チュニジアの情勢は未だ未だ流動的ですが、先日書いた驚いたことに続いて驚いたことをもう二つくらい。
先ず驚いたのは日本も含めて先進国メディア(勿論それに政府等も付け加えなければならないが)の無責任さ、と言うか変わり身の早さです。
このところベンアリの没落以来、独裁政権の末路は、とか独裁政権の他の独裁政権に対する波及とか、ベンアリ治下のチュニジアが大変な独裁国家で、それを倒した今回の民衆の抗議運動(ジャスミン革命と呼ぶそうだが)が政府に対する不満をに爆発させた、その影響は大きいと言った解説、ニュースばかり流れています。
それ自体は全く正しい認識で、べンアリ政権が独裁政権で、国民を厳しく締め付けてきたことは事実です。
しかし、そのようなことをどこの国の大きなマスコミが声を大きくして言っていたでしょうか?
勿論日本のマスコミにはなかったと思うし、他の国でも批判的な個人のジャーナリストはいたが、新聞やTVが大きく取り上げることは余りなかったように思えます。
要するにチュニジアは気候も良いし、人々も温和で、政権も安定し、親西欧政策をとって、経済的にも安定した良い国というのが一般に世界中に流れていたイメージだと思います。
私も個人的にチュニジアが独裁政権と聞いて驚いたと言う声をかなりの人から頂きました。無理はないです。
上に言ったようなイメージが安易に流されて、その裏でどういう強権政治がおこなわれているか、ほとんど語られていなかったのですから。
普通の人が驚くのは当たり前だと思います。
しかし、チュニジアを少しでも真面目に研究した人なら、ベンアリと言うのは警察、秘密警察を使った大変な強権政治で、反対派を徹底的に弾圧し、国民にも言論の自由などまたく認めていないが、その反面首相のghannnushi などと言ったテクノクラートを上手く使って、経済の安定を図り、中東、北アフリカでは珍しい経済発展を確保するとともに、特にイスラム原理主義者の徹底的弾圧を通じて、国内安定を提供してきた、と言うことは10年も前から知っていたはずです。
言わば鞭と飴の政策で、国民との間に無言の契約があって、自由は奪うが、替りに安定と繁栄を約束する、と言うことであったのが、世界不況などのために契約が履行できなくなったと言うことだと思っています。
もう一つの要因は、これも最近新聞等によく出てきますが、大統領夫人の一族の腐敗が目に余って、国民の反発を買ったと言う面もあります(但し、おそらくtrabelsi一族は腐敗の象徴であって大統領の権力を笠に儲けた奴は他にも多いと思います)。
問題はこれらのことを全く、と言って悪ければ、殆ど報道しないでおいて、今になってあたかもベンアリ政権が独裁政権であったことは周知の事実のような顔をして報道していることです。
事実だから良いかと言えば、世界のマスコミがこう言う事実関係を報じなかったことが、世界的にチュニジアは良い国だ、問題ないと言うイメージを生んで、べンアリ政権を永続化させてきた一つの大きな要因と思います。
それが綺麗な顔をして、あたかも昔から、ベンアリ政権の非を糾弾してきたかのごとき顔をして、独裁政権云々の報道をするのには、若干驚いています。
尤も世界の歴史と言うのはこんな具合にして書き換えられていくのでしょうね。

以上はごくつまらない個人の感想です。