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内部被曝という問題をどう考えるのか③沢田昭二名誉教授との話

2011-04-25 05:41:02 | 福島第一原発と放射能

 今月、名古屋大学の名誉教授で、理論物理学者の沢田昭二先生とお電話で内部被曝についてお伺いしました。中旬の岐阜の勉強会でも、直接お話をしたのですが、原爆症の認定訴訟に、連戦連勝である沢田先生の組み立ての感覚から、今回の福島第一原発のケースをご覧になったお話しとなります。

 「ECRRのモデルが内部被曝を考えようとしてるモデルであることは間違いなくて、他にそうしたものがないのも間違いないですが、まだ未完成なんですよ。本来、研究者が、内部被曝も考慮したモデルを組み立てなければならないのですが、そうしたことが行われていないのが現実でしょう。放射性物質が今回の爆発で大量にてでいますから、福島県全体の農作物を、本当に細かく調査しなければなりません。海にも大量の放出があります。これも漁業に大きな影響を与えます。いずれも、内部被曝の問題として、切実に顕われてきますから、放射性物質の降下物を調べる作業を、かなり広いエリアでこまめにやり続けるしかない。」

 「元々、内部被曝を軽視してきた歴史は、原爆からあるのです。原爆の調査をした軍人たちがいて、放射線の外部被曝ということ以外に、そのダメージを考えることができなかった。そして、それをもとに制度設計された。放射能の被害は、近距離で影響を受けた人をベースに考えると言う想定。内部被曝を軽視してきたんです。戦後、アメリカの放射線防護委員会があって、そこに内部被曝の分科会があったのですが、この研究発表はさせてもらえなかった。分科会はカール・モーガンが中心でしたが。まあ、アメリカの軍事的な都合が、放射線の防護というのを、内部被曝を含めない方向に進んだという訳です。兵器としてどう使うかが優先だからです」

 「原爆訴訟に関わることで内部被曝が重要であることがよくわかります。被爆者におこっていることが、近距離ではなくて、説明のつかないことがあるのです。例えば脱毛。距離が一定以上先のところで、この現象がおきる。少しずつ脱毛しているデータがある。爆心地から少し離れて、降下物の影響が大きく出ていること。内部被曝の存在がはっきりあるんです。そもそも1957年頃、広島の医師が脱毛と皮下出血を調べて、条件として屋内か屋外かの違いや、爆心地にはいったかどうかを調べていくと、内部被曝を示唆するデータがあったのに認められなかった。核兵器国は認めたがらないのは、ずっとで、イギリス兵の裁判がおこなわれているのもそのためなんですよ。ECRRのバスビーは言っていることの細部はともかく、基本的な方向は正しいんです。内部被曝はこの方向で考えるしかない。」

 「福島第一原発の対処は、薬になるのは時間の経過しかない。時間が過ぎれば、熱は必然的に下がっていきます。ゆっくりですけど。ただ、大量に放射性物質が残っていてますから、周辺に飛び散ると深刻なんです。いまのところ、汚染水として大量に水に閉じ込めて、海に流しましたね。私はこれは、費用のことも考えてやったのだろうと思っていますよ。周辺国にきちんと告知せず、こういうことを平気でやるのは、本当に東京電力ですね。 とにかく、安定的に水で冷やさないと、なんともならない。完全な見通しはないままなのです。保安院は東電の受け売りをはなしているだけですしね。もちろん内部被曝と外部被曝のカウントは全くできていません。今回、放射能の防護の観点で、官房参与に入った専門家は、私が関わった大阪地裁の原爆訴訟の国側証人として出てきたが、まったく中身が無かった。論外。彼の五年間の研究業績も調べたが、放射線の防御について、ろくな論文も書いていない。こんな人物を、この非常時に登用するのは驚きだった。今の政府の状態はこんなものでしょう。原爆認定の訴訟でも本当にひどかったですから」

