第一回 理論社・新しい児童文学を追い求め続ける出版社の軌跡 その1 60年代編
前回は、60年代理論社が新しい世代の作家を見出し、今も読み継がれるロングセラーになるような傑作を次々と刊行していった様子を報告しました。理論社はこれだけの実績をつくってもそれにあぐらをかくことなく、常に前衛を志向し新たな児童文学への挑戦を止めませんでした。さらに新たな才能を発見し、児童文学の可能性をどんどん拡大していきます。
70年代の新星たち
70年代理論社を語る上で、カリスマ編集者小宮山量平が見出した最大のヒットメーカーにまず触れないわけにはいかないでしょう。74年に『兎の眼』で児童文学作家としてデビューした灰谷健次郎です。
- 作者: 灰谷健次郎,長谷川知子
- 出版社/メーカー: 理論社
- 発売日: 1974/06
- メディア: 単行本
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- 作者: さねとうあきら,井上洋介
- 出版社/メーカー: 理論社
- 発売日: 1972/02
- メディア: 単行本
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- 作者: 三田村信行,佐々木マキ
- 出版社/メーカー: 理論社
- 発売日: 2003/02/01
- メディア: 単行本
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- 作者: 岩瀬成子,長新太
- 出版社/メーカー: 理論社
- 発売日: 2005/10
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少し時間が飛びますが、理論社は87年に岩瀬成子による戦後児童文学史上最大級の実験作『あたしをさがして』を刊行します。この作品は難解すぎてわたしの手には負えないので、宮川健郎による評を引用します。
イメージをつぎつぎと繰り出すだけで、ストーリーは、すっかり破壊されている、難解だ、子どもの文学といえるかと、困惑された作品である。(中略)児童文学の物語づくりには、そういったテーマにおけるタブーより以上のタブーがあって、岩瀬成子は、それをとうとうやぶってしまったようなのだ。だが、その試みがうまくいったのかどうか、正直にいって、よくわからない。
(『現代児童文学の語るもの』(NHKブックス)p215〜216)
- 作者: 岩瀬成子,飯野和好
- 出版社/メーカー: 理論社
- 発売日: 1987/09
- メディア: 単行本
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79年・フォア文庫創刊
1979年に岩崎書店・金の星社・童心社・理論社の協力出版でフォア文庫が創刊されました。『チョコレート戦争』や『王さま』シリーズなどこの時にはもはや定番になっていた作品が文庫化され気軽に買えるようになり、さらに多くの読者を獲得しました。既存作品の文庫化だけでなく、後に文庫書き下ろしの傑作も多数生むことになります。
80年代・大長編豊饒の時代
70年から80年代にかけて児童文学の長編化が進みました。それにともないストーリー展開や表現方法の自由度が増し、文学性がどんどん深化していくことになります。そんな80年代の大長編の傑作群から数作を紹介します。ただし、ここで挙げる作品は重要な作品のごくごく一部でしかないことをお断りしておきます。
ピラミッド帽子よ、さようなら (復刻版理論社の大長編シリーズ)
- 作者: 乙骨淑子,長谷川集平
- 出版社/メーカー: 理論社
- 発売日: 2010/02/01
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- 作者: 上野瞭,福田庄助
- 出版社/メーカー: 理論社
- 発売日: 1982/03
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- 作者: 飯田栄彦,太田大八
- 出版社/メーカー: 理論社
- 発売日: 2010/02/01
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国境―大陸を駈ける〈第1部 1939年〉 (大長編エルシリーズ)
- 作者: しかたしん,真崎守
- 出版社/メーカー: 理論社
- 発売日: 1986/02
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