【2月22日 AFP】中東各国の反体制デモへの弾圧で数百人規模の死者が報じられるなか、自国の国防費削減に苦しむ欧米の軍需企業各社がある見本市で、中東で契約を獲得しようと熾烈な競争を繰り広げている。

 中東情勢で最新の展開を見せているリビアで死者が100人を超えた20日から、アラブ首長国連邦(UAE)アブダビ(Abu Dhabi)では、中東最大の軍需見本市「第10回国際防衛展示会・会議(International Defence Exhibition and ConferenceIDEX)」が開催されている。

 IDEXの出展は1000以上、パビリオンも30以上あり、大半がUAEや米国、英国、フランス、ドイツ関連の企業などだ。24日まで開催され、来場者は世界中から約5万人が見込まれている。

 また、ことしは海洋防衛産業の展示会として「第1回国際防衛産業展示会(Navdex)」が初めて予定されている。

■中東の国防予算狙う欧米企業

 調査会社フロスト・アンド・サリバン(Frost & Sullivan)によると、湾岸協力会議(Gulf Cooperation CouncilGCC)を構成するサウジアラビア、バーレーン、UAE、オマーン、カタール、クウェートの6か国にヨルダンを合わせた2011年国防費は、総額680億ドル(約5兆7000億円)に上る。さらに2015年には800億ドル(約6兆7000億円)近くに達する見込みだという。

 欧州航空防衛大手EADS(European Aeronautic Defence and Space Company)の子会社、カシディアン・システムズ(Cassidian Systems)のエルベ・ギユー(Herve Guillou)社長は、「ポスト金融危機の現実として、いま最も成長しているのは中東だ」と語る。カシディアンではUAEの地元企業と、同国軍の防衛システムのコンピュータ化に関する契約交渉に入っている。

 また、フランスの軍需メーカーの業界団体GICATFrench Land Defence Manufacturers Association)のクリスチャン・モンス(Christian Mons)会長は「紛れもなく、ペルシャ湾岸諸国には、欧州にはない多額の予算がある」と語る。欧米、特に米国と西ヨーロッパ諸国では国防費が抑制されているため、欧米企業にとって中東市場はまさに天の恵みだ。

 しかし一方では、新興国との競争も激化している。ことしの見本市で展示面積が最も拡大したのは、中国とウクライナ、南アフリカのコーナーだった。

■反体制デモに「国防予算」や「軍需禁輸」の懸念も

 中東地域に生じた新たな問いは、各国に広がる反体制デモの波が、アラブ諸国の国防政策に長期的に及ぼす影響である。GICATのモンス会長のように「軍備に対する支出水準は影響を受けない」と考える人もいる。

 一方、欧州では、警察用の銃器などが民間人に向かって使用される懸念のある特定地域については、そうした物資の禁輸を発動している政府が多く、警察用装備の製造企業が輸出許可を得られなくなっている場合もある。催涙弾やスタン弾などを製造しているフランスのメーカー、ラクロワ(Lacroix)は、中東への輸出が阻まれていると訴えている。(c)AFP/Julien Mivielle