サイエンス

これまで不可能と考えられてきた下半身不随の患者が自らの足を再び動かせるようになったVRトレーニングとは?


これまで脊髄損傷などによって下半身不随になった場合、回復は不可能と考えれてきました。しかし、最近の研究では、脳にチップを埋め込むことで脊髄をバイパスして信号を脳に送ることで腕を動かせるようになる四肢麻痺患者が現れています。さらに、VRを使ったイメージトレーニングをも組み合わせることで、パワードスーツなしで自分の足を動かすことに成功する人も現れるなど、従来の医学的な常識を覆す画期的な成果が登場しています。

Paraplegics learn to walk after years with the help of virtual reality and exoskeletons — Quartz
http://qz.com/757516/paraplegics-are-learning-to-walk-again-with-virtual-reality/

19歳のときに下半身不随になった32歳の女性が、VRトレーニングを経て13年ぶりに自らの足を自分の意志で動かせるようになった様子は、以下のムービーで確認できます。

Movie 3 P1 steps - YouTube


科学者たちは、下半身不随になった患者が再び足を動かせるようになる方法を見つけました。


アメリカのデューク大学のミゲル・ニコレリス博士らの研究チームは、脊髄に障害を負って下半身不随に陥った患者8人に対して、脳波でパワードスーツをコントロールできるようにトレーニングを行いました。研究が始まった当初は、患者に足を動かすイメージをしてもらっても脳波に反応はなし。まるで、脳は歩く方法を消し去ってしまったかのようだったとのこと。


実験では、前腕の感覚を脳にフィードバックする様子をモニタリングできる長袖の特殊スーツを着用して、脳波を測定。その脳波を使って、VR空間のアバターの「偽の足」を動かすイメージを頭に思い描くトレーニングが行われました。


VRトレーニングでは、Oculusの「Rift」が活用されています。


当初はパワードスーツを扱えるように脳波を操れるようにするという目的で始まった研究でしたが、研究者たちの想像していなかった効果が現れ始めます。


なんと、実験に参加した8人の患者全員が、足を動かす感覚を取り戻し始めたとのこと。VR空間の偽の足を動かそうと脳波を送り返すトレーングを繰り返す中で、神経回路が活性化し再び機能し始めたというわけです。


そして、1日に2時間のトレーニングを2週間続けた後、患者たちはいよいよパワードスーツを着用して歩行トレーニングをスタートさせました。


脳の活動を調べると、患者たちが実際に歩いているかのような感覚を覚えていることが分かったとのこと。


そして、12カ月のトレーニングの後に、パワードスーツを使って歩行することに成功する男性患者が現れました。この男性がパワードスーツで歩く様子は以下のムービーで確認できます。

Movie 7 P2 EXO - YouTube


「歩く感覚」を再び取り戻した患者は神経回路が活性化しただけでなく、自分の意志で足の筋肉を動かせるようになり始めたとのこと。


このような現象は、脳波で機械を操作するシステム「Brain-Machine Interface(BMI)」に関する研究でも初めてのことでした。


この画期的な成果について研究者たちは、VRを使って歩く動作のイメージトレーニングを繰り返すことが、神経回路と筋肉の受容体との間のコミュニケーションが復活したと考えているとのこと。


この研究は現在も続けられており、身体能力の回復具合は引き続き観察されています。回復不可能と考えられていた下半身不随患者が、将来、自らの足で歩けるようになる日が来ることが期待されています。

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in ハードウェア,   サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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