安倍晋三首相と石破茂元幹事長は17日、自民党総裁選(20日投開票)をめぐり、首相の支援議員が石破派の斎藤健農相に閣僚辞任を迫ったとされる問題で、大バトルを展開した。首相は、辞任を迫った議員はいないとして「(いるなら)名前を言ってほしい」と求めたが、石破氏は「斎藤さんは作り話はしない」と反論した。一方で首相は「『角福戦争』のころは、こんなものじゃない。選挙とはそういうもの」と発言。選挙戦終盤で“圧力問題”がクローズアップされてきた。

首相VS石破氏の激しい討論バトルは17日夜、2人が生出演したテレビ朝日系「報道ステーション」で展開された。

首相を応援する議員が、石破氏を支持する斎藤氏に閣僚の辞表を出すよう求めたとされる問題について、首相は「陣営に聞くと誰も言った人はいないと。(いるなら)名前を言ってほしい」と指摘、斎藤氏の主張に疑問を投げかけた。斎藤氏が事前に「安倍政権の方向は正しい。義理もあるので石破氏を支持します」と、了承を求めてきたことも“暴露”。「どうぞ全力で応援してほしい」と伝えたことも、明かした。

首相の話を硬い表情で聞いていた石破氏は、「斎藤さんは作り話をするような人では絶対ない。彼が言ったからには(圧力は)あったと思う」と断言。斎藤氏をうそつき呼ばわりするような首相の発言に、不快感を示した。「斎藤さんは、誰とは言わない。言ったらどうなる。党内が混乱するようなことがあってはならない」と主張。名乗り出るよう求めた首相の発言を、「被害者に名乗り出ろという、財務省のセクハラ問題に似ている」と怒りをにじませた。

石破氏の反撃に、首相は「斎藤さんが名前を言わないために、疑われるのはいや。私は最後の総裁選。そんな総裁選にしたくない」「言われた人は反論すればいい」と、必死に訴えた。

首相はこれに先立つ日本テレビの番組では、「脅しではないと思う。石破さんを支持するからと辞められても困る」とした上で、「これは戦いですから。角福戦争のころはこんなもんじゃない。もっと激しい言葉があった」と過去の自民党の権力闘争を例に、「圧力発言」をいさめなかった。石破氏は「誤った発言だ。党のためにもよくない」と不快感を示した。

今回の総裁選では、首相の優勢が伝えられる中、首相支持派から、石破派の議員は選挙後「冷や飯」状態になるとの声が浮上。石破氏が「パワハラだ」と反発した経緯もあり、今後に禍根を残しそうだ。

◆角福(かくふく)戦争 自民党の実力者だった田中角栄、福田赳夫両氏を中心とする派閥の間での壮絶な権力政争。佐藤栄作首相の後継をめぐる1972年の総裁選が発端とされる。田中、福田両氏が対立し、当初は福田氏が有利とみられたが、大平正芳氏、三木武夫氏を加えた4氏が激突する中、大平、三木両派を抱き込んだ田中派が決選投票で福田氏に圧勝。その後も対立は続き、79年の「40日抗争」などにも影響した。