 「やはり、福島県内は深刻。風方向にも寄りますが、測定や風向を測り、緊急避難が対応できるようにするべきですし、今からどうしたら被曝線量を下げられるのか工夫が個人個人で必要になるのでしょう。農作物などは、今以上に厳しい措置を考えないと、内部被曝の問題は起きますよ。細かく調べるしかない。そして、急性の被害はやはり作業員が考えられるのですよ。白血球の減少が心配なんです。内部被曝を考えると、晩発姓の障害として出てくるケースが想定されます。ガン、白血病、甲状腺、「確率的な」障害なんです。被曝が増えれば、発症する人も増えるが、必ずそうなると言う訳でもないんです。被曝していない人よりはガンの発症率は高くなります。しかし、死亡率はむしろ低いんです。これは、例えば原爆の被爆者の場合は、ひばく手帳があって、チェック頻度があるため、早期に発見できることがプラスになっているようです。」

 「日本の放射能の研究者は、内部被曝を軽視しているのは、既成概念にとらわれて、学問の殻を打ち破る感覚が無いのですよ。ぼくら理論物理学は、ニュートン力学が二十世紀になって通用しないことがあるのを思い知らされて、大きく考え方を変えて研究してきた経緯があるのです。何が正しいのか、事実に基づいた研究を行うことが、まずはベースになるのです。今までの考えにとらわれてはならないのです。私から見たら、放射線の研究者は事実基づかない人が圧倒的に多い。放射性降下物の影響がないと言い張る人も珍しくは無いんです。ただし、きちんと研究していたら、こんな話ではないと思いますよ。まったく学問的ではない。私は原爆認定訴訟の関係でこうした人々と相対していますから、どのくらいのレベルなのかよくわかります」と。

 最後に、国民をどう守るのかという観点で、国民の安全を守る政治に今はなっていないと、沢田先生はおっしゃいました。

 さて、他の話ですが、僕はきょうも復興会議の状態をいろいろと、内部から聞いたのですが、「東京電力を信用しているから、特に原発は考えなくてよいのでは」という見解が大半の皆さんの共通見解であったことや、政権の先行き不透明な中で、そこは考慮せずに、こちらはこちらでやりましょうという話が、ひらばであったことくらいしかお伝えすることはありません。

 何もおきていないようにみえるし、情報が大して出てこない状況です。便りが無いのがよい便りであればよいのですが、好転しそうなニュアンスの情報もとくにありません。こういう膠着した時に、思わぬ話が水面下で進行していないことを祈るだけです。


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26 コメント

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有用な情報をありがとうございます (福島県在住)
2011-04-25 10:51:42
子供と妻の退避準備は整っていますので、モニタリングポストの値が木下さんの基準を超えたら退避させようと思います。
私個人は原発事故は収束する方にかけたので、爆発するまでこの地に留まりますが・・・

今回の記事にあるように、国はとことん原発推進側ですよね。

原子力村の人間も少数派というには程遠い状態のようですし。
「原発反対派、目立った伸長みられず」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110425-00000204-yom-pol

沢田先生のような方が、きちんとした研究で放射線の害を証明してくれることを期待しております。
いつも情報ありがとうございます (kaede)
2011-04-25 11:28:54
首都圏在住、40代で子育ても終わっている身なので逃げることは考えていません。
ただ今後、若いひとたちに悲劇が起きる危惧、起こってしまった広範な自然破壊・環境の汚染を思うと、胸がふさがれています。

近辺では原発については触れてはいけない話題、というような暗黙の了解が広がっているというか各人がそれを理解してコントロールしているというか、身内や親しい間柄でも思うようには話せない話題となっています。
少々の気味悪さはあるけれど、放射線がじりじりと迫ってくるどうしようもない事実を受け入れて日々暮らすには、そうするしかないというか。
身のおきどころがなくて毎週毎週、どこかで行なわれているデモに出掛けていますが、底辺は広がっているように思えます。
ネットで関連の記事やブログを見ていると、原発事故が起こって初めてこれまでの自分の平和ボケを責め、子供たちを守れなかった身を呪ったのは何も自分だけじゃなく、多くの大人の今の気持ちなのだろうと。。
大きな声ではっきりとは言えないけれど、ちゃんと危機的な状況をどこかで危惧しているのが大多数なのかもしれません。
子供のために、福島の人たちのために、日本のために、できるだけ騒がずに自分の今できることをしている。それが今の首都圏の大人たちなのかもしれない。
決して大多数が平和ボケのまま、なにごともなかったかのように生活しているわけではないのだと思い始めています。

