NTTデータの「Lindacloud(リンダクラウド)」は、「Hadoop」に最適化したハードウエアを同社が自ら設計・製造したアプライアンスサーバーだ。機能をそぎ落として、低コストと低消費電力を追求したハードウエアは、大手クラウド事業者が使うサーバーによく似ている。Lindacloudが象徴する、サーバーの新潮流を探った。
Lindacloudが搭載するHadoopは、分散バッチ処理プログラムを開発するためのミドルウエアだ。複数のサーバーにデータを分散保存してバッチ処理を実行し、結果を集約するという機能を備える。
Lindacloudは、高さ42Uのラックに搭載した35台の専用サーバーユニットで構成する。合計で32個のプロセッサと、256Gバイトのメモリー、128T(テラ)バイトのハードディスクを搭載して、価格は800万円(図1)。インテグレーション費用も含まれていることを考えると、安価といえる。
Lindacloudには、Hadoopのほか、NTTデータがHadoop用に開発した運用監視ツールがインストールされている。「ユーザー企業は、複数のサーバーにソフトを導入して、クラスターシステムを構築する手間が不要になる。これで、分散バッチ処理プログラムの開発に専念できる」(テレコムビジネス事業部第三統括部の角野みさき部長)。
ハードはHadoopに最適化
Lindacloudの最大の特徴は、Hadoopに最適化したハードをNTTデータが自ら設計・製造したことだ。同社の角野氏は、「Hadoopに適したサーバーが市販されていなかったことから、ハードの自作を決断した」と語る。
Hadoopは、プロセッサ数とハードディスク台数に比例して、性能が向上する。ラックにより多くのサーバーを搭載し、集積度を上げる必要がある。しかし集積度を上げる際には、消費電力がネックになる。「日本のデータセンターの多くは、ラック1台当たりの最大供給電力が3kW~4kW程度」(角野氏)。標準的な1Uサーバーは、240W程度の電力を消費する。ラック1台につき、10~15台しかサーバーを搭載できない。
それに対してLindacloud用サーバーユニットは、1台につきクアッド・コア・プロセッサを1個、8Gバイトのメモリー、容量1Tバイトのハードディスクを4台搭載し、消費電力は110Wだ(写真)。標準的な1Uサーバーに比べて2倍の台数をラックに搭載できる。
Lindacloud用サーバーユニットの消費電力が少ないのは、スペックを絞り込んでいるからである(表)。プロセッサは、サーバー用の「Xeon」ではなく、デスクトップPC用で消費電力量の少ない「Core 2 Quad Q9550s」を使う。マザーボードは小型PC用の「Mini-ITX」規格で、拡張スロット(PCIスロット)やHBA(ホスト・バス・アダプター)も無い。
サーバーユニットのきょう体は、高さが84mmで、一般的な1Uサーバーの2倍。風通しが良いため、プロセッサ付属のファンで全体を冷却できる。冷却用の特別なファンは不要だ。