山本五十六も愛した「霞月楼」 老舗料亭ツイッターで発信
旧日本海軍の山本五十六・連合艦隊司令長官や吉田茂元首相ら、戦中戦後の著名人が愛した創業124年の料亭「霞月楼」(茨城県土浦市)が、ツイッターで情報発信している。料亭になじみがない若者にも身近に感じてもらい「歴史の息遣いに触れてほしい」と願っている。
霞月楼は明治時代に創業。山本長官は霞ケ浦海軍航空隊に配属されていたころ、何度も通った。当時の主人とは親交が深く、太平洋戦争の開戦3日前には「最後のご奉公に精進致し居り候」と手紙を書き送った。
若い海軍士官が出征前の送別会で落書きしたびょうぶには、人間魚雷「回天」の文字や戦闘機の絵のほかに、女性のヌードのスケッチや芸者の名前も。5代目おかみ堀越喜久枝さん(63)は「20歳前後の無邪気さや、切羽詰まった気持ちが伝わってくる。これから楽しい時期なのになぜ、という疑問もあったのでは」と思いを巡らす。
若さゆえの破天荒なエピソードも伝わる。酒に酔って庭園の灯籠を押し倒す士官や、畳をはがして次々積み重ね、その上に座る遊び「芋掘り」に興じる不届き者も。後で上官が謝りにきたが、店側もそれ以上とがめることはなかった。
終戦から67年たち、かつて周辺に10軒ほどあった料亭も現在は霞月楼を残すだけ。常連客の多くは中高年層だ。
ツイッターの「つぶやき」には限定料理やコースの紹介のほか「錦木が色づき始めました」など、日々の出来事も織り交ぜる。フォロワー(読者)はまだ400人ほどだが、日本食が持つ独特の季節感を伝えることも目指す。
ツイッターを提案した常務の堀越礼さん(37)は「新しいツールを取り入れながら、変わらぬおもてなしの心を伝えたい」と話している。〔共同〕