日本弁護士連合会会長選挙の中本和洋候補のHPより

えん罪を生まない刑事裁判と努力が報われる刑事弁護制度を実現する

今般の刑事訴訟法の改正は、日弁連が実現を目ざしてきた取調べの可視化を一部ではあるが法制化し、また、被疑者国選の拡充、証拠一覧表の交付制度新設など、刑事司法改革に一定の成果があったといえる。

しかし、いわゆる「司法取引」が新設され、通信傍受法の適用が拡大されるなど、被疑者・被告人のみならず、一般市民の人権にも関わる問題をはらんでいる。

えん罪を生まない刑事裁判と努力が報われる刑事弁護制度を実現するために取り組みの力を緩めてはならない。


  1. 裁判員裁判制度のさらなる改革
    裁判員裁判制度が定着するに伴い、裁判官裁判においても供述調書に頼らない被告人質問先行型の口頭主義・直接主義の公判が実現しつつあることは、刑事司法改革の成果のひとつといえる。
    施行後5年を経過し、見直しが行われている裁判員裁判制度については、否認事件への対象事件拡大、事実認定と量刑の分離、死刑判決要件の厳格化などに取り組むべきである。
  2. 努力が報われる国選弁護制度
    今般の刑事訴訟法の改正により、勾留されたすべての被疑者に被疑者国選弁護人制度が拡充される。弁護士会の受任体制をより万全のものにしなければならない。最大の問題は、少年事件を含む国選刑事弁護活動の大半が、若手会員による採算を度外視した献身的努力によって支えられている実態である。しかも、現行報酬基準では、弁護活動の成果が正当に評価されず、内容にかかわらず接見回数を増やすほど報酬が高く算定されるなどの不合理が指摘されている。報酬の高額化と報酬基準の改正を早急に実現し、努力が報われる国選弁護制度の実現に取り組む必要がある。
  3. 取調べの全過程の可視化及び弁護人立会権の実現
    取調べの可視化は、限定的な実施にとどまった。しかし、法改正の過程で最高検察庁が発した依命通知による可視化対象事件の拡大でも明らかなとおり、風穴のあいた可視化の全面的実施は歴史的すう勢である。3年後の見直しに向け、参考人を含む全過程の可視化及び弁護人立会権を実現させるための取り組みをさらに強化する必要がある。
  4. 「人質司法」を打破する勾留代替制度
    今般の改正刑事訴訟法においては、「人質司法」の実態は放置されたままである。わが国の勾留制度は、国連拷問禁止委員会による代用監獄制度廃止勧告に何ら答えていない。改正法は、わずかに裁量保釈における考慮事項を明文化したに留まっており、極めて不十分であり、勾留代替制度の創設に向け働きかけを強化すべきである。
  5. いわゆる「司法取引」制度への対策
    改正刑事訴訟法では、一定の犯罪を対象とした「捜査・公判協力型協議・合意制度」及び「刑事免責制度」(いわゆる「司法取引」)が新設された。可視化が限定的でかつ旧態依然とした勾留制度のもとでの司法取引は、虚偽供述や引込み供述を増加させるなどの弊害が予想される。新制度の危険性を関係者に周知するとともに、抜本的見直しを求めるべきである。
  6. 全面証拠開示の実現
    改正刑事訴訟法は、検察官手持ち証拠リスト開示を義務化したが、より直截に全面証拠開示が実現されるべきである。
    また、再審請求審においても、修正された附則や衆議院の附帯決議の趣旨を推し進め、通常審の証拠開示規定が準用される制度を追求すべきである。
  7. 通信傍受法の適用拡大への対策
    刑事訴訟法の改正に際し、通信傍受の対象が一般刑事事件にまで拡大され、傍受手続も簡略化された。通信傍受は、個人のプライバシーを侵害する捜査手段であり、制度の濫用による人権侵害が懸念される。新制度の運用を厳しく監視し、第三者機関の設置要求も検討する必要がある。

 

 

2016年01月13日 17時52分 弁護士ドットコム
日弁連会長選、候補者に中本氏と高山氏ーー法曹養成制度のあり方など争点に
選挙管理委員会委員長の新保克芳弁護士
 

日本弁護士連合会は1月13日、日弁連次期会長選の候補者2名を発表した。大阪弁護士会元会長で日弁連元副会長の中本和洋弁護士(69)と、東京弁護士会の高山俊吉弁護士(75)(届け出順)。投開票は2月5日で、全国の弁護士約3万7000人に投票権がある。任期は4月から2年間。村越進・現会長の任期は3月末で満了する。

争点の一つとなりそうなのが、司法試験をはじめとした法曹養成制度のあり方だ。中本弁護士は、法科大学院について、ネットを活用した授業や夜間学習の充実など、志望しやすい環境を早急に整備することを主張。一方で、高山弁護士は、法科大学院制度の廃止を訴えている。

