「ネットがこのままではいけない…」NAVERまとめ生みの親がキュレーションの問題点と新方針を語る

    2つの新方針も発表した。キュレーション批判が強まる中、新しい潮流を作れるのだろうか。

    DeNAが自社の“キュレーション”メディアを次々と閉鎖するなか、元祖キュレーションメディア「NAVERまとめ」を運営するLINEが12月5日、NAVERまとめの質の向上を目指す新方針を発表した。

    新方針について会見で説明したのは、LINE上級執行役員の島村武志氏。NAVERまとめのコンセプトを発案し、サービスを主導してきた。

    BuzzFeed Japanは会見の質疑で、島村氏に質問した。NAVERまとめ生みの親として、DeNAをはじめとする他社のキュレーションメディアの一連の問題について、どんな感想を持っているのか。

    「コンテンツを作っているのは、キュレーションではない」

    島村氏の答えは、以下のようなものだった。

    「他社がどうやっているかについて、コメントする立場にない。我々の志、想いだけがある。形をとらえてキュレーションと言われたりはするが、正解を決めつけたいわけではない。これがキュレーションという形はいろいろあっていい。それを決める立場でもない」

    「ただ、(他社を)見ていてどういうことか疑問に思うことはあった。それぞれが責任を持ってやっていることなら、それでいいのではと思う。報じられている事柄のどれが真実で、どれが真実でないのかはわからない。キュレーションの定義について言えば、『コンテンツを作っている』のはキュレーションではない。それをキュレーションと言っていいのかという気持ちがあるのは事実」

    過去記事への対応は

    また、NAVERまとめの過去記事について、他社のように一斉に見直す計画はあるのかと問うと「その計画はない」とのことだった。

    「いままで、ガイドラインに従って作られたコンテンツをモニタリングしてきた。基準が甘かったということはない。いまになって見直すことはない。しかし課題がないわけではない。法令とガイドラインには沿っているが、まだ課題は残っている。『新方針』を軸に、まだ解決できていない部分に対応していきたい」

    LINEが、この日提示した「新方針」は2つ

    1.まとめの作成者にオーサーランクを適用

    --LINE IDでの認証--作成者の経歴、背景などを審査--ランクに応じて上位表示、高インセンティブレート

    2.一次情報発信者の権利保護

    --サイト単位で一次コンテンツのオーサー登録--承認後、利用範囲を設定可能--まとめで紹介された場合、コンテンツホルダーにもインセンティブ還元


    これらのキュレーションの質を向上し、著作権者の利益保護を目指すこれらの施策。「すべて2017年中の運用を開始を目指す」という。

    「難しいのは間違いない。労力もかかる」

    島村氏は、最後にこう語った。

    「ずっと長く議論してきた。これまでなかなかできなかった理由は、一言でいえば難易度。難しいのは間違いない。労力もかかる。自信があるかといわれるとそうは言えなかった自分たちがいた。見返りもない。より多くのインセンティブ原資もいる」

    「難しい判断だったが、ここまでインターネットが育ってきて、そこで仕事をして生活してきた。このままではいけない。もっと豊かな社会を目指したいという想いがある。2017年中という野心的な目標を達成したい」

    NAVERまとめは2009年にオープンした。現在問題となっているキュレーションメディアの先駆けといってもよい。ネット上のテキストや画像を引用し、ツイートなども織り交ぜることで、誰でも簡単に情報発信できるため、ウェブ上のコンテンツとしては画期的な存在だった。

    しかし、メディア企業や個人のコンテンツ製作者からの評判は、率直に言って良くはない。NAVERまとめのコンテンツは検索に強く、常に上位表示され、一般ユーザーの投稿には著作権違反が明確な記事も散見される。

    誰でも自由にまとめを作ることができるプラットフォームを謳っているが、サービス運営主体であるLINEへの風当たりは強い。

    今回の新方針で、LINEはキュレーションの質の向上に寄与し、メディアの世界に再び新たな潮流を起こせるだろうか。