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ロケタッチという新サービスを、リリースしました。

これくらいの大きな規模のリリースは、私にとっては、「ライブドアブログ」のリニューアル以来1年半ぶり。純然たる新サービスに限って言えば、「nowa」以来3年ぶりです。

ライブドアブログのリニューアルのときは、オール明けの会社のデスクでこんなことを書きましたが、今日は、仕事を終えて自宅のダイニングテーブルでもう5本目の500缶を干しながら、この高揚感のなかでしか書けないことを書きます。

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自分には憧れがある。

サッカー選手がゴールを決めたときに観客から賞賛を浴びるように、ロックミュージシャンがアンコールを弾き終えたときに喝采を浴びるように、自分と自分たちの働きに対して目に見えるかたちで爆発的なフィードバックをリアルタイムで得られたらいいなあ、って。

インターネットのサービスを開発していると、常に継続的なフィードバックが得られるけれど、“爆発的”と限定すると、それはサービスのリリース時しかない。そしてそのタイミングは、そう何度も訪れない。だから、そういうチャンスが何度かめぐってきたら、存分に味わいたいと思う。

2003年に、「ココログ」をリリースしたその日、私は、1000を超える新着記事をRSSリーダーですべてチェックして、「ブログ」という画期的なツールの登場をユーザーと一緒に喜んだ。これが自分の原体験。

ライブドアに入社した翌年の2006年に「livedoor Reader」をリリースしたその日、私は、はてなブックマークのコメントを、何度も何度もリロードして夜中まで見続けて、ほぼイキかけた。あの反響の手触りは、その後に何度も反芻するくらい、心地よかった。

そして今年(というか昨日と今日のことだけど)、「ロケタッチ」をリリースした直後から今まで、Twitterでの反応をずっと見てる。iPhoneのツイッタークライアントを使って外出中もずっと追い続けて、ロケタッチのねらいが悪くなかったことに対して確信を深めている。

このまたとない日の、またとない夜ならば、カズダンスだってできるし、ギターを歯で弾くことだってできる。たぶん。そんな気分。

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ロケタッチのきっかけは、上司の小久保さんからのSkype。今年の3月のこと。
いま新規サービスをやるとしたら何をやりたい? って聞かれて、即答で「位置情報サービス」と言ったら、その週のうちにGOが出て、4月の組織改編で新規開発チームができた。

そしてこのチーム編成は、社長・出澤さんのフィーリングによる指名。
理由は、みんな並ぶと見た目的にロックバンドっぽいからw みたいなそんな感じ。意訳だけど、まあそんな感じ。冗談みたいな本当の話しだけど、そういうのって大事だなと思った。

Webのプロダクトはいまではもうすっかり複雑化して、少人数でちゃちゃっと作ったものがなんとなく流行りましたってことは、もうほとんどありえない。流行るサービスは流行るべくして流行ってるし、流行るだけの巨大で強力な、そして匿名的なチームが組織されている。

と、そんなムードが漂っている。

だけどそこを、あえて少人数で、各パートの責任範囲を明確に、アンサンブルを奏でようというのが、今回のプロジェクト。ガレージロックのバンドが世界を穫る、みたいなファンタジーを演出したいと思った。それが本当にできるかどうかはわからないけれど、そういうことを信じている会社がまだあったっていいじゃないかって思ってる。

そのメンバーは、

メインプログラマー:吉川
iPhone/Android担当プログラマー:浅見
アシスタントプログラマー:平野
デザイナー:小黒
マークアップエンジニア:浜
ディレクター:荒井
プロデューサー:佐々木

の7人。ロケタッチのリリースまでに協力してもらった人の数はもっともっと多いんだけど、頭を寄せ合ってコンセプトを練り、仕様を検討し、実装をしたのはこの7人。

セッションをやったことをある人には分かると思うけど、バンドリーダーが思ってもいなかったバンドマジックが起こるのがバンドの醍醐味だし、それが起こるのがいいバンドの証。だとすれば、ロケタッチは間違いなくいいチームだった。文章化できないけれど、マジックは、確かに、起こったんだ。そしてそれは、本当にファンタスティックなことだったんだ。

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ロケタッチには、ビジョンがある。

人間はさみしい。ひとりで生まれて、ひとりで死んでいく。他人と理解し合えることなんてなくて、理解できたと思ったとしたら、それは幻想なんだと思う。
でも、人間はつながりを求める。理解しあえるかもしれない、という可能性を求めて。
だけどややこしいことに、人間は孤独も求める。つながりすぎると、何かがすり減ってしまう。