政府や東電の、必要なデータを隠蔽もしくはデータに対して捻じ曲がった解釈をする態度は間違っていると思います。
いい加減目を醒まして、地球と人類の未来にかかわる重大な事象であることを認識してほしい。
原子炉の正確なデータや被害状況を隠すことにより、正しい対応が遅れ事態が悪化しています。
避難勧告地域が増えると避難にかかる費用が捻出できないからといって、元来の放射線管理区域の定義を捻じ曲げるなんて人間のとるべき態度ではない。
これだけ高い放射線が出ていて危険だから避難するべきだと良心に基づいてちゃんと事実を発表してくれれば、国民も助け合うためならと増税だって納得するはずです。
政府や保安院、東電がこのままでは大量殺人者になってしまう、それはあまりにもお互いに救われないでしょう。
誰を責めるとか、事態はもうそういう次元を超えていると思います。
被害者、加害者の欲得の絡んだ立場を超えて、起きてしまったことに善処し、少しでも状況を改善していくように、万人が動くべきでしょう。
推進派、反対派という膠着した図式を温存している限り、事態は打破できないように見えます。
お互いに膠着した立場を捨てて融和し、新しいエネルギーのあり方を模索し、経済的にシフトしていけないものでしょうか。
愚かな争いを繰り返しつつも善きものを残してきた人間の文明、その能力と精神的な力を信じたいです。…

自分は無力だけど、原子炉が落ち着いて周辺の土壌の浄化作業が始まったなら、その復興を手伝いに行きたいと何となく考えています。
今もできることはしたいと思います。
内部被爆 (ハマ)
2011-04-25 13:19:29
昨日とおとつい、被爆者で、被爆者医療をずっと続けていらした肥田舜太郎医師の講演を聞く機会に恵まれました。
放射能被害では、癌や体の壊死ももちろん恐いですが、あまり知られていませんが、原爆被爆者達をずっと苦しめてきた「原爆ブラブラ病」というものがあります。アメリカの被爆者達は「慢性疲労症候群」という名前をつけられたようですが。肥田医師はこれに向き合ってきた日本でただ一人のお医者さんだと思います。
「ブラブラ病」は、現代に至っても医学でメカニズムが全くわかっていません。だから医者に行っても、あなたは異常がありませんと言われてしまいます。しかし体がだるくてしかたがない。ものすごい倦怠感で、立っていることもできない。座っているのも辛くて横になっているしかない。動けるときもあるけれど発作のように何日かおきに動けなくなって、それが数日間続くというパターンで現れることが多いようです。
医師に健康体だと言われながらそのような状態だと、仕事も辞めざるをえなくなったり、家族や近所の人に「怠け者だ」「原爆を投下したアメリカに(今回の場合は東電や日本政府になるのでしょう)悪意ある噂を流すためにわざとやっている」と評価され、とても生き辛い状況になってしまいます。
身体も心も生活も傷つけられる、とても悲しい被害です。
肥田医師は、お医者さんに、これから東北の人たちが散り散りに県外に出て行って、具合が悪くなった時にはお医者さんに、かかるだろう。医学的な検査でカルテに書けるような異常が見つからなくても、「あなたは病気ではありません」と言わないでくださいと呼びかけていました。実際につらい症状が出ている人に、医者が「病気ではない」と言ってしまうと、二重の苦しみを負わせてしまうことになるからです。だから「わかならい」と言って欲しいと。みんなわからないで困っている。今の医学ではわからない。でもあなたは生きていかなけりゃならないから、気をたしかに持って、なるべく健康に気を配って生きて行くしかない、と励まして欲しいと。
肥田医師は、これまで原発についても積極的に発言されていらしたそうです。「軍事利用」だろうが「平和利用」だろうが物質の性質は同じですから。その肥田先生が、原発についてあまり触れずに、つらい症状が出た人を励まして下さいと、とにかく訴える。その意味をかみしめています。
放射能障害の急性症状は下痢と鼻血だそうです。
悲観的にならないといけないんでしょうか (ためいき)
2011-04-25 13:22:47
今回こそは脱原発の方向で進むと思っていました。ところが選挙結果をみるかぎり、原発推進新聞である読売の報道だから割り引いて考えたいところですが、やっぱり現状は原発推進の大勢にほぼゆるぎなしってことなんですかね。計画停電のときも原発の現状を肯定する世論調査結果がありましたが、これほど深刻な事態であるにもかかわらず、もっと最悪の事態にならないかぎり、あるいは別の原発で大事故が起きないかぎり目が覚めないってことなんでしょうか。

