緊急開催　誰が日本を守るのか！？

　デフレの深刻化を受けて、日本の法人企業の７０％は赤字になっており、法人税を支払っていません。すなわち、仕事が無くて困っている中小企業に対しては、法人税減税は何の恩恵も無いわけです。

　そもそも、日本の国内経済の問題は、需要不足によるデフレ不況で、黒字法人が少なくなってしまっていることです。根本的な問題には手をつけず、法人税を全体的に引き下げても、黒字企業の内部留保を増やすだけの結果に終わるでしょう。すなわち、またもや｢過剰貯蓄」の発生です。

　現在、日本の銀行の貸出残高は、１１ヶ月連続で減少するという状況にあります。銀行の貸出態度DIが、大企業や中堅企業に対してはプラスになっている以上、国内の資金需要不足は明らかです。根っこの問題である需要不足に手をつけず、「政府から黒字企業への贈与」を行うなんて、一体何を考えているのやら、さっぱりわかりません。

　もちろん、政府がビジョンやグランドデザイン、成長戦略を示し、重点分野に「投資減税」をするというのであれば、全く反対しません。と言いますか、三橋の「日本のグランドデザイン（講談社）」にも書いたように、国内需要は「公共投資＋重点分野への投資減税」により拡大させるべきです。なぜなら、公共投資のみでは、さすがに「一部の産業のみしか潤わず、効果が（相対的に）全体に波及しない」ためになります。公共投資拡大と、的を絞った投資減税こそが、最も適切なソリューションだと考えています。

　ところが、政府がやることは子ども手当て同様に、またまた「政府から民間への贈与」なのです。
　要するに、この手の政策は、あまり知恵を絞る必要が無いので、やりやすいのでしょう。何しろ、対象が建前上は「全法人」ですから、「一部の企業だけが潤うだけだ！」などという批判はやりにくくなります。とはいえ、現実に黒字企業が三割にも満たない以上、「一部の企業だけが潤う」ことは間違いないわけですが。

　菅総理は「経済界は国内に投資し、雇用を拡大し、さらには給料を増やす」なんて言っていますが、それができるなら初めから苦労しません。何しろ、政府は民間に「法人税減税分は、雇用を増やすか、投資をせよ！」などと命令することはできないのです。
　
　今の民主党政権は、「全体を見る視線」が完璧に欠落しています。結果的に、却って逆効果の政策ばかりが浮上してくるわけです。

　法人税減税による税収減は、結局のところ国債発行で補うことになると思います。政府が民間から借金し、民間企業に贈与するわけです。

　間違った問題認識から、間違った対策が生まれ続ける。日本が抱える問題は、情報というものがどれほど重要か、嫌というほどに教えてくれます。