そういう人間を幸せにする、ちょうどいい距離感のサービスができないものかと考えた。

自分は、実は、SNSにもTwitterにも心の底からはハマれなかった。素晴らしさはわかっているつもりだけれど、言葉による過剰なコミュニケーションが、あるところまでいくと面倒になってしまうから。

でも、そんな人間が私の他にも大勢いるんじゃないかと、思った。
つながってはいたいけど、言葉に頼り過ぎたくない、という人が。

そういう人にとって、タッチとマップという非言語だからこそあたたかい“つながり”を提供することには意味があるんじゃないかと思った。少なくとも、自分はそれを強く求めていたし。

それがロケタッチの発想のスタート。

その他のチェックイン系サービスにあるような「いまどこにいる?」というリアルタイム性を求めているわけでも、数多あるグルメサイトのようなレビューをかき集めたいわけでもない。地図によるゆるいつながりと、非言語によるつながりを作りたかった。

いろんな人に囲まれながらさみしさを感じている人にはあたたかさを、大勢に囲まれて煩わしさを感じている人には適度な距離感を提供できればと思った。

それによって、世の中がよりよくなればいいなと、本気で思って作った。

そういえば誰かがこんなことを言っていた。

人に笑われるのが、いい理想。
笑われなかったら、それは大した理想じゃないんだよ。

なるほど。
だとすれば、ロケタッチの理想は、ビジョンは、誰かにちゃんと笑われているだろうか?

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サービスのリリース後に、いいことを発見した。

勘違いでなければ、社内がちょっと活性化したんじゃないか、というような気がする。
少なくとも私の観測範囲では。

長い間、短期的な収益を最重要ミッションとしていた体制から、4月に親会社が変わったことを機に、中長期的なサービス成長を最重要ミッションとするようになって初めての新サービス。そういう意味では、ロケタッチには“のろし”としての意味があったんじゃないかと思う。それがちゃんと機能したという気がする。

加えて、自分にはもうひとつ、ねらっていたことがあった。

位置情報サービスをやることにある程度の確信があったのは、それが、ライブドア社員がコアターゲットになるものだったから。

30歳前後の男性で、iPhoneなどの最新がジェットに興味があり、Twitterなどでプライバシー情報を公開するのに抵抗がなく、ゲームが好きな層といえば、それはそのまんまライブドア社員の典型的なペルソナだ。

ロケタッチは、そういう人に向けて作った。というか、作ろうと決めていた。

それは、自分たちが本当におもしろいと思えるものを作らなければ成功しない、という確信があったからで、ドミノの最初の1枚を確実に倒せなければ、ぜったいにうまくいかないと自分に言い聞かせてコンセプト設計をした。

そしてそのことが、思った以上の波及効果を生んだんだと思う。

ロケタッチの開発メンバー以外の人から、積極的にいろんなアイデアをもらって、この1週間でいっきにブラッシュアップできたり、さまざまなページでのプロモーション協力が得られたのもそう。そういった社内のコアターゲットのみなさんから支持が得られたことで、サービスに勢いがついた。

私は、おもしろいサービス開発に携わりたいと思って5年前にライブドアに入社したんだけど、それが本当に、これからまさに実現できる環境になりつつある気がする。

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新規サービスは、ロケタッチだけではなくその他もリリースしていきたいので、「なにかやりたい!」という思いのあるプロデューサー/ディレクターを募集してます。

株式会社ライブドア - 採用情報

宣伝乙って感じだけど、まじで募集しています。
ご興味ある方はぜひ。

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■ロケタッチをとりあげてくれたブログ
地図とシールで"小学生的セカイ"を ライブドア、foursquareライクな「ロケタッチ」 - [モ]Modern Syntax
[N] 「ロケタッチ」位置情報を利用して場所お店にタッチ
VIPPERな俺 : 位置情報サービス「ロケタッチ」がオープン。色々と捗るぞ。

■ロケタッチをとりあげてくれたニュースサイト
[jp]「ロケタッチ」でライブドアが位置情報サービスに参入|TechCrunch Japan
地図とシールで“小学生的セカイ”を ライブドア、foursquareライクな「ロケタッチ」 - ITmedia News
自分だけの地図が作れる「ロケタッチ」--ライブドアから位置情報サービス - CNET Japan

■ロケタッチに関わった人のブログ
utlog : 「ロケタッチ」リリース
嫌われマブ太のブログ : せかいにたっち。ロケタッチがリリースされました。 - livedoor Blog(ブログ)
つくりたかったものとかロケタッチのこととか:ogugblog
ロケタッチはリアルMMO RPGの可能性を秘めている:hamashun.me

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あー、この記事、翌朝起きたらきっと恥ずかしいんだろうな。
ちなみに、「ロケタッチの作り方」みたいな専門記事は、別途ディレクターブログで公開します。