そうなったとき、日本は人が住めないほど汚染されているわけですから、子供たちには海外に脱出できるような進路を選べるようにと今から教育しておくしか手がないようです。日本人って心底愚かな民族なんですね。
どこの野菜を食べたらいいんでしょうか? (東京都在住)
2011-04-25 14:40:19
日本が汚染された原発事故ですが、
内部被曝を考えたときに、
関東近郊で出荷制限のかかってない野菜を食べても
大丈夫なのでしょうか?

我が家には今年小学校に入ったばかりの娘がいますが、
5年後、10年後に健康でいられるのか心配です。

それから、以下のような記事を見つけました。
http://blogs.yahoo.co.jp/x1konno/34545854.html
中国産の野菜を食べるのと、関東近郊の野菜を食べるのと
どちらの方がよりリスクを低減できますか?

教えていただけますと幸いです。
放射線のリスクは正確には分からないんですよ (福島県在住)
2011-04-25 15:03:40
ECRRのモデルだってまだ全世界で皆が認めたモデルなわけでもないし、木下さんだって自分でリスク見積りを「安全側に取っている」と仰っています。

絶望するのは世の中が簡単に変わると思っているからです。
日本は民主主義国家なんですよ。原発で生活の糧を得ている人間が多い上に、票という権力を行使できる人間も沢山居る。
すぐに脱原発できると考える方がおかしい。

地道に少しずつ原発を減らしていくしかない。

海外に脱出といいますが、海外だって色々問題だらけです。民主主義国家である以上、急激な変革など望めません。日本人が特別愚かだとは全く思いません。
福島は低線量被曝の実験場 (双頭の牛)
2011-04-25 15:39:15
体内の生体機能を司る重要なホルモンを分泌する内分泌腺が損傷する懸念があります。脳下垂体、松果体、甲状腺、胸腺、副腎、性腺等…。原爆ブラブラ病は人間の意思決定を司る器官である脳下垂体及び松果体が損傷したからではないでしょうか…。
まだ二年はもつと余裕の管さん (嘆きの天使)
2011-04-25 16:44:47
こういった一大事をブログ発信だけで広めるのは限度があるのではないでしょうか。

もはや日本だけの問題ではなく世界中が手を出せず固唾を飲んで見ている状態なのですから。

皆で協力して海外マスメディアにこの内情を発信するべきだと思います。

南相馬の市長だってYouTubeで政府に対する怒りをアピールし政府が発表せずにいることを彼が公開説明したからこそ、世界中からの協力を得られたわけですよね?
だから南相馬の市長はニューヨークタイムズでも尊敬できる人物として取り上げられたわけですから。

世界は今、正義と真実を求めているし、それを支持するのです。

だからこそ、福島原発で起きている今この瞬間の真実を発信しなければ、

政府に上手く丸め込まれてしまってからではもう遅い、誰も聞かなくなる、それこそ非国民扱いされて手遅れになってしまいます。


そして、この非人道的で無知蒙昧の日本政府の暴挙を止められるのは、もう世界中の世論以外にはありません。

世界がこの実情を知ればとんでもない大騒ぎになりますよ?

