2011.06.09
# 雑誌

スクープレポート 報告書を入手!
あらかじめ見捨てられていた東北の被災地

「核のゴミ捨て場」に予定されていた
双葉町・浪江町・釜石・陸前高田
陸前高田市〔PHOTO〕gettyimages

 面倒なこと、危ないことはみんな東北に押し付ける。それがこの国の方針らしい。核のゴミ捨て場ももちろん東北だ。そのための調査まですでに隠れてやっていた。

無害になるまで数万年

 今春公開された「100000年後の安全」という映画が、話題を呼んでいる。原子力発電の過程で生じる、人体に有害で処分が困難な高レベル放射性廃棄物を、地中500mに埋める「地層処分」をテーマにした映画だ。

 舞台となっているのは、フィンランドのオルキルオトという僻地。'01年にフィンランド政府が「核のゴミ捨て場」として選んだのがこの地で、映画では「放射性廃棄物を管理するには、地層処分しかない」という意見と「放射性廃棄物が無害になるには数万年かかる。そのときまで安全だとなぜ言えるのか」という主張が登場。フィンランドをはじめ欧米諸国で、地層処分が深刻な問題となっていることが取り上げられている。

 ここ「原発大国」日本でも、核のゴミをどう処分するかという議論が長年続いている。現状ではやはり「地中深くに保管するしかない」ということで、政府は2030年頃に、地層処分を開始するという目標を掲げている。しかしその処分地の選定に携わる原子力発電環境整備機構(通称NUMO)によると、「現在のところ、候補地に名乗りを上げている自治体はない」状態だという。

 NUMOの説明では、処分施設の建設地の選定には自治体の自発的な応募が必要で、その後、3段階にわたる調査を行った後に、ようやく地層処分が開始される。つまり、自治体の応募がなければその調査もできないということだ。

 しかし、有害で何百世代先にも影響を及ぼす放射性廃棄物をやすやすと受け入れ、「核のゴミ捨て場」になろうとする自治体などあろうはずもない。現在NUMOは候補地の募集を進めるべく、年間数十億円を投じてPR活動を行ってきたが、福島第一原発の事故があったため、今後さらに選定作業が難航するのは間違いない。

 ところが、である。地層処分を推進する機関が、自治体や住民の許可を得ることなく、極秘裡に地層処分に関する調査を進めていたのである。

 本誌は、'05年3月30日に、特殊法人・核燃料サイクル開発機構(核燃機構)が作成した報告書を入手した。この資料は、処分地の選定を進めていた動力炉・核燃料開発事業団(動燃)が行ってきた、地層処分に関する調査結果をまとめたもの。

「プルトニウム入りの水を飲んでも大丈夫!」というPRビデオを作り、世界から非難を浴びた動燃は、'80年代より全国500ヵ所以上から地層処分を行う『適正地』を探す調査を水面下で進めてきた。これを見ると、北は北海道から南は鹿児島まで、全国88ヵ所の地域が放射性廃棄物の「処分地として適正」であると報告されている。詳しくは後述するが、その4分の1以上が東北と今回の被災地に集中している。

 問題は、この調査が自治体に何の説明もないまま行われて、勝手に「地層処分を行うのにふさわしいのはこの地域」という報告書が作成されていたことである。

 地層処分は、その安全性についてもいまだに議論が分かれている。地層処分を推進する機関は、「地中深くに放射性廃棄物を埋めることで、放射性物質が簡単に漏れ出すことはない。地層処分は長年にわたって安全かつ確実に廃棄物を管理する方法である」と謳っているが、原発の安全神話よろしく、地層処分の安全性についても「安全とはいえない」と疑問を呈する声も少なくない。原子力資料情報室の伴英幸共同代表は、こう指摘する。

「頑丈な容器に廃棄物を詰めて地中深くに埋めるのですが、問題は500mの地中に埋めても、いずれ放射性物質が漏れ出すのは間違いないということです。それが何年後なのかはわかりませんが、現在の技術で、数万年後までそれを封じ込めることが可能かどうかは非常に疑わしいのです」

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