The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

新世紀のダーティーハリー 悪魔を見た

 イ・ビョンホンが出てる、ということぐらいしか事前知識がない状態で韓国映画を見たのだった。まあ、タイトルからラブロマンスではないだろうと思ってはいたのだが。キム・ジウン監督「悪魔を見た」を観た。

 よく考えると割と珍しく「冷たい熱帯魚」からアジア映画を連続で観ている。まあ、僕の場合邦画を劇場で観るのが珍しいのであって香港映画や韓国映画を見ること自体は珍しくないのだけれど。
 

物語

 ある夜、タイヤのパンクで立ち往生した女性が何者かに襲われ誘拐拉致され、その後殺された。被害者の婚約者で国家情報院(前KCIA)の捜査員スヒョンは警察とは独自に復讐に燃える。3人目の容疑者の息子から隠れ家を聞き出し忍び込むとそこに婚約者の指輪があった。一方、連続殺人犯であり塾の送迎バスの運転手であるギョンチョルは警察から狙われていることを知り、生徒を一人拉致し農場でことに及ぼうとする。そこにスヒョンが駆けつけ二人は対峙。スヒョンはギョンチョルを叩きのめすがGPSつきの盗聴カプセルを飲み込ませ放置する。
 目覚めたギョンチョルはその足でタクシーを襲い、病院で看護婦を襲う。だがそこにまたしてもスヒョンが現れる。痛い目にあわせながら再度放置するスヒョン。彼の真意は一体?そしてギョンチョルの殺人衝動も収まることはなかった・・・

 これ殺人鬼役がチェ・ミンシクなんですね。聞いてなかったよ。「シュリ」や「オールド・ボーイ」と違って凄い中年太りして下劣な役柄なのにそこは腐ってもチェ・ミンシク。これがなかなか魅力的。とはいえその魅力は悪魔の魅力である。
 そして、それを追う復讐鬼がイ・ビョンホン。最初「なんだイ・ビョンホンは正義の側か」とか思ってたんだけど後にこちらも復讐に取り付かれ悪魔のようになる。個人的には劇場でみたイ・ビョンホンは「G.I.ジョー」も「グッド・バッド・ウィアード」とどちらも凶悪な悪人役だったので問題なし。
 
 僕がこの映画を観ながら真っ先に思い出した映画は二つ。まずは先日見た「冷たい熱帯魚」ともう一本は「ダーティーハリー」。「冷たい熱帯魚」は最近見た犯罪映画であるからだが、実録映画だけあって不条理部分を「だって実際あったことだったんだからしょうがねーだろ!」と投げっぱなしにした「冷たい熱帯魚」に比べると話は練られていると思う。
 そして「ダーティーハリー」。まあ僕は「ダークナイト」のジョーカーを観た時も一番最初に「ダーティーハリー」を連想したぐらい邪悪な犯罪者としての基準がさそり(アンディ・ロビンソン)なのだけれども。両方とも犯人が早々に判明し犯罪者と追跡者の互いに互いを憎しみあう戦いに突入。人間の発想を超える復讐合戦を繰り広げるところが似ている。
 個人的にはよりあくどく、どぎつくなった21世紀の「ダーティーハリー」というのが本作に持った印象。
 
 チェ・ミンシク演じるギョンチョルは一応変態性欲の連続殺人鬼という風に描かれているがむしろ性欲は悪をなすためのついで、みたいに感じられる部分がある。さそりが動機なき殺人鬼なのと同様まず悪をなすことありき、なのではないだろうか。だらしなく膨らんだ腹は際限のない欲望を表現しているかのようだ。ギョンチョルには殺人仲間がいてこいつ(木村裕一似)は情婦と一緒にペンションの住人を殺して乗っ取ってるのだがこいつが「元過激派で殺しを覚えた」とか言っているのだが、日本だと連合赤軍の生き残りが内部リンチの味が忘れられずシリアルキラーになってしまうようなものだろうか。
 ギョンチョルは解放されたその足でタクシーを襲うのだが、このタクシー運転手も殺人の帰りであるという状態でわけが分からない。韓国の夜道は危険です。
 ところで自首という手段は復讐は逃れられても別の意味で大変なのではないか、と。明らかに複数殺してるのは明らかだし。韓国は死刑制度が存置してます。10年以上実施されてないけど。
 
 一方イ・ビョンホン演じるスヒョンは復讐心を秘めながら感情を表に出さず、淡々と復讐をこなしていく。が、単に冷徹なのではなくその中でも内に秘めた心情が読み取れる演技は見事だ。彼は国家情報局のエージェントでもあるので感情を押し殺し抑圧するすべを知っている。また格闘などにおいてもギョンチョルより優れているので勝つのだが、ギョンチョルはその上を行く。
 関係ないけど原田泰造に似ているとかいわれているけれど個人的には「特捜戦隊デカレンジャー」のデカブルーことホージー(の役者さん)に似ていると思う。次回作は「G.I.ジョー2」だそうで、やっぱりストーム・シャドウ生きてたんだね。
 
 互いにより酷い復讐をしようとする人智を超えた復讐合戦は互いの家族も巻き込むが「オールド・ボーイ」の後味の悪い復讐を思い出してしまった。

怪物と戦う者は自らが怪物と化さぬよう心せよ。
お前が深淵を覗き込むとき、深淵もまたお前を覗き込んでいるのだ。
ニーチェ

 それから、これはこの作品に限らないのだけど、毎回韓国映画を観た後に思うことは多少なりともハングルを勉強した方がいいなあ、ということ。英語や中国語だとクレジットや劇中字幕、あるいは劇中登場する新聞とかぐらいなら理解できるのだが、ハングルはまったく分からない。隣の国だし覚えていて損ないよね!(多分三日坊主

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 そういえば、この作品を3回見て応募すると景品が当たるキャンペーンをやっていたのだが、これを劇場で3回観るって結構精神をすり減らす行為だと思うよ。