それこそ動きたくなくても動かざるを得なくなります。

売国政府が日本人の命を捨て犬程度にしかみていないことはもう明白なのだから、民間レベルで広めていくしか手はないと思います。

ロシアに至ってはすでに福島原発の放射能に汚染されているわけですから、このまま黙っているわけにもいかないでしょう。

官邸で首相が呟いた言葉を聞いてしまった側近からの情報か漏れていましたよね。

「この震災で(活躍したから)まだ(管内閣)は二年はもつな♪」

その通りですね (福島県在住)
2011-04-25 17:22:27
>福島は低線量被曝の実験場

正にその通り。
実験場ですよ。福島は。
ま、ココで生きていくと決めた以上、明らかに住めないと判明するまでは住み続けますがね。

今のまま放射線量が大きく増えずに原発が吹っ飛ばなければ、私の居住地は何とか暮らせると判断していますから。

この判断を非難している方には同じ状況に自分がなった場合、
さっさと逃げられると断言出来る方だけにしてください。

家のローン残高はまだ2000万以上ある。関西に妻の知り合いはいるものの親戚などは一切いない。子供はまだ首も据わらない。妻は帝王切開で出産したばかりで安静が必要。妻の実家は家業を営んでおり妻が居なければ実家の会社経営は成り立たない。妻が逃げる=実家の会社経営は回らなくなる。自分にはどこでも食っていけるような特殊技術は無い。親族の結びつきは非常に強く、遠方に妻を逃がすなど口にすれば親類との関係は修復不能。古い友人の内、何人かは原発関係で働いている。そいつらもローンの支払いと子供の学費に四苦八苦中。

さて、この状況で今すぐ遠方に逃げられますか?即脱原発なんていえますか?

遠方の地に安静が必要な妻と子供を二人で非難させろと?それとも家と仕事を捨てて、自己破産覚悟で親類縁者を敵にして三人で逃げろと?
私にとって逃げるというのは相当なリクスです。危険があれば逃げろなどと軽々しくいう人間はよほど想像力が足りないのだろうな?と思います。

私は決定的に危険だという事象があればさっさと妻と子供を逃がす気はありますが、まだ決断するには得られる情報では弱いですね。

あ、そういえば一部の人は子供の健康が第一という気持ちがあればなんでも可能なんでしたっけね。愚問でしたかね。
目に見えるものが全てではない (50のおじん)
2011-04-25 17:27:25
人が目に見えないものを認識する能力はそれ程高くはない。
特に注意を払わない限り、意識することはないのが普通である。
空気然り、紫外線然り、放射線然り。
ところが、先の地震や津波などのような大規模災害は、
体験したり、映像で見たりすると、途端に実感が湧き、恐怖感・警戒感が生まれる。

その点、福島原発事故は実感し辛い。
水素爆発の映像を見ても、広島・長崎のような核爆発ではなかった。
小規模に過ぎず、悲惨さは見て取れなかった。
その上、放射性物質の飛散は目に見えない。
自分の周囲にどれだけ飛来し、降下し、滞留しているのか分からない。
どの程度被曝しているのかも分からない。
目に見えないものを実感するのは難しい。

テレビ・新聞で、政府関係者や御用学者が直ちに健康に影響がないと言う。
事故に関する報道も当初に比べてめっきり減ってきた。
被曝を余り意識していない人は、問題ない、安全だと思うだろう。
公表されている空間線量が個々人の被曝線量と乖離している可能性が高いことも知らずに。
目に見えるものが全てではないということを忘れてはならない。

そのうち、被曝を余り意識していない人の中にも、
放射性障害の恐ろしさに嫌でも気付く人が出てくるだろう、
自分自身や家族あるいは知人に何らかの症状が表われた時に。
その時には、自らの目ではっきりと見ることになるのだ。
ある学者は宝くじに当たるようなものだと言った。
当たらないことを願うばかりである。

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