今後は、各地で公聴会を開き、政策を訴えていく。選挙管理委員会委員長の新保克芳弁護士によると、今回の選挙から、候補者は選挙用のホームページを開設することができるようになった。電子メールを利用した選挙活動も可能。ただし、メールはBCCで選挙管理委員会に宛てても送信する必要がある。また、フェイスブックなどのSNSを用いた活動は禁止されている。

●武井咲さんをポスターに起用

また、日弁連は同日、広報活動の一環として、女優の武井咲さんをポスターに起用し、裁判所をはじめとした各施設に掲示することを発表した。全国の法律相談センターを知ってもらい、弁護士を身近な相談相手として知ってもらうことが目的だ。約10万枚を全国に配布し、裁判所や官公庁、一部の郵便局をはじめ、イオンモールなどの民間施設で1年間掲示する。

この日に開かれた記者会見で、日弁連副会長の長田正寛弁護士は、「全国的に法律相談の件数が落ち込んでいる。ポスターを通じて、法律相談センターの存在を知ってほしい」と期待を寄せた。

(弁護士ドットコムニュース)

 

 

2015年12月29日 09時05分 弁護士ドットコム
「取り調べ可視化、10年前は夢みたいな話だった」日弁連会長が2015年を振り返る
村越進・日弁連会長
 

安保法案の成立、司法試験をめぐる問題など、2015年は、司法をめぐる大きなトピックがいくつもあった。そんな動きのなか、日本弁護士連合会(日弁連)は会長声明や意見書を通じて、社会に様々なメッセージを発信してきた。弁護士ドットコムニュースは日弁連の村越進会長に単独インタビューを行い、注目すべきトピックを中心に「2015年の振り返り」を聞いた。(取材・構成/並木光太郎)

●刑事訴訟法の改正案提出は画期的

ーー最も印象に残ったトピックはなんでしょうか。

刑事訴訟法の改正案が国会に提出されたことです。この法案は、結局、今国会での成立は見送られてしまいましたが、国会に法案が提出され、衆議院を通過したことだけでも、非常に大きな一歩です。この中に含まれている取り調べの可視化は、10年前には夢みたいな話でした。司法制度改革審議会でも、「将来そんなこともあるかな」という扱いでしかありませんでした。改正案の提出は画期的だと思います。

それだけではなく、改正案には、被疑者国選弁護の拡大や証拠リストの開示など、多くの改革が入っています。通信傍受の範囲が拡大することや、司法取引の導入など、批判を受けている点もありますが、濫用や人権侵害が起きないよう、弁護実践も含め取り組む必要があります。全体としてみれば、のちのち、歴史的に大きな変化をもたらしたと評価されるような法案です。

ーー日弁連の活動としては、どのようなことが印象に残っていますか。

民事司法改革について、最高裁と日弁連とで非常によい協議ができたことがあげられます。日本の民事裁判の制度は、以前から「利用しにくい」と言われてきました。原因はいろいろありますが、一つ挙げると、強制執行の制度の使いにくさです。

たとえば、AさんがBさんに対して、貸したお金の返還を求めて裁判を起こして、裁判所から「BはAに1000万払いなさい」という判決を勝ち取ったとしましょう。判決は、そのままではただの紙切れです。強制執行をして、実際にお金が戻ってきて、ようやく意味があります。

しかし、今の制度では回収する手段が限られています。せっかく裁判で勝ったとしても、お金は取り戻せず、泣き寝入りというケースも少なくありません。こうした点を改善して、民事裁判をもっと役に立つものにしたいと考えています。

どのような制度にすべきか、最高裁と協議を重ねてきました。今後は、協議の内容をまとめて、法改正について法務省とも協議していきたい。

●法律家団体として、言うべきことは言っていく

ーー秋に成立した安保法制についても、日弁連は反対声明を発表するなど活発に動いてきましたが、どう振り返りますか。

衆議院の憲法審査会で、早稲田大学の長谷部恭男教授をはじめ、3人の憲法学者が「この法案は違憲だ」と明言したことが、一番印象的でした。あれで世の中の雰囲気がすごく変わりました。学者や元裁判官は本来、表に出て発言をする人たちではありません。そのような人たちが、「この法律は憲法違反だ」と、表に出ていったのは、本当に大きなことです。法案に対する国民の関心を大きく高めたと思います。

ーーしかし、結局、法案は成立してしまいました。

憲法違反である以上、今回の法律ができてしまったのだから、「成立したからそれで終わり」というわけにはいきません。法律家団体として、今後も憲法上の問題点や国会審議の過程で明らかになった問題点をまとめて、国民にわかりやすく伝えていきたいと思います。

ーー日弁連が強制加入団体であることから、特定の法案や制度について賛否の態度を示すのはいかがなものかという声もあります。どのように考えていますか。

たしかに、日弁連は強制加入制の法律家団体ですが、その使命は、人権を守ることです。特定の政権・政党に、賛成や反対をしているわけではありません。人権を守るためには、平和でなければならないし、立憲主義も守られなければなりません。そこが危うくなるような事態については、法律家団体として、最低限言うべきことは言わなければならないと考えています。

