アニメ「日常」がつまらないと感じるいくつかの理由

 今期アニメで注目作だったはずなのが、京都アニメーションこと京アニ制作の「日常」でした。「だった」というのは、もはや個人的にはあまり注目している作品とは言えなくなりつつあるからです。山手線への広告を出したと思えばニコニコ動画での無料配信期間を短縮したりと迷走している感もありますが、作品内容そのものも、決してつまらないわけではなく面白い部分もあるのですが、「けいおん!!」で作った流れを受け継ぐ形でのアニメ「日常」を期待していた身としては非常に残念に感じています。
 今回は、そんなアニメ「日常」がつまらないと思う箇所を挙げていきたいと思います。

  • バラバラに進む/中心キャラがいないお話

 日常を観ていて一番感じるのが、こう1つの作品の中でバラバラに進んでいくんだなあ、という点です。これが非常に見にくい。ゆっこたちの日常、東雲研究所の日常、校長の日常、そして囲碁サッカー部の日常……など、それぞれの日常を描いているのはわかるんですが、なかなか交わってこない。ようやくみおとなのがお互いを認識したりとかはあるんですが、そこから話が発展していくわけじゃなくそのまままた平行線ですしね。校長はゆっこがのぞき見していたりしてましたけど、別に観ていただけで互いに交じり合うことはありませんでしたしね。囲碁サッカー部は本当に独立した存在ですし……(モブとして出ては来ますが)。とにかくそれぞれが影響しあうわけではなく、今のところずっとバラバラに動いている感じですし、時系列的にも各話どころか1話内でもあまり繋がってるようには見えませんよね。なので、積み重ねでの面白さもあまり伝わってこないような気がします。
 そして輪をかけているのが、結局主人公は誰?というところです。恐らくはゆっこなんでしょうけど、ゆっことは全く関係の無いところでも話が進みますし、誰を中心にして回っているわけでもありません。これがよりアニメ作品として見難くしている要因になっていると思います。誰が中心でも無いし、それぞれがそれぞれの日常を過ごしているからこその「日常」なのかもしれませんが、そう描いているからにはその部分が面白くならなければならないはずなのにそうはなってないんじゃないか? と思っています。
 これは「みつどもえ」で感じたことそのまんまなんですが……。まあちなみにどちらもアニメBD/DVD売上的には惨敗しているように、あまり好ましくないアニメでの方向性なんじゃないかと思うわけです。特に、Aパート内だけでも話があっちこっち行ってしまうのは気分が散ってしまいます。

  • 「可愛い」押しなのか「笑い」押しなのかがわかりにくい

 よくまとめスレやフォロワーさんの意見で目にするのが「はかせとなのは可愛いから研究所だけにしてくれ」とか、逆に「ゆっこたちが面白い。研究所パートはつまらん」というものです。もちろん同じ人が言ってるわけではありませんが、要は「可愛いけど笑いの意味では弱め」な研究所ネタと、不条理ギャグで押してて「笑えるけど可愛さの意味では弱め」なゆっこたちのネタとどちらがより押したいのかが見えないんですよね。もちろん同居させているからこその「日常」なのかもしれませんが、結局はどちらかに惹かれて、あるいはどちらかがあまり面白くないことになると、作品全体を好きになるところには繋がってこない気がするんですよね。例えば、博士とゆっこたちを絡めるとか、面白さの意味では打率十割の校長をゆっこたちと絡めるとか色々とやり方はあると思うんですよね。原作通りなのだとしたらそれまでなんですが……。

  • 「可愛い」に過剰な笑いは不要?

 今期アニメで「日常」と同じような枠で勝負していると思うのが、ギャグ枠では「よんでますよ、アザゼルさん。」や「そふてにっ」ですし、萌えの意味では「Aチャンネル」あたりでしょうけど、「そふてにっ」はともかく「アザゼルさん」にはギャグの面白さの意味で、「Aチャンネル」には萌えの意味で劣っていると思うんですよね。アザゼルさん美少女アニメとは別枠ですからそもそも対抗馬ではないのかもしれませんが、amazonランキングでそれなりの位置に付けている「Aチャンネル」に現時点で負けているのは非常に気になるところです。
 考えられるのは、キャラ萌えするようなアニメではあまり過剰な笑いは不要なのかな? ということです。奇しくも「けいおん!」はギャグというわけではなかったですし、それこそ笑いよりも可愛さを優先した作りだったかと思うのですが、同じようなバランスは「Aチャンネル」のほうがよくできているんですよね。「日常」はやや可愛さを犠牲にして不条理ギャグを前面に出している印象を受けています。それが例の飛行船のエピソードでもありますし、シャケだったりするんじゃないかと思うわけです。明らかに笑いの方面では弱いAチャンネルが日常よりもウケが良いということは、可愛いに笑いの要素はあまり求められていないのではないか? という印象に繋がるわけです。これもみつどもえで感じたことなんですけどね。
 同じように笑いの要素がありながら可愛いも兼ねたといえば「侵略!イカ娘」がありますが、あれはイカ娘が「可愛い」ことを主軸に描いていたからこそ成功したと考えると、日常に足りなかったものが徐々に見えてくるのではないかと思います。

