「自分でやったほうが早い病」と聞いて、「ああ......」と思い当たる人は少なくないはず。基本的に「できる人」だけれど、完璧を求めすぎるせいか人にまかせることができない。だから結局は自分ひとりで抱え込み、ときには自滅してしまう。そんなタイプ。

『自分でやった方が早い病』(小倉広著、星海社新書)が取り上げているのがまさにそういう人ですが、本書の見るべき点は、この病を乗り越えることで得られるものの大きさをきちんと示している点です。たとえばわかりやすいのが、「自分でやったほうが早い病」への15の処方箋。これらをクリアすれば、かなりの問題点を改善できるのではないでしょうか?

1.まず痛い目に遭う(114ページ)

「自分でやったほうが早い病」の原因は利己主義であるため、徹底的に利己を貪り尽くし、痛い目に遭ってとことん問いつめられれば利己主義から利他主義に変われると著者は言います。

2.体質を改善しないと病は治らない(118ページ)

体質を改善しなければ健康にならないのと同じで、根本的に生き方を変えなければ、この病を治すことはできないという考え方です。

3.「結果を出すこと」と「人に任せて育てる」はまったく別物(120ページ)

人を育てる余裕がなくて当たり前。それでも結果は出さなければならない。それを踏まえて人材を育てる必要があるということです。

4.「任せる」とは「失敗させる権利を与える」こと(123ページ)

「失敗」は短期的に、成果や効率という一面から見た場合の評価として捉え、大きな目で見ることが大切だといいます。

5.まわりの人をヒーローにする(126ページ)

自分がヒーローになるのではなく、みんなをヒーローにすることこそが大切。

6.「任せる」は「仕事をふる」ことではない、と理解する(129ページ)

仕事と責任をセットで任せる。仕事を任せたら責任もあわせて与えることで、やる気を発揮させることができるといいます。

7.インフォーマルで権限を与える(131ページ)

できないうちに任せてしまうことによって、できるようになることもあるのだとか。

8.仕事を任せていい人の特徴を知っておく(134ページ)

まず「信頼性があるかどうか」「責任感があるかどうか」を見極めておくことが必要になるのだとか。

9.自分のコピーを作ろうとしてはいけない(136ページ)

部下に仕事を任せた以上、部下のやり方に口を出してはいけないということです。

10. 「つぶやき戦術」で軌道修正する(138ページ)

できる限り口出しは我慢する。どうしても口出ししたいときは、つぶやき戦術で軌道修正する。

11. 「押し」と「引き」で上手に任せる(140ページ)

場面に応じて「押し」と「引き」を繰り返して、後方支援を繰り返していかなければいけない。

12. 言いたいことは3つだけ言う(142ページ)

気づいたことが100個あったとしても、その場でできる3個しか言わないことで、部下にとってはなすべきことが明確になります。

13. 計画と検証は一緒にやり、実行は一人でやってもらう(146ページ)

リーダーは部下のP(計画)とC(検証)とA(改善・仕組み化)に全力を注ぎ、D(実行)は部下に任せる。それが「仕事を部下に任せる」ということだといいます。

14. 仕事を任せたい人、お願いしたい人とコーヒーを飲む(149ページ)

面談の時間を決めてコミュニケーションをとることが大切。これはよく分かります。

15. あえて70点のマニュアルを作る(152ページ)

誰が行なったとしても70点を取れるマニュアルを作ることが大切なのだとか。

以上15点のチェックポイントをひとつひとつクリアしていけば、社内でのコミュニケーションも円滑になるのではないでしょうか。

本書を手に取った方は、どんな感想をもったでしょうか。Facebookページでも下記のコメント欄でも、ぜひ教えてください。

(印南敦史)