伊藤園は3月26日、静岡県立大学食品栄養学部の渡辺達夫教授との共同研究で、「炭酸水による体温低下抑制作用」について、ヒトでの効果および温度や刺激の受容体による作用を解明したと発表した。研究の詳細な内容は、3月24日に日本農芸化学会2012年度大会において発表され、同大会においてトピックス賞を受けている。

炭酸飲料は、口腔内で刺激と爽快感をもたらす嗜好飲料として広く飲まれているものの、意外かも知れないが、その機能性に関する報告はわずかしかない。一方、ショウガなど刺激を有する食品成分には体を温める効果が知られている。このことから、炭酸水の刺激に着目し、炭酸水の飲用が体温に及ぼす影響について検証が行われた。

炭酸水のヒトにおける体温への効果検証として、冷涼な環境下(20.5~22.4℃)において、冷え性の女性7名(以下、被験者)を対象に、ガスボリュームの異なる冷やした炭酸水と水を飲用してもらい、飲用前および飲用後(2分、4分、6分、8分、10分、20分、30分、40分)の手の皮膚温が測定された。

また、炭酸水の刺激の働きを明らかにするため、温度や刺激の受容体である「TRPV1」および「TRPA1」に着目し、それらを発現させた細胞の応答の確認も実施した具合だ。

なお受容体とは、生物の体にあって、外界や体内からの何らかの刺激を受け取り、情報として利用できるように変換する仕組みを持った構造のことである。そしてTRPV1はトウガラシの辛味成分(カプサイシン)や43℃以上の熱などによって、TRPA1はワサビの辛味成分(アリルイソチオシアネート)のようにツーンとくる辛味や17℃以下の冷たい刺激により、それぞれ活性化される受容体だ。

冷涼な環境下で試験を開始すると、被験者の手の皮膚温が低下。炭酸水(強)と水を飲用した被験者を比較して、炭酸水(強)で手の皮膚温の低下が有意に抑制されることが判明した(画像1)。温度や刺激の受容体については、TRPV1では活性を示さず、TRPA1に活性を示した形だ。

この結果、炭酸水の刺激がTRPA1を活性化させ体熱産生を促進し、かつ放熱を抑制したことによって、体温低下抑制効果が示唆されたのである(画像2)。

画像1。炭酸水と水を引用した被験者の手の皮膚温の変化

画像2。炭酸水如ル体温低下抑制効果の推定される作用機序