未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

テスト駆動開発、Kent Beck著、和田卓人訳、濫読日記風、その28

テスト駆動開発の発売記念という建てつけの技術書の歩き方勉強会「テスト駆動開発」編 - connpassというイベントに参加した。

テスト駆動開発は2003年に翻訳出版されたのだが、絶版になっていて、先日、和田さんが訳し直して出版された。その経緯は新訳版『テスト駆動開発』が出ます - t-wadaのブログが詳しい。

ソフトウェア技術書の古典的名著を翻訳しなおし、復刊するという商業ベースにはなかなか乗りにくいことを敢行した和田さんとオーム社に拍手を送りたい。

再翻訳に当たって、1)サンプルのソフトウェアのバージョンを最新にした、2)判型を小さくした(持ち運びやすい)、3)サンプルコードの省略をやめ、コードの変更点を目立たせ、各章ごとにその時点の全コードを記載する、というような工夫を施した。

それによって、現時点でも非常に読みやすい構成になっている。

そして本書の最大の特長は、付録Cにある、和田さんによる解説である。2003年に出版された版(絶版になったもの)によってテスト駆動開発が紹介されてから、ブームになり、普及するにつれ、「教条主義化」と「意味の希薄化」が始まる。そのような背景と文脈を本書の解説は生々しく記している。

本書の本質は2003年当時とほとんど変わっていない。継続的インテグレーションや継続的デリバリーなど一般的になり、アジャイル開発も普及してきた。そのような環境が変わったとしても、テスト駆動開発の本質はほとんど変わっていない。その文脈をしっかりと付録Cの解説は伝えている。

ソフトウェア関連技術書でこのように息の長い価値を持つものは多くはない。若い人が本書の本質を理解するために、付録Cは必須だったと言える。おじさんたちは、おそらくその文脈を多かれ少なかれ知っているだろう。しかし、そのようなものは必ずしも言語化されていない。文脈をしっかりと言語化した意義は大きい。

若者や初学者にテスト駆動開発について学びたければ本書を読めと勧められる。中堅ベテランにはとりあえず付録Cを読め、話はそれからだ。とも言える。

プログラマ必読書である。


濫読日記風