安保法案については、『立憲主義を壊してはいけない』というのが、日弁連としての最大公約数だと考えています。いろいろな意見の人がいると思いますが、ここは一致してやられなければならないと考えています。

●数だけ追求しても社会のニーズに応えられない

ーー法科大学院の統廃合が続き、法曹を目指す人が激減しています。こうした現状をどう見ていますか。

法曹をめざす若者を増やすことが大切です。

法科大学院の数や、入学人数をもっと絞って、当初言われていたように「真面目にやれば、7割~8割が受かる」という司法試験にしなければならないと思います。また、弁護士の就職難も深刻な問題です。時間とお金をかけて司法試験に受かっても就職できないような状態だと、やはり法曹を目指す人は増えないでしょう。そう考えると、合格者はやはりすみやかに1500人にするべきと考えています。法科大学院生・司法修習生の経済的負担の軽減もきわめて重要です。

ーー合格者数をもっと増やして、自由競争に任せればいいのではないかという意見もありますが、どう考えますか。

もともとの「合格者3000人を目指す」という閣議決定は、そういう方向性でした。ですが、新司法試験が始まったこの10年で、それは間違いだったということが明らかになりました。質を考えることなく数だけ追求すると、かえって世の中にとってマイナスとなるのではないでしょうか。ふつうの業界であれば、良貨が悪貨を駆逐して、ダメな人はいなくなると言えるかもしれないが、弁護士業界はそう簡単なものではないと考えています。

ーー法科大学院を修了しなくても司法試験を受けることができる「予備試験」の合格者が増えていますが、どう見ていますか。

「予備試験を突破して司法試験に合格するのが、エリートコース」といったことも言われていますが、そこから受かる人がどんどん増えていくのがいいことなのかは疑問です。

知識詰め込み型の一発試験の弊害が指摘されて法科大学院制度ができたのだから、あくまで法科大学院を基本に考えるべきです。予備試験は、法科大学院に行く経済力がない人や、社会経験があるから法科大学院に行かなくてもいいという人のための、例外的な枠だったはずです。いまは「ショートカットコース」として捉えられている面がありますが、あるべき姿とは違います。

<了>

(弁護士ドットコムニュース)

 

 

通信傍受85%が事件と無関係 8万8千回、通知なし

2015年06月05日 03時00分 西日本新聞

 2000年施行の通信傍受法に基づいて、組織的な薬物犯罪などの捜査で通信傍受が計約8万8千回行われ、うち85%は事件とは無関係な内容だったことが4日、分かった。無関係な通信傍受は当事者に通知されない。国会で審議中の同法改正案は、現行法が4分野に限定した傍受対象の犯罪に詐欺や窃盗など9分野を加える内容で、知らない間に通信傍受されるケースが格段に増えるのは確実だ。

 現行法は、傍受対象を組織ぐるみによる薬物犯罪、銃器犯罪、集団密航、組織的殺人に限定。法務省が運用状況を毎年、国会に報告している。14年までの15年分を同省がまとめ、改正案を審議する衆院法務委員会で説明した。

 それによると、捜査機関は283件の傍受令状を裁判所に請求し、281件で認められた。8万7814回の電話やメールを傍受したが、事件と関連があったのは15%に当たる1万3499回のみ。傍受によって計525人を逮捕した。

 一方、85%の7万4315回は事件と無関係で、大半は容疑者と家族らの日常会話とみられる。11年のある銃刀法違反事件捜査では、傍受した2721回が全て事件と無関係だった。

 通信傍受法は捜査機関に対し、事件に関係する傍受内容だけを記録にまとめ、傍受相手に30日以内に通知するよう義務付けている。通知を受けた人は記録消去を求めて不服申し立てができる。無関係な内容は捜査機関の記録から削除され、容疑者と通信相手には通知もされない。削除に通信事業者ら第三者の立ち会いはなく、捜査機関を信用するしかない。裁判所には無関係な部分も含め全記録が一定期間保管される。

 改正案では傷害、放火、恐喝、児童ポルノ事件でも組織的犯罪の疑いがあれば傍受できる。犯罪との関係の有無は通信を聞いてみないと分からず、無関係な通信が傍受されるのは法律の構造的な問題といえる。法務省は「捜査に関係があるかどうか判断するため、極めて最小限、限定的に傍受しており、手続きを適正に踏んでいる」と説明している。

 ◆悪用防止へルールを

 ジャーナリストの大谷昭宏さんの話 プライバシー侵害は高価な物を盗まれるより重大な場合がある。犯罪と無関係な部分は削除しているという捜査当局の説明も第三者による検証はできず、根拠が示されていない。収集した情報の漏えいや悪用を防止し、処罰するルールが必要だ。

=2015/06/05付 西日本新聞朝刊=

 

 

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