  • キャラ立ちが弱い

 萌え系のアニメでは絶対必要だと思うのが、キャラ立ちだと思います。その点、日常は前述の「バラバラに進む」ことと「中心キャラがいない」ことが致命的で、なかなかそのキャラがどういうキャラでどういう考えで動いているのか……などが分かりづらかったです。これはお前がしっかり観てないからだ、とか言われそうですが、不条理ネタを更に不条理な掛け合い(ツッコミ?)で切り替えしてくるキャラが多いので(主にみおとまいですが)、そのキャラがどう考えているのかとかが序盤は全くわかりませんでした。また、掛け合いも禅問答みたいな掛け合いだったり、スルーの連続だったりで、掛け合いとしては成立していないことが多いのです。これも、互いの魅力を掛け合いで高め合うことがこの手の作品では重要だと思っているのですが、それがほとんど見られないことは大きなマイナスポイントだと思っています。まあこれも原作ならではと言われたらしようがないのかもしれませんが……。

  • アニメならではの違う魅力の付加をしていない

 これが一番気に喰わないですね。京アニは「けいおん!!」で半ば原作レイプとも言えるくらいの大胆な原作改変というかほぼオリジナル展開で描き直し、結果として「けいおん!」という作品に新たな魅力や泣ける要素などが追加されてアニメ作品として単体の、魅力にも繋がったと思っていました。
 「日常」京アニによってアニメ化されると聞いて原作を冒頭だけ立ち読みしてきたんですが、その時の印象が「これ……面白くなるの? 京アニが相当手を入れないと笑えないし萌えも無いぞ?」ってものでした。なので京アニがこの不条理ギャグで押す日常の原作を、どう萌えられてかつ一般的に笑えるような描き方をしてくるか? が勝負だろうと考えていただけに、ほぼそのまま原作のノリをアニメに落とし込んだだけ+その不条理ネタをより派手に魅せるだけの改変っぽい内容にはがっかりでした。確かに、京アニの作画ですし声もついて可愛くはなってます。不条理ネタもアニメで派手に魅せているだけに面白くはなってます。でも、原作にはない魅力を付加しているのか……と言うと違うんじゃないかと思います。
 例えば、もう少し1つのネタだけで1話完結の話に描き直すとか、サザエさんイカ娘のような3話1回構成にしてみるなどやりようはあったはずです。が見せ方の工夫もあまりないような気がしてて、回数を重ねるに連れて不条理ネタそのものは面白く感じることが多くなってきましたが、構成としては全く芸がないなあと思うしかなくなってきました。
 また、そもそもメインがどこなのかわからないのが観ていて気持ち良くない部分のはずなのに、いきなりOPから飛行船の全然違う王様とかの話が出てきて「???」でしたし、しかも日常っぽい雰囲気でもありませんでしたし、やること為すことが裏目裏目に出ているように感じてしまいます。

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 とまあ、ボッコボコに書いてみましたが、要は期待がそれだけ大きかったということです。オリジナルをやりたいという京アニがどう「日常」を料理してくるかとわくわくしながら待っていただけに、原作主義に逆戻りしている感じがして幻滅に近いものがあります……。アニメーションとしての出来や、新人声優さんたちの演技も音楽も素晴らしいだけに、本当に勿体無いと思います。
 あまり原作改変をしていない描かれ方が、京アニが主導的にやってのものなら本当に残念ですが、原作の角川書店の意向であるのならあまり京アニを否定するのも可哀想ですし、それを主導した角川許すまじという感じです。個人的には「日常」は現代のサザエさんを目指したものだったと考えてますが、あらかた「イカ娘」がやってしまった感じもあったのかな……とも感じていて、アニメって難しいなあと思うしかないと考えています。

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