2012年10月31日

【サンディ】、大統領選やハロウィンどころではない!災害でヒーローとなったお店とは?

121031ハリケーンsandy
■カテゴリー1のハリケーンから温帯低気圧に変わったサンディは29日、ニュージャージー州アトランティックシティ南部に上陸した。「サンディ」は30日正午、ペンシルベニア州を速度を落としながら西に進行している。NBCニュースによると、強風で倒れた木の下敷きになるなどして、米国とカナダで27人以上が死亡。ニュージャージー州など17州で810万以上の世帯やオフィスで停電被害を受けた。ニューヨーク市などは停電等の影響で公共交通機関が運休し、都市機能が完全にマヒ状態に陥っているという。オバマ大統領は30日、ニューヨーク州とニュージャージー州について「大規模災害」を宣言した。
 大手チェーンストアもサンディの影響で閉店を余儀なくされている。ウォルマートは29日夕方、東部に展開するスーパーセンターを中心に300店近くを閉店、30日午前中も170店が開店できていない。ターゲットも30日現在、40店近い店が閉店となっている。ホームデポやロウズ、ベストバイなどでも臨時休業する店が相次いでいる。
 
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。サンディは、かわいい響きのある名前ですが、東部地区にもたらした被害は深刻で甚大です。経済的損失は想像できませんが、一部にはハリケーン史上最悪となる200億ドル(約1.6兆円!)と試算されてもいます。小売店にとって10月末はハロウィン前でにぎわう時期でもありますが、サンディで消費は文字通り湿ってしまいます。湿るどころか、被害の範囲が広ければ、アパレル関係は凍ってしまうことも考えられます。ハリケーン災害の被害で(不謹慎でもありますが)追い風となるのはスーパーマーケットやホームセンター。ハリケーン前に食料品や水は買いだめされ、過ぎ去った後は停電になるため発電機や電池、懐中電灯が売れ、風で倒れた木を処分するためのチェーンソーやシャベル、家の修理等にベニヤ板が売り切れになるのです。
⇒したがってホームデポではサンディ上陸の1週間前からカリフォルニアに展開する店から発電機などかき集め、東部の店に運んでいたといいます。というのもホームデポではハリケーンが近づくと、ジョージア州アトランタにある本部にハリケーン対策用の司令部が設置されるからです。本社スタッフばかりでなくベンダーからもスタッフが駆けつけ、ハリケーンの進行具合をみながら、物資の運行や店の稼動を決めるのです。対策本部では広報の役割も果たしていて、指令部長がニュースを通じて、必要なものを呼びかけるのです。ウォルマートでは災害対策本部だけでなく、現場に災害対策チームを派遣しています。現場で店対応の指示や援助をおこなったり、放送機器を積み込んだ大型バンからサテライトを通じビデオストリーミングで本部に現場状況をビデオ送信しているのです。電話網が寸断されても、独自通信でコミュニケーションを可能にするのです。

⇒ウォルマートほど災害に対して積極的に対応している企業はないでしょうねぇ。というのも2005年8月にアメリカ南部を襲った大型ハリケーン「カトリーナ」の対応で、それまであったウォルマート批判が一気に少なくなりましたから。ウォルマートはハリケーンが上陸する数日前から、予防的な対策をたて十分な準備を行っていたといいます。ハリケーンが過ぎ去った後も、応急対策や救援物資の輸送、復旧活動などを迅速かつ効果的に行うことができたのです。お店をすばやく再開させたほか、FEMA(連邦危機管理庁)よりも早く被災地域住民に救援物資を配送したのです。こういった対応でウォルマートは(低賃金で労働者を使い、地域の小型店を閉店に追い込む)悪者からヒーローとなったのです。このときからウォルマートは広報をプロフィットセンターとして最大限に力を注ぐようになっています。
 あまりいい言い方ではありませんが、店が閉店に追い込まれるようなピンチもウォルマートは機動力でチャンスにしているのです。
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