幾多の試練を乗り越えてる印刷製本です。 泣けます。現場見学したことのある者としては。 感心しきり。 デザインの高橋ヨシキ氏、 編集の田野辺尚人氏、 そして印刷製本を担当したサンケイ総合印刷株式会社、 の、力作でしょう。 書評という中身を考えて、すごくよく造本設計されてる。 全ての頁、流し込めないデザイン、小口のずらし、 自分がやるとなったら発狂するよ……。 そして 実際に印刷製本に関わった人も、よくがんばったと思う。 こりゃー大変だったのでは。涙。 労力を使ったから、大変だったから、 買ってくれ と 制作に関わった方々が 言いたいのかどうかもよくわかりません。 (本意でないかもしれない) どんなに苦労しても出来がよくなけりゃ仕方ないし。 それでも脇からあえて言わせてもらえば この本を高いとは思わないで欲しいのです。 そもそも中身だけでも これくらい払う価値ある本に、 これだけの手間をかけて作って それがちゃんと効果的になってんですから。 私はこの先老化も進む事だし、 たいがいの本は電子本で構わんと思ってるクチですが こういう本は、電子化したくないです。手でツカを掴んで、 この妙に薄くてぱりっとしてるのにざらついた紙をめくりながら、 小口のざらざらを指の腹で撫でながら 読みたい。 造本のすべてが、柳下氏の文章に呼応するように思えるから。 えーフェティッシュ炸裂な長文で失礼しました。 仕事に戻りますはい。
by riprigandpanic
| 2012-09-27 01:38
| ほんっ
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