横綱朝青龍(27=高砂)が、モンゴル力士のパイオニアにキレた。17日、モンゴル国会総選挙でトップ当選した元小結旭鷲山のダバー・バドバヤル氏が日本相撲協会にモンゴルの政情不安の実情を報告。モンゴル巡業(8月27、28日)が延期になる恐れが出てきたことに、朝青龍は「あの野郎~」と憤慨。悲願の巡業開催に「横やり」を入れられたと受け取り、怒りをあらわにした。取組では平幕の栃乃洋に押し倒され早くも2敗目。横綱白鵬(23)と関脇安馬(24)は5連勝を飾った。

 朝青龍がバドバヤル氏の「横やり」に敏感に反応した。取組についての質問に答えたあと、報道陣に「なぜ、シュー(バドバヤル氏)は来たんだ」と逆質問。同氏の報告で巡業延期の可能性が浮上したことを知ると、表情を変えた。「あの野郎~。協会が決めることだけど、オレはやってほしい。本当に治安が悪いなら、オレはここで相撲を取ったり、話したりしてない。誰かが『危ない』と言ってるだけだ」。荒っぽい言葉で同氏を批判した。

 この日、バドバヤル氏は、横綱土俵入り直前の午後4時に愛知県体育館を訪れ、モンゴルの現地情報を協会側に報告。国会総選挙で当選した立場だけに、巡業部も真剣に耳を傾けた。

 バドバヤル氏

 国会議員は76人の定員で、私を含めた66人が今回の選挙で当選を認められた。しかし、残る10人に関しては、巡業前の8月上旬から中旬にかけて、再選挙で選ばれることになった。この結果は苦しい生活をしている国民にとっては重大。また暴動が起こる可能性があります。

 暴動は7月1日に起き、死者5人、計320人以上の負傷者を出した。数日で騒ぎは収まったが、同氏は「自分は責任は取れないので、巡業を『やるべき』とは言えない」と、火種が残っていることを強調した。

 同氏は、師匠でもあった大島巡業部長(元大関旭国)と一緒に、北の湖理事長にも同様の報告をした。同理事長は「何とも言えない」と明言を避けたが、大島部長は「巡業をやるなら万全な状態でやらせたい」。湊副部長(元小結豊山)も「中止はないが、延期はあるかも」と話した。

 だが、初めてのモンゴル巡業は朝青龍の悲願だ。実現を求めて署名活動を行うなど、これまでも積極的に関与。親族が経営するサーカス場(約3000人収容)で開催されることも決まり、現地では「朝青龍興行」とも称されている。一方で、「延期は仕方ない?

 そうだね。会場ももっと広い所にすべきだよ」と白鵬が話すなど、他のモンゴル人力士とは微妙な温度差もある。孤立した朝青龍は今後、どうでるか?

 土俵外の動きも慌ただしくなってきた。【柳田通斉】